弁理士とは?なりたい人向けのわかりやすいQ&A集

弁理士になりたいと思う切っ掛けは人それぞれだと思いますが、何も知らずに動き出してしまう見切り発車は危険です。

弁理士になる前もなった後も、こんなはずじゃなかったのに。。。と思うのはとても残念だからです。

勉強をはじめる前に、弁理士について少なくとも基本情報とトレンドを知っておくと、不本意な選択をせず、かつその後の勉強も身が入り、弁理士になってからも自分の道を切り開けると思います。

そこで、弁理士になりたい人向けに、私が弁理士になった後10年以上の間、よく聞かれてきた質問を一問一答形式にわかりやすくまとめたQ&A集を作成しました。

Q.弁理士とは?(簡単にいうと)

A.特許など取りたい人の代わりに手続できる国家資格を持っている人です。

Q.弁理士とは?(少し詳しくいうと)

A.特許権・実用新案権・意匠権・商標権(まとめて産業財産権)を取得する人(出願人)の代理人として特許庁に手続できるよう日本弁理士会に登録している会員です。

Q.弁理士の仕事は?(簡単にいうと)

A.弁理士の主な仕事は下記①~③です。
①特許などを特許庁に申請するお手伝い
②特許などを第三者から守るお手伝い
③特許などを第三者にあげたり貸したりするお手伝い

Q.弁理士の仕事は?(少し詳しくいうと)

A.例えば「①特許などを特許庁に申請するお手伝い」は以下の流れです。
①新しいアイディアについて特許など取りたい人にヒアリングする
②新しいアイディアで特許など取れそうか検討する
③特許など取れるように申請書類の内容を工夫して作成する
④特許庁の審査官に対して申請書類の内容を説明する
⑤特許などの登録費用や維持費用を代わりに支払う

Q.弁理士はどういう人が向いてるの?

A.いろんな角度でものごとを考えるのが好きな人が向いてると思います。
なお、弁理士の仕事をサービス業として接客できると、お客様との信頼関係を築きやすいと感じています。知識や経験は後からついてきます。

Q.弁理士になるには?

A.弁理士になるには下記条件1~3をクリアする必要があります。
<条件1>1年に1回の弁理士試験(1次→2次→3次)に合格すること
<条件2>合格後に行われる研修(3か月程度)を修了すること
<条件3>日本弁理士会に弁理士登録する(弁理士会の会員になる)こと

Q.弁理士に会費はあるか?

A.あります。毎月15,000円です。
ちなみに、登録するときに必要な費用は以下のとおりです。
・60,000円(登録免許税)
・35,800円(登録料)
・15,000円(登録月の会費)
参考:日本弁理士会「3. 登録に係る費用について」

Q.弁理士になるまでどれくらいかかる?

A.平均的3~5年です(最近の弁理士試験の合格率は5~8%)。
早いと1年、長いと10年以上もありえます(個々の能力・努力・環境・運などによって様々です)。

Q.弁理士は士業の仲間?

A.そうです。
そのため、他士業(弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、中小企業診断士など)とお友達になりやすいです。

Q.弁理士と他の士業との違いは?

A.とてもシンプルに言うと以下のすみ分けです。
・弁護士=争い系(登録すれば他士業の仕事もOK)
・公認会計士=お金系(会社の会計監査とか)
・税理士=お金系(税務所への確定申告とか)
・司法書士=登記系(不動産や会社とか)
・社会労務士=労務系(会社の人事とか)
・行政書士=行政手続系(各種許可の申請とか)
・中小企業診断士=会社全般系(経営相談とか)
弁理士=知的財産系(特許・意匠・商標の登録とか)

Q.弁理士はなぜ士業の中でマイナー?

A.多くの方々にとって特許など身近でないため弁理士を知る機会が少ないからだと思います。
一方、企業(特に製造業)にとって特許などは身近かつ重要なため弁理士の認知度が高めのようです。

Q.弁理士はどういうお客さんが対象?

A.全業種かつ大企業~個人事業主の方までお客様対象です。

Q.弁理士はどういう経歴の持ち主?

A.理系8割、文系2割、東大など日本トップレベルの大学出身が多数です。
なお、特許の仕事は新しい技術の理解力が必要な分、理系が有利のようです。

Q.弁理士は何人いるの?

A.約12000人です(2020年12月末時点)

Q.弁理士はどこにいるの?

A.全国の各都道府県にいますが、半数以上は東京にいるようです。

Q.弁理士の男女比は?

A.男84%、女16%です(2020年12月末時点)
なお、理系出身の割合が多い分、男性が多いようです。

Q.弁理士の平均年齢は?

A.52歳です(2020年12月末時点)

Q.弁理士の統計を詳しく知るには?

