下町ロケットを知らない人のための特許戦略7ヵ条

2020年8月14にSankeiBizから「中小の知財・技術保護へ指針、今秋にも提示 大企業の不当取得防止」という記事がリリースされました。

記事によれば、下町ロケットような技術力の高い中小企業が、大企業と公正な取引を行えるような支援策を政府が検討しており、2021年度予算案の概算要求に盛り込むというものです。

『下町ロケット』の概要についてはウィキペディアで確認できますが、弁理士としては下町ロケットから学べる特許戦略を忙しい中小企業の社長などで下町ロケットを知らない人にも知ってもらえると嬉しいです。

そこで、特許戦略としてはほんの一部に過ぎませんが、わかりやすく7ヵ条にまとめました。なお、下町ロケットをこれから見るため内容を知りたくない人はお読みになるのをご遠慮くださいますようお願いいたします。

①特許出願のタイミングが勝敗を分ける

帝国重工(大企業)が佃製作所(中小企業)に勝てなかった最大の原因は、佃製作所(中小企業)より特許を出すのが2週間遅かったことです。2週間前に同じ特許を他社に出されていることを知る術はありませんので、仕方がありません。

ただ、このような例はウソのようで本当にあることです。特許は出願(申請)してから1年半は公開されないため、今から1年半前以降にどんな特許が出されているかは、公開されなければわかりません。

そのため、事業活動において大切なことは、ライバルに先を越されないようにタイミングを逃さず特許を出すことであり、仮に同じ特許が他社に出されていてもその特許を回避する案を決めること、です。

なお、優先権主張出願という制度を利用することで、特許出願してから1年以内であれば、出願した特許の具体例(研究成果)を追加して内容を補強したりすることができます。

②特許には時間を短縮する価値がある

佃製作所(中小企業)の強みはバルブシステムの特許であり、帝国重工(大企業)は佃製作所(中小企業)の許可を得ずにバルブシステムを製造すれば、特許を侵害することになります。

さらに、帝国重工(大企業)のスターダスト計画実施も間もなくです。もはや佃製作所(中小企業)のバルブシステムの特許を回避する新たなバルブシステムの開発は時間的に不可能です。

つまり、帝国重工(大企業)の弱みは時間です。もしスターダスト計画実施前に新たなバルブシステムを開発できれば、佃製作所(中小企業)の特許権を侵害することにはならず、佃製作所(中小企業)との交渉も不要です。

このように、帝国重工(大企業)にとって、佃製作所(中小企業)の特許の価値はバルブシステム開発の時間短縮です。このことから、特許には、時間的な価値があると言えます。

③特許とノウハウは一心同体である

中小企業は特許を取れるなら取るべきですが、特許と同じくらいノウハウが大事ということを忘れてはいけません。中小企業の多くは、大手企業にないノウハウを持っているはずです。

以下は、佃製作所(中小企業)のバルブシステムの開発技術を、特許とノウハウに分けたイメージ図です。左側がバルブシステム構造の特許(青)、右側がバルブシステムの製造ノウハウ(赤)です。

帝国重工(大企業)は全部品を内製(自社で製造した部品)したかったため、佃製作所(中小企業)の特許の使用許諾が必要でした。帝国重工(大企業)には設備投資力もあり、製造装置(マシニングセンタなど)の性能にも自信があったようです。

一方、佃製作所(中小企業)は特許の使用許諾ではなく、バルブシステムを部品として帝国重工(大企業)に供給したいと申し出ました。なぜなら、佃製作所(中小企業)は特許のみならず、バルブシステムの品質を極限まで高めるための強烈なノウハウ(穴あけ、削り、研磨など)を持っていたからです。

帝国重工(大企業)は特許の使用許諾さえあればバルブシステムの構造を真似できます。そもそも帝国重工(大企業)もバルブシステムの研究開発をしていたため、製造ノウハウもあるはずです。

しかし、佃製作所(中小企業)の真の強みは、バルブシステムの製造ノウハウです。製造装置の精度を上回る技術者の感覚や勘所は、帝国重工(大企業)に真似できません。このようなノウハウを非公開(秘密)にすることで、佃製作所(中小企業)は特許と同じくらい貴重な“価値ある技術”をウリ(強み)にできるわけです。

