店舗やオフィスの内装デザインの意匠登録(2020年12月)

category: 意匠 BLOG
update: December 12, 2020 

経産省は11月2日に建築物・内装の意匠が初めて意匠登録されたニュースをリリースしました。

イノベーションの促進とブランド構築の一環とする意匠法の抜本的な改正により、建築物・内装の意匠登録が2021年4月1日から認められるようになったことから、どのような建築物・内装が意匠登録されるのか、とても注目されていました。

また、内装の意匠登録の場合、オフィス用の家具や什器、OA機器等を扱う企業が、自社製品を活かして設計した空間デザインも保護できるようになったため、机・いす・棚・壁・床などの組み合せ及び配置による独創的な内装が期待されています。

そこで、2020年12月時点の内装の意匠登録に関する状況を、私の所感含めて共有します。

なお、下記の見出し「●●●の内装」は、J-PlatPatの意匠登録公報にリンクしていますので、「●●●の内装」をクリック後に下記画像に示す赤矢印部分をクリックすると、各内装の意匠登録の内容を閲覧できます。

衣料品店の内装

内装デザインはU社の店舗ですが、意匠権者はアパレル大手F社です。意匠登録公報内の【実施例参考イメージ図】を見ると、意匠登録の内容をイメージしやすいです。

衣料品店の全体像としては、箱状の店舗で、左右の壁には、衣類の陳列棚と、陳列棚の上に設置された電光掲示板とが設置され、奥の壁には、大型ディスプレイが設置されています。このうち、電光掲示板と大型ディスプレイとの配置について、意匠登録がなされています(【参考斜視図1】及び【参考斜視図2】で着色された部分)。

このように、内装全体のデザインのうち、一部分(電光掲示板と大型ディスプレイと配置)のみを登録しておくと、その他の部分(陳列棚)のデザインを変更しても意匠登録を有効に活用しやすくなります。

店舗の売場の内装①店舗の売場の内装②

意匠権者は、動画配信サービスが主力事業であるE社です。一見、内装の意匠登録とは縁がなさそうな会社ですが、意匠登録の内容を見ると、主力事業を多面的に防衛する狙いを感じます。

店舗の全体像としては、食品売り場といったスーパーやデパートの一角のようなイメージで、商品の陳列棚と、陳列棚に隣接するディスプレイとが配置されています。このうち、ディスプレイ(電光掲示板)の配置について、意匠登録がなされています。

上述したU社のように、ディスプレイの配置のみを登録しておけば、陳列棚のデザインを変更しても意匠登録を有効に活用しやすくなりますが、このような部分的な意匠登録(部分意匠)は、全体(陳列棚含む)に対する部分(ディスプレイ)の位置・大きさ・範囲に、意匠登録が左右される点も留意すべきです。

つまり、部分意匠として内装の意匠登録したとしても万能ではないということです。

店舗の売場の内装①と内装②とは、陳列棚のデザイン及び陳列棚に対するディスプレイの配置が、それぞれ異なります。陳列棚のバリエーションは多数あるため、全てのバリエーションに対して意匠登録するのは現実的ではないことから、代表的(メジャー)な陳列棚が選ばれたのではないでしょうか。

オフィス空間のショールームの内装

意匠権者は、家具・什器メーカー大手O社です。オフィスの休憩室や執務室の内装とは別に、あえてショールームの内装を意匠登録している点が、とても興味深いです。意匠登録の内容を見ると、独創的な印象です。

ショールームの全体像としては、平面図から推測すると、中央にある円形の商談スペースと、商談スペースの左下にある飲食物の提供スペース、のようです。飲食物の提供スペースについては、【意匠に係る物品の説明】の欄にも記載されています。

紫色に着色されたソファーやイスは意匠登録に含まれませんが、これらがショールーム全体に対して意匠登録を受けようとする部分(間仕切壁など)の位置・大きさ・範囲を明確にしていると考えられます。

職員室の内装①(基礎意匠)職員室の内装②(関連意匠)

意匠権者は、家具・什器メーカー大手O社です。一見して、独創性を感じにくいものの、商材の机・イス・棚を活かしたレイアウトのようです。なお、内装①と内装②とは類似しているため、基礎意匠・関連意匠の関係です。

私的に注目したいのは【意匠に係る物品】です。「職員室」という選択が巧妙と感じています。意匠に係る物品を「職員室」と具体的にすることで、公知意匠との類似を避ける対策にもなるためです。

意匠に係る物品が異なれば、公知意匠と類似している意匠を登録できるというわけではありませんが、比較的ありふれた意匠の場合、意匠に係る物品を具体的(限定的)にすることで登録できる可能性が高まることもあります。

まとめ

まだはじまったばかりの内装の意匠登録制度ですが、登録件数が増えれば増えるほど、内装デザインの実施が競合他社の内装の意匠権を侵害するおそれが高まるのも否めません。

12月11日時点で公報が発行されている内装の意匠登録は14件です。これからも内装の意匠登録について定期的にJ-PlatPatでウォッチして適宜所感など共有したいと思います。

ちなみに、内装の意匠登録を調べたい場合は、J-PlatPatの「意匠検索」から「日本意匠分類/Dターム」を選択して「L3-7」をコピペして検索してください。もしJ-PlatPatでの意匠の調べ方がわからない場合は以下も参考にしてみてください。

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

 

文責:打越佑介

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