出願審査請求のタイミングのメリット・デメリット

特許を申請してから成立するまでの期間は遅らせれば4~5年、急げば3か月未満です。この期間は、特許の申請書類を審査してもらうお願い(出願審査請求)のタイミング次第です。

出願審査請求は、特許を申請した日(出願日)から3年以内であればいつでもできます。申請と同時でも出願日からちょうど3年後でも大丈夫です。タイミングに決まりはありません。

もし3年経っても出願審査請求しなければ、特許の申請を取り下げたものと特許庁に見なされてしまいます。そのため、特許を申請したけど事情により必要なくなったなら、出願審査請求せずに放置しておけばOKです。

特許の成立を遅らせる場合と急ぐ場合の手続と期間の目安を図解します。

 

 

一般的に、出願審査請求のタイミングを変えることで、下記①②③④のプランを選択できます。
①遅らせるプラン(出願日から3年後に出願審査請求)
②急ぐプラン(出願日に出願審査請求)
③かなり急ぐプラン(出願日に出願審査請求+早期審査)
④超急ぐプラン(出願日に出願審査請求+スーパー早期審査)

特許の成立を遅らせるメリット・デメリット

プラン①のメリットは、a)最大3年間事業と市場を観察できる点、b)競合他社をけん制できる点です。

メリットa)は、事業や市場の状況の良し悪しによって、特許を成立させるべきか否かを検討できる、という意味です。悪ければ特許を断念、良ければ特許を成立、というような方針を決定できます。

メリットb)は、あえて特許を成立させない状態を2~3年つくることで、競合他社を市場に参入しにくくする、という意味です。この場合、競合他社は市場参入のリスク特許侵害の回避案を検討せざるを得ず、少なくとも参入のタイミングを遅らせることができます。

プラン①のデメリットは、プラン②③④のメリットを得られない点であり、これをデメリットとするならばプラン②③④にすべきです。

特許の成立を急ぐメリット・デメリット

プラン②③④のメリットは、然るべきタイミングに特許を活用できる点です。プラン②の実行後、条件次第でプラン③の早期審査や④のスーパー早期審査を行えます。

特許を活用すべきタイミング例は以下のとおりです。
・競合他社が特許を侵害しているおそれがある場合
・金融機関や機関投資家から資金調達したい場合
・事業の信頼性を第三者(IPO時の上場審査部など)に説明する場合
・特許の成立をマーケティング(宣伝活動など)に活かしたい場合

またプラン③④に限ったメリットは、残念ながら特許が不成立(拒絶査定)だったとしても、特許の申請書類が公開されない点です。

このメリットは、特許の申請書類は出願日から1年半過ぎると必ず一般公開され、競合他社がこの申請書類を参考にして新たな発明をしてしまうリスクがあるため、このリスクを回避できる、という意味です。

プラン②③④のデメリットは、プラン①のメリットを得られない点であり、これをデメリットとするならばプラン①にすべきです。

まとめ

特許の成立は遅らせるべき?急ぐべき?という疑問への回答は以下のとおりです。出願審査請求のタイミングにも良し悪しがあるということです。

☆特許の成立を遅らせるメリット☆
a)最大3年間事業と市場を観察できる点
b)競合他社をけん制できる点

☆特許の成立を急ぐメリット☆
・然るべきタイミングに特許を活用できる点
・不成立時に特許の申請書類が公開されない点(プラン③④に限る)

なおそれぞれのデメリットは他方のメリットを得られない点に他なりません。

文責:打越佑介

コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績

当所では2020年の新型コロナウィルスの感染予防前からリモートワークを取り入れていたため、ウェブ会議システムでの打ち合わせや相談対応もスムーズに行えています。

ウェブ会議システムの種類もいろいろありますが、当所ではMicrosoft Teams・Google Meet・Zoom・Whereby・Skypeといった普及率の高いシステムを活用し、お客様側の都合にも柔軟に対応しています。

そこで、コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績を踏まえて、お客様にとって弁理士とウェブ会議で打ち合わせする3つのメリットをご紹介します。