中小企業としては、特許をとるアイデア(技術的思想)があっても、公開してまで特許をとる価値があるか?、価値があるとしたらどこまで公開すべきか?非公開のノウハウと組み合わせて特許の価値を高められるか?など、検討すべき点はたくさんあります。

なお、会社経営上、ある技術者一人しかしらないノウハウがあるというのは、強みにも弱みにもなります。なぜなら、その技術者が退職したり病欠したりしたら、誰もそのノウハウを再現できなくなるからです。そのため、ノウハウを社内で共有できる仕組みづくりも重要です。

④特許を売るか貸すかは経営判断である

佃製作所(中小企業)の特許を買い取りたい帝国重工(大企業)の提示額は20億円でした。特許をお金に換えることは簡単ではないため、売れるときに売ってしまったほうがいいという考え方もあります。

特許の維持費もかかるし、新しい技術が登場すれば特許の価値も下がります。そのため、特許を持っている会社は、特許を売るか貸すか?いくらで売るか貸すか?そもそも買い手や借り手はいるのか?などを模索しています。

しかし、佃製作所(中小企業)は、バルブシステムの特許のみならず製造ノウハウも持っており、製品の品質に絶対の自信があったため、帝国重工(大企業)に特許を売りも貸しもせずに部品供給という経営判断をしました。

なお、特許を貸した場合の利益(ライセンス収入)は、一般的に製品の売上に対する1~5%と言われています。100万円売り上げたら1~5万円の収入ということです。特許の貢献度にもよるため、もっと多い場合もあれば、少ない場合もあります。

⑤特許=製品の品質保証ではない

まず前提として、特許は製品(モノ)が実際になくてもとれます。つまり、アイデア(技術的思想)さえあれば誰でも特許を出せます(審査をクリアできるかどうかは書類の書き方次第です)。

そして、特許の審査をクリアする上で、製品の品質保証は必要ありません。理論的に製品(モノ)がつくれれればOKで、品質基準をクリアした製品が100回に1個しかつくれないとしても、特許はとれます。

真珠で有名なミキモトの創業者・御木本幸吉が発明した真珠の養殖方法は1916年に特許となりましたが、実際に真珠を取得できた確率は数パーセントだったそうです。

このように、特許と製品の品質保証は異なるため、佃製作所(中小企業)のように特許をとっても帝国重工(大企業)の品質基準をクリアできる製品をつくれるかどうかは別の話であることに注意してください。

⑥特許は技術者の創作意欲から生まれる

日本の技術者の多くは、給与以上に研究開発に没頭できる環境を求めており、特許庁が実施したアンケートでそのような結果が出ています(以下画像、引用: 「職務発明制度に関するアンケート調査結果について 」 by 特許庁)。

「(1)研究開発を行う上で重要と思うこと」として、技術者が最も重視しているのは、日本企業・海外企業どちらも「現実的な問題を解決したいと思う願望」(85%以上)です。一方、日本企業にとって「金銭的な処遇」(71.7%)は他の項目より低いことがわかります。

また、中小企業が技術者との関係で注意すべきは、職務発明(技術者が職務上考えた発明)に関する取り決めです。

例えば、職務発明は会社のもの(会社が特許を受ける権利を持っている状態)であること、そのかわり技術者にはそれなりの金銭等をあげること、などを就業規則に書いておかないと、会社に不満をもった技術者から訴えられるリスクがあります。

おそらく、佃製作所(中小企業)と技術者(佃社長含む)とは、職務発明の取り決めがあるのではないしょうか。そのため、技術開発部が考えた職務発明(バルブシステム)について、特許を受ける権利(特許権を所有する資格)があるのは佃製作所(中小企業)で、そのかわりに技術者にはそれなりの金銭(ボーナスなど)が支払われていると推測できます。

⑦特許について営業担当者が無知だと危ない

技術開発にはコストがかかる、売れない特許なんて意味がない、と営業担当者は考えがちです。製品が売れなければ会社は生き残れず、製品を売ることが営業担当者の使命であれば、然るべき意見です。

そのため、営業担当者が売上(成績)を伸ばすことを優先して、会社が特許を出願する前に客先にプレゼンしてしまったり、他社の特許を侵害する製品の注文を受けてしまったりすることもあるようです。