A.日本弁理士会の会員分布状況に詳しい統計が掲載されています。

Q.弁理士はいつからはじまったの?

A.1899年(明治32年)から弁理士制度がはじまりました(その当時は「特許代理業者」と呼ばれていました)。
なお、1921年(大正10年)から「弁理士」と呼ばれるようになりました。

Q.弁理士って便利屋さんのこと?

A.便利屋さんではありません。
ですが、弁理士がお役に立てることでお客様の便利な存在になれたら嬉しいと思います。

Q.弁理士の働き方は?

A.弁理士の働き方の王道は下記①~③です。
①企業の知的財産部に就職する
②企業から仕事を受ける特許事務所に就職する
③独立開業する

Q.弁理士はテレワークできる?

A.できます(むしろ、向いていると思います)。

Q.弁理士の年収は?

A.平均700万円と言われています(ネット検索調べ)。
なお、働き方によっては、これ以上になる可能性が十分あります。

Q.弁理士はAIに仕事を取られるの?

A.AIに全ての仕事を取られるとは考えにくいです(AIの進歩次第ですが。)
例えば、体系化しやすくアウトプットも変わりにくい業務(特許庁に対する単純な手続、キーワード検索による調査など)は、正確性を重視する分、AIの方が適していますが、体系化しにくくアウトプットも様々な業務(特許の申請書類の作成、審査官その他第三者との交渉など)は、柔軟性を重視する分、弁理士が適していると考えます。

Q.弁理士の将来性は?

A.あると信じています(未来は誰にもわかりません)。
なぜなら、将来にわたり、技術を進歩させ、人材の多様性を受け入れ、産業の発達を目指す限り、人類は新しいアイディアを生み続けるため、弁理士はこういったアイディアの保護や活用を支援する立場で活躍できると考えています。

まとめ

基本的な質問、統計に関する質問、近年注目されていることに関する質問についての回答を整理しました。

また追加があれば適宜更新したいと思います。

文責:打越佑介

弁理士試験の合格がもたらした人生を豊かにする3つの得

近年の弁理士試験の合格率は6~7%のようですが、10年経っても未だに、よく弁理士になれたな~って思うことがあります。

正直、2年連続で1次試験不合格のときには、後にも先にも引けない状態になり、途方に暮れて心が完全に折れかかりました。

ただ、やり切らない限り、試験には受からないし、退路も断ってたので、心を強く持って挑み続け、4回目で最終合格できました。

そんな心境の変化もあり、弁理士試験の合格がもたらしてくれた3つの得により、私の人生が豊かになったと感じています。

1.個性

会社員時代、私は器用貧乏で、どんなことも人並みかそれ以上にできたけど、秀でた強みを持っているわけではありませんでした。

かっこよくい言えば、会社員としてゼネラリストを貫こうかとも思いましたが、それは私のあるべき姿とは違いました。

私のあるべき姿とは、ゼネラリストでもプロフェッショナルでもあり、個の力を最大化して社内外問わず組織に貢献することでした。

幸い、人には好かれやすい性格のようで、自分のキャラクターとキャリアと弁理士業の掛け算で、唯一無二の個性を得られました。

2.自信

資格試験は、どんなに勉強しても、たとえギリギリ不合格だったとしても、合格しない限り、有資格者との差は歴然です。

私にとって、弁理士試験という狭き門に自らチャレンジして勝ち抜けた経験は、どんなこともやり切って結果を出せる自信となりました。

もし簡単に合格できてたら、今のような自信を持てなかったと考えると、長い目で見たら不合格3回という挫折はとても有意義です。

「根拠のない自信」ともいいますが、こういった自信を生む切っ掛けとなる経験が、さらに未来を切り開く知恵と勇気にもなっています。

3.選択

かねてから、自ら選択できる人生を歩みたく、私生活・仕事・関わる人を含め、自分の意思ではない決定を避けたいと考えていました。

例えば、弁理士の場合、特許事務所・企業・独立開業・学者・指導者といった選択肢があり、自分次第でいずれも選択できる環境です。

私の場合、個性や自信を得られたこともあり、独立開業を選択しました。ある意味、選択には、個性と自信が必要な要素かもしれません。

こうして、家族や大切な人たちと過ごす時間を確保したり、私の経験や考え方など自己表現したりできることに喜びを感じています。

まとめ

IT革命や100年時代のみならず、コロナウィルスによる環境の激変により、一人一人が確かな意思を持ち、信頼関係に基づき協力し合うことが大切と感じています。

弁理士試験の合格を通じて、国家資格に加え、人生を豊かにする得を身に付けられたことを考えると、費用対効果は絶大です。

少なくとも今現在の受験生の方々には、心から最終合格のエールを送ると共に、大きく羽ばたけることを切に願っています。

 

文責:打越佑介