お悩みの早期解決

ウェブ会議システムの最大のメリットはセッティングの速さと考えています。つまり、双方で会議開催の日時を調整しやすいことから、お悩みの早期解決が実現しています。

当所の実績では、最短で問い合わせ直後にウェブ会議設定及び開催です。電話やメールでは伝えにくい内容も、ウェブ会議なら対面の会議と同じくらい伝えやすいと感じています。

なお、ご相談の時間は平均的に30分~1時間です。主なご相談の内容は、特許・意匠・商標の出願に関することや調査に関することです。

関係者が参加しやすい

特許・意匠・商標の打ち合わせは、部署や階級を越えて複数人が関わる場合があります。内容が重要なほど、その人数が多くなる傾向にあります。

ウェブ会議システムの場合、関係者の方々が別の社屋にいても、オンラインでリモート参加できますので、その分社内調整しやすいようです。

また、ウェブ会議は対面の会議ほど拘束力が低い分、キーマンとは言えないまでも出席してほしい人にも声をかけやすいのではないでしょうか。

画面共有で密な擦り合わせ

相談に備えて事前に全ての資料を準備できるに越したことはありませんが、二足三足のわらじを履いている方が多く、そこまで時間に余裕を持てないのが実情のようです。

そのため、少なくとも端末に電子データで関係資料を準備しておいたり、メモ帳に重要なサイトのURLをコピペしておいたりすれば、相談中に適宜それらを画面で共有できます。

当所の実績では、相談や打ち合わせの内容を箇条書きレベルで簡単に事前共有し、それに基づいて会議を行うことでお客様側の目的を達成できていると感じています。

まとめ

特許・意匠・商標の活動は、競合他社に一歩遅れると取り返しできないリスクがあるものの、簡単ではなく進みにくい面もあるため、早めの着手をおすすめしています。

そういった場合も、ウェブ会議システムを活用してお気軽にご相談いただくことで、事業活動全体が進みやすくなると考えています。

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文責:打越佑介

Ⓡ(Rマーク)とは?小学生にもわかる意味・メリット等

商品の名前やロゴの隅っこに小っちゃく付いている「Ⓡ(Rマーク)」、見たことありませんか?あれはなんだろ~?って思ったことがある人も多いのではないでしょうか。

そこで、Ⓡ(Rマーク)の意味・メリットの他、注意事項・付け方例を、小学生にもわかるよう簡単に解説します。

Ⓡ(Rマーク)の意味

Ⓡ(Rマーク)とは、「Registered(登録済み)」の頭文字「R」を意味し、審査を通過して登録された商標(=登録商標)にのみ付けることが許されています。

「登録商標」とは、登録番号が付いている商標です。そして、登録番号は、審査を通過して登録料を納付した後に付けられます。つまり、審査を通過していない商標や登録料を納付していない商標(=未登録商標)に、Ⓡ(Rマーク)を付けられません。

未登録商標にⓇ(Rマーク)を付けると、虚偽の表示の罪(商標法第74条,80条)として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑に課されますので、注意してください。

Ⓡ(Rマーク)のメリット

Ⓡ(Rマーク)は、小さいので決して目立ちませんが、見た目以上に大きなメリットを受けられる可能性を秘めています。

メリット①:登録商標であることをアピールできる

登録商標かどうかは、実は誰でも特許庁の公開データベース(J-PlatPat)で調べられますが、弁理士のようなプロ以外でわざわざそんなことをするとは考えにくいです。

そのため、登録済みであることを自ら発信しなければ、売れてる商品やサービスの名称ほど、真似されるリスクが高まります。真似すれば手っ取り早くビジネスに相乗りできるからです。

そこで、たとえ小さくてもⓇ(Rマーク)を付ければ、登録商標であることをアピールできるため、悪意があってもなくても第三者が安易に真似しにくくなるでしょう。

メリット②:ブランディング効果が高まる

商品やサービスを有名ブランドに築き上げるには時間がかかるため、商品名やサービス名を商標登録することは、ブランディングの大前提と考えられます。

さらに、商標登録しただけでは終わらず、Ⓡ(Rマーク)を付けて登録商標であることをアピールし続け、真似されないように対策することで、ブランディング効果が高まります。