技術力があってもそれを守れなければ、会社は孔の空いた鍋のようなもので、業績も上がりにくいです。同じように、営業力を高めるには、営業担当者が製品の知識に加え、特許のリテラシーを持つことも必要であり、これによりお客様からの信用が高まるのではないでしょうか。

なお、センサーや測定器のファブレスメーカーであり高収入でも有名なキーエンスは、類まれなる営業力を武器としていますが、特許の公開公報のヒット件数は2600件以上(2020年8月16日時点)であり、2020年の知財価値ランキングではトップになるほどの技術力を兼ねていると考えられます。

まとめ

あらためまして、下町ロケットから中堅企業や中小企業が学べる特許戦略の7ヵ条は、以下のようになります。

①特許出願のタイミングが勝敗を分ける
②特許には時間を短縮する価値がある
③特許とノウハウは一心同体である
④特許を売るか貸すかは経営判断である
⑤特許=製品の品質保証ではない
⑥特許は技術者の創作意欲から生まれる
⑦特許について営業担当者が無知だと危ない

ウィズコロナ・アフターコロナの時代における知的財産活動のニューノーマル、すなわち、従来の知的財産活動には考えられなかった新たな常識や常態がいずれスタンダードになると想定されますので、時代に合った特許戦略の検討・実行も大切です。

アイピールームではウェブ会議システムによる特許相談の仕組みづくりに力を入れており、既に利用者の皆様に有益な成果を出せていますので、興味がありましたら以下も参考にしてみてください。

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文責:打越佑介

ウェブで特許の相談をする3つのメリット

新型コロナウィルス感染症対策として、政府から緊急事態宣言がなされた2020年4月7日以降、大企業・中堅企業・中小企業・フリーランスを問わず、リモートワーク(テレワーク・在宅勤務)の導入が急加速しました。

ウィズコロナ・アフターコロナの時代における知的財産活動のニューノーマル、すなわち、従来の知的財産活動には考えられなかった新たな常識や常態も、時間の問題かもしれません。

そこで、ニューノーマルの一つとなるかもしれないウェブ会議システムを利用して、特許・実用新案・意匠・商標といった知的財産の相談や打ち合わせをするメリットを3つ紹介します。

オンラインデモを見れる

Microsoft Teams・Google Meet・Zoomといったウェブ会議システムには、参加者同士でパソコン等の端末画面を共有できる機能があり、打ち合わせや相談の際にとても役立ちます。

例えば、新しいアイディアを考えたので、特許を取れるか知りたい、という相談をよく受けます。このとき、GoogleやJ-PlatPatを使って、似たようなアイディアがないかを、その場で検索のデモンストレーションすることがあります。

従来の対面型では、こちらのノートパソコンの画面を見せれば検索結果を共有できましたが、プロジェクターやディスプレイがなければ複数の検索キーワードやこれらの組み合わせ方のデモンストレーションを共有できませんでした。

検索結果は、検索キーワードやこの組み合わせ方によって変わります。つまり、オンラインデモをウェブ会議システムの画面で共有できれば、検索結果への理解が深まるのみならず、検索のノウハウも得られるメリットもあります。

遠隔地からも参加できる

経験上、特許の担当者は、会社の規模によって異なります。例えば、大~中堅企業では、知的財産部門または技術部門の方、中小企業では、社長または重役の方、が多いです。

そのため、実際に特許のアイディアを出した技術者(発明者)の方々が打ち合わせに出席しないことはよくあり、それ自体は弁理士にとって大きな問題ありません。

ただ、発明者の方が特許について知っていると、新たな創作活動をしやすくなるはずです。言い換えると、新たな創作活動にとって発明者が特許のみならず知的財産全般について知っていることは有益です。

その点、ウェブ会議システムであれば、たとえ遠隔地の事業所等にいる発明者の方でも、打ち合わせ日時も調整しやすく、気軽に参加できるため、特許について教育できるメリットもあります。

意思決定を早めにできる

自社で特許を取るにしろ、競合他社の特許を侵害しないようにするにしろ、これらは事業活動と共に検討することです。つまり、事業活動の然るべきタイミングで検討しなければ手遅れになりかねません。

