普通名称化を防ぐ商標管理の事例「ゼロックス」

商標は登録したら終了ではありません。登録してからも商標を守り続ける必要があります。商標登録の目的は、競合他社に商標を真似されないようにし、真似されたら止めさせることです。

 

ただ、商標が有名になればなるほど、みんなが普通名称のように商標を使ってしまうと、最終的には普通名称になってしまうリスクがあります。

 

それは日本国内のみならず、国外も同じです。日本企業が外国で登録した商標も、その国の人たちが普通名称のように使ってしまうと、本当に普通名称になってしまうかもしれません。

 

商売に使う看板などから、ゼロックスという言葉を消すのは時間の問題かもしれない。しかし、コピーすることを示す動詞としてのゼロックスは、私を含むフィリピンで生活する人々の脳裏にすでに焼き付いており、簡単に抹消するのは難しそう。もはやゼロックスという言葉は、フィリピン文化の一部となっている。

<引用:2019/9/27 「商標“浸透”で日本企業が悲鳴」viewpoint online>

 

世の中では「ゼロックスする」という新たな動詞がやたらと使われるようになり、商標価値の希釈化を防ぐため、第三者によるゼロックス商標の使用を監視しなければならないほど製品が普及したからだ(61年、同社は「ハロイド」を削除して「ゼロックス・コーポレーション」と社名を変更した)。

<引用:2014/12/24 「ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス(1) 」 diamondonline>

 

「□□□」を普通名称、「△△△」を登録した商標とした場合、「□□□といえば△△△」、「△△△は□□□の代名詞」と言われはじめたら要注意です。

 

もっとも、これのように言われるくらい、商品やサービスの存在が認知されることは、ビジネスにとっては好ましいことです。

 

ですが、これをそのままにしてしまうと、「ゼロックス」のように、普通名称としてみんなに認知されてしまうかもしれません。近年はSNSにより拡散のスピードは昔以上のはずです。

 

こうなってしまうと、みんなに普通名称として使われてしまうため、登録商標としての価値がどんどん下がってしまいます。

 

そのため、ゼロックス社は社名を変更して「ゼロックス」を強調しはじめたわけです。『「ゼロックス」はゼロックス社のコピー機等を表す登録商標です』というような文章を商品カタログ等に記載するのも効果的だったかもしれません。

 

このように、登録した後も商標をちゃんと管理しないと普通名称になってしまうリスクが潜在しています。それを防ぐための登録商標の簡単な管理方法は以下の2つです。

 

・商標の横にⓇをつける
・『「△△△」はXXX社の□□□を表す登録商標です』と明文化する

 

こうしておくことで、登録商標が普通名称化しかけても、ひとまずはちゃんと管理している事実を主張できるでしょう。

 

まとめ

商標を含む知的財産権を維持管理するのには、それなりのコストがかかります。無駄にコストをかけていないか?ちゃんと価値を維持する管理をしているか?など、登録後も考えることがたくさんあります。

 

文責:打越