一方、Ⓡ(Rマーク)を付けず、知らぬ間にいろんな人たちに使われてしまうと、登録商標から普通名称化してしまった「エスカレーター」のように取り返しのつかないことになるかもしれません。

階段式昇降機を表す「エスカレーター」は、当初は米国オーチス・エレベータ・カンパニーが製造販売する階段式昇降機を表示する商標として需要者に認識されていた。しかし、現在は階段式昇降機を表す一般的名称として認識され、他社が製造販売する階段式昇降機にも「エスカレーター」の名称が使用されている。階段式昇降機に「エスカレータ」の名称を付して販売しても、それがオーチス社の商品であると意識されることはない。

引用:商標の普通名称化-wikipedia

Ⓡ(Rマーク)の注意事項

Ⓡ(Rマーク)についてよくある質問や盲点を紹介します。

出願中の商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

商標登録の出願(申請)をしたのでⓇ(Rマーク)を付けてもいいですか?という質問をよく受けますが、出願中の商標は未登録商標のため、Ⓡ(Rマーク)を付けられません。

そこで、もしどうしても真似されたくない場合やブランディングを進めたい場合は、「TMマーク」を付けることをおすすめします。「TM」とは、「Trademark」の略称で、未登録であっても自分の商標であることをアピールできます。

ただし、「TMマーク」には法的効力がないです。つまり、出願中の商標を真似されても、「TMマーク」を付けているからといって止めさせられるわけではありませんので、注意してください。

登録後に変更した商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

デザインを変更したため、登録商標とは違う商標ですが、Ⓡ(Rマーク)を付けてもいいですか?という質問もよく受けますが、色以外を変更した商標はもはや登録商標とは言えない恐れがあるため、答えはNo(Ⓡを付けてはいけない)です。

繰り返しになりますが、Ⓡ(Rマーク)を付けられるのは、登録商標のみです。色を変更しただけなら登録商標と見なされますが(商標法第70条第1項)、形を変更したら、たとえ登録商標に似ていても、登録商標ではなくなります。

もし形を変更した商標にⓇ(Rマーク)を付けたい場合は、あらためて商標登録の出願(申請)しましょう。

登録外のビジネスに使用する商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

登録商標は、商標(商品名・ロゴ・図形など)と、商標を使用するビジネス(指定商品・指定役務)とがセットです。つまり、商標が同じでも、商標を使用するビジネスが異なれば、商標にⓇ(Rマーク)を付けられません。

例えば、アプリケーション名として商標「ABC」を登録したにもかかわらず、食品名として商標「ABC」を使用したら、商標「ABC」にⓇ(Rマーク)を付けられません。

同じように、ソフトウェア開発の社名として商標「DEF」を登録したにもかかわらず、飲食店の店名として商標「DEF」を使用したら、商標「DEF」にⓇ(Rマーク)を付けられません。

Ⓡ(Rマーク)の付け方(位置や大きさ)

Ⓡ(Rマーク)の付け方にルールはありませんが、商標のデザインを崩してしまうは好ましくありませんので、一般的なⓇ(Rマーク)の位置や大きさを当所ロゴ(IPRoom)で紹介します。

商標の右上外側にⓇを付けるパターン

最も一般的であり、Ⓡ(Rマーク)が商標と近過ぎず遠過ぎない位置にあるため、バランスもよく見やすいです。

商標の右上やや内側にⓇを付けるパターン

Ⓡ(Rマーク)が「m」の最右端と同じ位置にある分、全体的にコンパクトな印象を与えやすいです。

商標の右下にⓇを付けるパターン

「IPRoom」の後半「oom」が小文字の分、全体的に下側が詰まっている印象を与えやすいかもしれません。

『「〇〇〇」は●●●の登録商標です。』とするパターン

場所の指定はありませんが、例えばウェブサイトのどこかに文章で登録商標の表示をします(下記画像は「よくある質問」)。

まとめ

Ⓡ(Rマーク)は必須ではありませんが、その意味やメリットや注意事項を知らないと、損したりトラブルに巻き込まれたりするおそれもありますので、気を付けてください。

Ⓡ(Rマーク)をどこにどれくらいの大きさで付けるかは、商標とのバランスで決定すべきで、Ⓡ(Rマーク)を付けない場合、ウェブサイトに文章で登録商標の表示をすることをおすすめします。