例えば、新規性を失っている商品にもかかわらず、特許を取りたい、という相談をよく受けます。これは、事業活動は順調だったものの、特許取得を検討すべきタイミングを逃してしまったと考えられます。

また、新商品の開発を進めていたところ、競合他社の特許が見つかった、という相談もあります。これも、事業活動は順調だったものの、競合他社の特許を調査すべきタイミングを逃してしまったと考えられます。

この点、ウェブ会議システムを活用することで、このようなタイミングも逃さず、全国どこからでも弁理士に早めに相談できる分、意思決定を早めにできるメリットがあります。

まとめ

逆に、ウェブ会議システムのデメリットが可能性の低い情報漏えいのリスクとすると、このリスクを上回るメリットをウェブ会議システムで得られると考えます。

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文責:打越佑介

建築物・内装の意匠登録状況をネットで情報収集する方法

令和元年の意匠法改正により、令和2年4月1日から、新たに建築物・内装の意匠(デザイン)を保護できるようになりました。

改正前の意匠の保護対象は、プレハブといった組立家屋に限られていたため、本改正は不動産業界や什器業界にとってインパクトのあるものとなり得ます。

一方、意匠出願は、これらが登録に至らない限り特許庁から正式に公開されないため、出願内容の傾向や統計を把握できるのは、さらに半年くらい先になるかもしれません。

そこで、少しでも早く最新情報を入手して見通しを立てたい場合におすすめな2つの方法を紹介します。

1.令和元年意匠法改正特設サイトで情報収集

当然ながら、特許庁の公開情報が正確無比でしょう。特許庁は、法改正の経緯を含め、平成29年(2017年)から情報公開を行っています。

令和元年意匠法改正特設サイト by 特許庁ウェブサイト

近々で興味深い公開情報としては、7月13日にリリースされた「改正意匠法に基づく新たな保護対象についての意匠登録出願状況」で、7月1日時点の統計では、建築物の意匠出願が133件、内装の意匠出願が98件です。

ただ、建築物の件数は、検索条件である日本意匠分類の幅が広く、実はノイズ(建築物ではない意匠出願)も含まれているのではないかと推測します。

一方、内装の件数は、検索条件である日本意匠分類が「L3-7」に絞られているため、ノイズは含まれておらず正確な数値と推測できます。

その他、「改訂意匠審査基準の概要」もわかりやすいため、意匠出願を検討する際の参考になると思います。

2.J-PlatPatで情報収集

J-PlatPatは、特許庁の公開データベースです。繰り返しになりますが、意匠の場合、特許や商標のような公開制度がないため、登録に至らない限り、J-PlatPatで公開されません。

また、商標の場合、出願後1か月前後で内容がJ-PlatPatで公開されるため、競合他社等の出願状況を確認できるのは、1か月遅れとなります。

一方、意匠の場合、出願から登録まで早くても半年前後かかるため、競合他社等の出願状況を確認できるのは、半年遅れとなります。

この遅れを理解した上で、J-PlatPatで情報収集する場合、例えば以下の日本意匠分類で検索するのが効率的と考えられます。

L2-5010:橋りょう など

L2-600:防波堤、ダム など

L3-100:ガスタンク、煙突、灯台 など

L3-130:駅舎、空港ターミナル など

L3-140:鉄塔、電柱 など

L3-2000:高層ビル など

L3-21:戸建住宅 など

L3-24:ロードサイド店舗 など

L3-7:内装の意匠

<参考:意匠登録出願の基礎(建築物・内装) 22頁 by 特許庁>

もしJ-PlatPatでの意匠の調べ方がわからない場合は、以下を参考にしてみてください。

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

まとめ

建築物・内装の意匠登録第1号はどのようなデザインなのか、また、各業界で意匠登録がどのように活用されるのか、興味深いです。

本件については、新たな情報を入手次第、本記事のアップデートや新たな記事の作成を検討しています。

 

文責:打越佑介

Ⓡ(Rマーク)とは?小学生にもわかる意味・メリット等

商品の名前やロゴの隅っこに小っちゃく付いている「Ⓡ(Rマーク)」、見たことありませんか?あれはなんだろ~?って思ったことがある人も多いのではないでしょうか。

そこで、Ⓡ(Rマーク)の意味・メリットの他、注意事項・付け方例を、小学生にもわかるよう簡単に解説します。

Ⓡ(Rマーク)の意味

Ⓡ(Rマーク)とは、「Registered(登録済み)」の頭文字「R」を意味し、審査を通過して登録された商標(=登録商標)にのみ付けることが許されています。

「登録商標」とは、登録番号が付いている商標です。そして、登録番号は、審査を通過して登録料を納付した後に付けられます。つまり、審査を通過していない商標や登録料を納付していない商標(=未登録商標)に、Ⓡ(Rマーク)を付けられません。

未登録商標にⓇ(Rマーク)を付けると、虚偽の表示の罪(商標法第74条,80条)として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑に課されますので、注意してください。

Ⓡ(Rマーク)のメリット

Ⓡ(Rマーク)は、小さいので決して目立ちませんが、見た目以上に大きなメリットを受けられる可能性を秘めています。

メリット①:登録商標であることをアピールできる

登録商標かどうかは、実は誰でも特許庁の公開データベース(J-PlatPat)で調べられますが、弁理士のようなプロ以外でわざわざそんなことをするとは考えにくいです。

そのため、登録済みであることを自ら発信しなければ、売れてる商品やサービスの名称ほど、真似されるリスクが高まります。真似すれば手っ取り早くビジネスに相乗りできるからです。

そこで、たとえ小さくてもⓇ(Rマーク)を付ければ、登録商標であることをアピールできるため、悪意があってもなくても第三者が安易に真似しにくくなるでしょう。

メリット②:ブランディング効果が高まる

商品やサービスを有名ブランドに築き上げるには時間がかかるため、商品名やサービス名を商標登録することは、ブランディングの大前提と考えられます。

さらに、商標登録しただけでは終わらず、Ⓡ(Rマーク)を付けて登録商標であることをアピールし続け、真似されないように対策することで、ブランディング効果が高まります。

一方、Ⓡ(Rマーク)を付けず、知らぬ間にいろんな人たちに使われてしまうと、登録商標から普通名称化してしまった「エスカレーター」のように取り返しのつかないことになるかもしれません。

階段式昇降機を表す「エスカレーター」は、当初は米国オーチス・エレベータ・カンパニーが製造販売する階段式昇降機を表示する商標として需要者に認識されていた。しかし、現在は階段式昇降機を表す一般的名称として認識され、他社が製造販売する階段式昇降機にも「エスカレーター」の名称が使用されている。階段式昇降機に「エスカレータ」の名称を付して販売しても、それがオーチス社の商品であると意識されることはない。

引用:商標の普通名称化-wikipedia

Ⓡ(Rマーク)の注意事項

Ⓡ(Rマーク)についてよくある質問や盲点を紹介します。

出願中の商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

商標登録の出願(申請)をしたのでⓇ(Rマーク)を付けてもいいですか?という質問をよく受けますが、出願中の商標は未登録商標のため、Ⓡ(Rマーク)を付けられません。

そこで、もしどうしても真似されたくない場合やブランディングを進めたい場合は、「TMマーク」を付けることをおすすめします。「TM」とは、「Trademark」の略称で、未登録であっても自分の商標であることをアピールできます。

ただし、「TMマーク」には法的効力がないです。つまり、出願中の商標を真似されても、「TMマーク」を付けているからといって止めさせられるわけではありませんので、注意してください。

登録後に変更した商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

デザインを変更したため、登録商標とは違う商標ですが、Ⓡ(Rマーク)を付けてもいいですか?という質問もよく受けますが、色以外を変更した商標はもはや登録商標とは言えない恐れがあるため、答えはNo(Ⓡを付けてはいけない)です。

繰り返しになりますが、Ⓡ(Rマーク)を付けられるのは、登録商標のみです。色を変更しただけなら登録商標と見なされますが(商標法第70条第1項)、形を変更したら、たとえ登録商標に似ていても、登録商標ではなくなります。

もし形を変更した商標にⓇ(Rマーク)を付けたい場合は、あらためて商標登録の出願(申請)しましょう。

登録外のビジネスに使用する商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

登録商標は、商標(商品名・ロゴ・図形など)と、商標を使用するビジネス(指定商品・指定役務)とがセットです。つまり、商標が同じでも、商標を使用するビジネスが異なれば、商標にⓇ(Rマーク)を付けられません。