文責:打越佑介

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

特許の経過情報とは、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間や特許の登録がなされた後、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などに関し、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)で誰でも見ることができる情報です。

そこで、特許の経過情報をどのように見たり使ったりするかを、小学生にもわかるように簡単に解説します。

検索結果画面の『経過情報』

まず、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)にて、公開特許公報や特許公報を検索したとき、検索結果がリスト表示されます。J-PlatPatの簡単な使い方は以下を参照してください。

☛ 特許を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

このとき、検索結果の右端の「各種機能」の列にある『経過情報』というボタンをクリックしてください(下図の赤枠)。

『経過記録』の使い方

『経過情報』をクリックすると、『経過情報照会』という画面に切り替わります。

このうち、『経過記録』『出願情報』『登録情報』を見ることができますが、よく使うのは『経過記録』です(下図の赤枠内)。

そして、『経過記録』には、『審査記録』と『登録記録』が含まれています。

『審査記録』

『審査記録』には、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間に、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などが列挙されています。

さらに、列挙されている以下の書類をクリックすると、中身を見ることができます。

①特許願(明細書、請求の範囲、要約書、図面)・・・特許の申請書類です。

②出願審査請求書・・・審査を請求しないと出願そのものがなかったものとなります。

③拒絶理由通知書・・・新規性違反や進歩性違反など特許にできない理由が記載された書類です。

④手続補正書・・・③を解消するために特許の申請書類を書き換えた書類です。

⑤意見書・・・④により③を解消できたことを審査官に主張する書類です。

⑥特許査定・・・審査を通過して特許が認められると特許庁から届く書類です。

特に、競合他社の特許を調べるときに、③拒絶理由通知書、④手続補正書、⑤意見書を見れば、特許が認められた要因や最終的な特許請求の範囲を確認できます。

『登録記録』

『登録記録』には、特許が認められた後、特許を登録するための特許料や特許を維持するための維持費(年金)の支払い状況が列挙されています。

ここを見たときに、もし競合他社の特許の維持費(年金)の支払いが直近の期限内に行われていない場合、その特許は消滅済みの可能性が高いため、本当に消滅しているかを慌てずに調べましょう。

まとめ

特許の経過情報は、特許が登録されるまでの流れ・特許が登録された要因・特許の維持費(年金)の支払い状況などを、誰でもインターネットで確認することができる、とてもありがたい情報です。

なお、経過情報は、特許のみならず、実用新案・意匠・商標でも見ることができます。

文責:打越佑介

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

「競合他社がどんな特許を取っているか調べていたら、当社が開発中の製品について特許を取られていいました。どうすればいいですか?」という相談をよく受けます。

このとき、お客様が入手した書類は、『公開特許公報』や『特許公報』なんですが、お客様はそもそもこれらが違う種類の書類であることをご存じないことがほとんどです。

そこで、競合他社の『公開特許公報』や『特許公報』が見つかっても、慌てなくていいように、これらの違いと見分け方を、小学生でもわかるように解説します。

公開特許公報は特許ではない

まず、『公開特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『公開特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『公開特許公報』とは、簡単に言いますと、特許出願された書類を特許庁が公開したものに過ぎません。

なぜなら、特許の出願日(申請日)から1年半後に特許出願された書類を公開するルール(特許法第64条)があるためです。

つまり、『公開特許公報』は特許ではないので、慌てる必要はありません。

特許公報だけではわからない

つぎに、『特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『特許公報』とは、簡単に言いますと、出願(申請)された特許の書類に対して特許庁が審査して特許と認めたものです。

つまり、『特許公報』は特許ですので、注意はすべきですが、まだ慌てる必要はありません。

特許が生存中か?消滅済みか?

『特許公報』でも、生存中か、それとも消滅済みかによって、判断は大きく異なります。

特許が生存中か消滅済みかは、特許の経過情報から確認できます。特許の経過情報の見方や使い方は以下を参照してください。

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

一般的に、特許が「生存中」とは、年金(維持費)の支払いを続けていることにより、特許が存在している状態です。

一方、特許が「消滅済み」とは、年金(維持費)の支払いを止めてしまったり支払う必要がなくなってしまったことにより、特許が存在していない状態です。

つまり、『特許公報』だとしても、消滅済みであればもはや特許ではないため、慌てる必要はありません。

まとめ

競合他社がどんな特許を取っているか調べている最中、以下のステップ1・2を検討し、最終的に特許が生存中の『特許公報』が見つかった場合、要注意です。

ステップ1:『公開特許公報』か『特許公報』か?

ステップ2:『特許公報』における特許が生存中か?消滅済みか?

<あわせて読むと効果的なおすすめ記事>

特許公報のみ検索するには?J-PlatPatの使い方のコツ

文責:打越佑介

新規性とは?小学生にもわかる意味・注意事項・図解

特許を取るためには、発明(アイディア、商品、ウェブシステム等)に「新規性」が必要です。

「新規性」を簡単に言いますと、「出願手続(申請)前に発明が誰にも知られていない状態」で、「誰にも知られていない状態」とは、「開示していない状態」です。

また、「開示」とは、例えば、「(発明を)販売したり、インターネットで紹介したり、展示会に出展したり、セミナーで詳細を教えたりする行為」を意味します。

そこで、具体的に「新規性」の意味を図解します。

出願手続前に開示したら新規性がなくなる

①と②は、新規性がある場合と新規性がない場合との対比です。①と②の違いは、出願手続と開示の順番です。

①の場合、出願手続の後に発明を開示しており、新規性があるため、他の条件を満たせば特許を取れます。

②の場合、出願手続の前に発明を開示しており、新規性がないため、知られてしまった部分について基本的に特許を取れません。

そのため、開示は、出願手続前にしない(出願手続後にする)ことをおすすめします。

出願手続前に開示したら絶対に特許取れない?

うっかり出願手続前に開示してしまったり、どうしても出願手続前に開示しなければならなかったりすることもあるでしょう。

そんなときは、「新規性喪失の例外適用手続」を活用できます。

この手続は、本当は新規性がないけど、新規性がないことをなかったことにしてくれる、ありがたい制度ですが、2つの条件をクリアする必要があります。

一つ目の条件は、開示してから1年以内に出願手続すること、二つ目の条件は、出願手続した日から30日以内に手続すること、です。

「新規性喪失の例外適用手続」により、他の条件を満たせば特許を取れますが、手続自体が煩雑なので、基本的にはおすすめしていません。

まとめ

シンプルに、出願手続前に開示しない、開示するのは出願手続後、ということを覚えておいていただけると嬉しいです。

実際、このことを知らなかったため、残念ながら特許を取れなくなってしまった例を、私はたくさん知っているからです。

早く開示してビジネスを加速させたいお気持ちはよくわかりますが、そこをグッとこらえて、ぜひ弁理士にご相談ください。

 

文責:打越佑介

【表解】商標の登録料10年分と5年分どっちがお得?

商標登録は、審査を通過した後(登録査定を受けた後)、登録料を支払わなければ正式に登録されません。

しかし、商標の登録料には、商標権の存続期間である10年分を一括納付するか、5年分を前期・後期で分割納付するか、二通りあります。

一括納付は一時的な出費が大きいけど割安、分割納付は一時的な出費が小さいけど割高ですが、実際にはどれくらいの差があり、結局はどちらがお得なのでしょうか。

令和3年特許法等改正に伴う料金改定後の料金にて計算してみました。

一括納付と分割納付(前期+後期)との金額差

表①から、登録後10年以内に商標が不要にならなければ、一括納付が分割納付より1区分あたり1,500円お得です。

一括納付と分割納付(前期のみ)との金額差

表②から、登録後5年未満で商標が不要になり後期分を納付しなければ、分割納付は一括納付より1区分あたり15,700円お得です。

時系列で考えるメリット・デメリット

商標登録の数が多ければ多いほど、一括納付と分割納付との金額差が大きくなることを忘れないようにしてください。

その点、分割納付のメリットは、支払いを後回しにできることと考えられます。つまり、支払いの時期を5年ずらすことで、手元資金をその分確保できます。

経費処理のタイミングも、判断要素の一つです。登録料を納付する年度に予算が多めの場合は一括納付、予算が少なめ場合は分割納付にしておいたほうが無難でしょう。

まとめ

商標登録の登録料を一括納付するか分割納付するかは、①将来的な商標の使用状況、②一括納付と分割納付との金額差、③会社の事情に適した出費のタイミング、を考慮して決定することをおすすめします。