例えば、アプリケーション名として商標「ABC」を登録したにもかかわらず、食品名として商標「ABC」を使用したら、商標「ABC」にⓇ(Rマーク)を付けられません。

同じように、ソフトウェア開発の社名として商標「DEF」を登録したにもかかわらず、飲食店の店名として商標「DEF」を使用したら、商標「DEF」にⓇ(Rマーク)を付けられません。

Ⓡ(Rマーク)の付け方(位置や大きさ)

Ⓡ(Rマーク)の付け方にルールはありませんが、商標のデザインを崩してしまうは好ましくありませんので、一般的なⓇ(Rマーク)の位置や大きさを当所ロゴ(IPRoom)で紹介します。

商標の右上外側にⓇを付けるパターン

最も一般的であり、Ⓡ(Rマーク)が商標と近過ぎず遠過ぎない位置にあるため、バランスもよく見やすいです。

商標の右上やや内側にⓇを付けるパターン

Ⓡ(Rマーク)が「m」の最右端と同じ位置にある分、全体的にコンパクトな印象を与えやすいです。

商標の右下にⓇを付けるパターン

「IPRoom」の後半「oom」が小文字の分、全体的に下側が詰まっている印象を与えやすいかもしれません。

『「〇〇〇」は●●●の登録商標です。』とするパターン

場所の指定はありませんが、例えばウェブサイトのどこかに文章で登録商標の表示をします(下記画像は「よくある質問」)。

まとめ

Ⓡ(Rマーク)は必須ではありませんが、その意味やメリットや注意事項を知らないと、損したりトラブルに巻き込まれたりするおそれもありますので、気を付けてください。

Ⓡ(Rマーク)をどこにどれくらいの大きさで付けるかは、商標とのバランスで決定すべきで、Ⓡ(Rマーク)を付けない場合、ウェブサイトに文章で登録商標の表示をすることをおすすめします。

文責:打越佑介

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

特許の経過情報とは、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間や特許の登録がなされた後、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などに関し、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)で誰でも見ることができる情報です。

そこで、特許の経過情報をどのように見たり使ったりするかを、小学生にもわかるように簡単に解説します。

検索結果画面の『経過情報』

まず、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)にて、公開特許公報や特許公報を検索したとき、検索結果がリスト表示されます。J-PlatPatの簡単な使い方は以下を参照してください。

☛ 特許を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

このとき、検索結果の右端の「各種機能」の列にある『経過情報』というボタンをクリックしてください(下図の赤枠)。

『経過記録』の使い方

『経過情報』をクリックすると、『経過情報照会』という画面に切り替わります。

このうち、『経過記録』『出願情報』『登録情報』を見ることができますが、よく使うのは『経過記録』です(下図の赤枠内)。

そして、『経過記録』には、『審査記録』と『登録記録』が含まれています。

『審査記録』

『審査記録』には、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間に、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などが列挙されています。

さらに、列挙されている以下の書類をクリックすると、中身を見ることができます。

①特許願(明細書、請求の範囲、要約書、図面)・・・特許の申請書類です。

②出願審査請求書・・・審査を請求しないと出願そのものがなかったものとなります。

③拒絶理由通知書・・・新規性違反や進歩性違反など特許にできない理由が記載された書類です。

④手続補正書・・・③を解消するために特許の申請書類を書き換えた書類です。

⑤意見書・・・④により③を解消できたことを審査官に主張する書類です。

⑥特許査定・・・審査を通過して特許が認められると特許庁から届く書類です。

特に、競合他社の特許を調べるときに、③拒絶理由通知書、④手続補正書、⑤意見書を見れば、特許が認められた要因や最終的な特許請求の範囲を確認できます。

『登録記録』

『登録記録』には、特許が認められた後、特許を登録するための特許料や特許を維持するための維持費(年金)の支払い状況が列挙されています。

ここを見たときに、もし競合他社の特許の維持費(年金)の支払いが直近の期限内に行われていない場合、その特許は消滅済みの可能性が高いため、本当に消滅しているかを慌てずに調べましょう。