 

文責:打越佑介

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

どんな意匠(デザイン)が登録されているか調べるときには、特許庁の公開データベースであるJ-PlatPatをよく使います。

そこで、各検索ページを私がどんな感じで使っているか簡単に紹介します。なお、下記検索ページ名(見出し)は、工業所有権情報・研修館サイトにリンクしています。

意匠検索

意匠を調べる場合、まずは「意匠検索」画面から検索しはじめることが多いです。

「検索キーワード」で調査対象を絞る

「検索キーワード」の検索項目でよく使うのは、以下の項目です。これらを組み合わせて、見つけたい意匠を絞っていきます。

・意匠に係る物品/物品名/原語物品名

・意匠に係る物品の説明

・意匠の説明

・日本意匠分類/Dターム

・出願人/権利者

「意匠に係る物品/物品名/原語物品名」を使う場合、特許庁が公開している「意匠法施行規則別表第一」を参考にしています。

「意匠に係る物品の説明」を使う場合、意匠の特徴を想定して入力し、類似意匠の有無を検索します。ただし、全ての意匠登録公報に「意匠に係る物品の説明」が記載されているわけではなく、むしろ記載されていないほうが多いです。

「検索オプション」でさらに調査対象を絞る

画面を下にスクロールすると、「検索オプション」という枠があります。枠の右上の「開く+」を押すと、検索オプションが表示されます。

「検索オプション」でよく使うのは、以下の項目です。

・意匠の種別のチェックボックス:部分意匠 or 画像を含む意匠 or 関連意匠/類似意匠

・日付指定:公報発行日/公知日/発行日/受入日or 出願日(国際登録日) or 登録日

例えば、部分意匠のみ検索したい場合は、意匠の種別のチェックボックスの「部分意匠」にチェックを入れます。

また、出願日を指定したい場合、左の空欄にのみ年月日(例:20200401)を入力すれば、その年月日以降の意匠出願を検索でき、左右の空欄に年月日(例:20200401、20200801)を入力すれば、その年月日の範囲で意匠出願を検索できます。

意匠分類照会

意匠検索」画面を使っていて、「検索キーワード」メニューで「日本意匠分類/Dターム」を選択する前に、見つけたい意匠に関連するキーワード(デザイン分野や特徴など)を思い付いている場合、「意匠分類照会」画面にて「キーワード検索」を選択して空欄(「例)乗用自動車」と書いてあるところ)にそのキーワードを入力して検索すると、日本意匠分類のコードが表示されます。

表示されたコードをクリックすると「分類照会」画面に切り替わります。その画面上でまたそのコードをクリックすると、画面上に表示された空欄内にそのコードが入力されます。

その後、「意匠検索にセット」ボタンをクリックすると、「意匠検索」画面が別ウィンドウで立ち上がり、「検索キーワード」の検索項目「日本意匠分類/Dターム」に選択したコードが自動的に入力されます。

なお、知りたいコードを見つけたら、そのコードをコピーして、手動で「意匠検索」画面の「日本意匠分類/Dターム」に貼り付けても問題ありません。

意匠番号照会

内容を知りたい意匠の出願番号や登録番号などわかっている場合、「番号種別」メニューでそれぞれ「出願番号」や「登録番号」選択し、各番号を入力します。

意匠番号照会」画面を使う場面としては、例えば、お客様から出願番号や登録番号を教えてもらい、これらの意匠の内容を調べるときです。

まとめ

こんな感じで各検索ページを使っています。

登録済みの意匠を調べる場合、代表図面がサムネイル表示されますので、検索時のヒット件数が多くて目視である程度類否を判断しています。

 

文責:打越佑介(アップデート:2020/8/12)