まとめ

特許の経過情報は、特許が登録されるまでの流れ・特許が登録された要因・特許の維持費(年金)の支払い状況などを、誰でもインターネットで確認することができる、とてもありがたい情報です。

なお、経過情報は、特許のみならず、実用新案・意匠・商標でも見ることができます。

文責:打越佑介

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

「競合他社がどんな特許を取っているか調べていたら、当社が開発中の製品について特許を取られていいました。どうすればいいですか?」という相談をよく受けます。

このとき、お客様が入手した書類は、『公開特許公報』や『特許公報』なんですが、お客様はそもそもこれらが違う種類の書類であることをご存じないことがほとんどです。

そこで、競合他社の『公開特許公報』や『特許公報』が見つかっても、慌てなくていいように、これらの違いと見分け方を、小学生でもわかるように解説します。

公開特許公報は特許ではない

まず、『公開特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『公開特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『公開特許公報』とは、簡単に言いますと、特許出願された書類を特許庁が公開したものに過ぎません。

なぜなら、特許の出願日(申請日)から1年半後に特許出願された書類を公開するルール(特許法第64条)があるためです。

つまり、『公開特許公報』は特許ではないので、慌てる必要はありません。

特許公報だけではわからない

つぎに、『特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『特許公報』とは、簡単に言いますと、出願(申請)された特許の書類に対して特許庁が審査して特許と認めたものです。

つまり、『特許公報』は特許ですので、注意はすべきですが、まだ慌てる必要はありません。

特許が生存中か?消滅済みか?

『特許公報』でも、生存中か、それとも消滅済みかによって、判断は大きく異なります。

特許が生存中か消滅済みかは、特許の経過情報から確認できます。特許の経過情報の見方や使い方は以下を参照してください。

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

一般的に、特許が「生存中」とは、年金(維持費)の支払いを続けていることにより、特許が存在している状態です。

一方、特許が「消滅済み」とは、年金(維持費)の支払いを止めてしまったり支払う必要がなくなってしまったことにより、特許が存在していない状態です。

つまり、『特許公報』だとしても、消滅済みであればもはや特許ではないため、慌てる必要はありません。

まとめ

競合他社がどんな特許を取っているか調べている最中、以下のステップ1・2を検討し、最終的に特許が生存中の『特許公報』が見つかった場合、要注意です。

ステップ1:『公開特許公報』か『特許公報』か?

ステップ2:『特許公報』における特許が生存中か?消滅済みか?

<あわせて読むと効果的なおすすめ記事>

特許公報のみ検索するには?J-PlatPatの使い方のコツ

文責:打越佑介

特許請求の範囲とは?小学生にもわかる意味・図解

特許を取れば、なんでもかんでも守れるわけではなく、審査で認められた範囲でしか守れず、この範囲を「特許請求の範囲」といいます。

特許の持ち主は、誰かのモノマネ品が「特許請求の範囲」に含まれれば、モノマネ品の販売などを止められます。

逆に、”誰か”に該当する人は、モノマネ品が「特許請求の範囲」に含まれなければ、モノマネ品の販売などを続けられます。

つまり、「特許請求の範囲」とは、ずばり特許のことですが、これを図解と共に説明します。

特許請求の範囲の請求項1に要注意

特許の書類(特許公報)には、一般的に、「請求項1」、「請求項2」、「請求項3」・・・と書かれています。

この「請求項●」とは、ずばり特許のことで、「請求項1」、「請求項2」、「請求項3」・・・をまとめて「特許請求の範囲」といいます。

そして、「特許請求の範囲」のうち、注意すべきは「請求項1」です。

なぜなら、一般的に、「請求項2」以下は、「請求項1」に基づいている(従属している)からであり、別の言い方をすれば、「請求項1」に別のアイディア(機能、部品、工程など)を加えたものだからです。

つまり、「請求項1」が要注意な理由は、請求項2以下よりも範囲が広いからです。このことを図解したのが以下です。

請求項の内容がシンプルなほど範囲が広い

図は、ソフトウェア特許(俗にいうビジネスモデル特許)をイメージしたもので、「請求項1」は機能A,B,Cを搭載したソフトウェア、「請求項2」は機能A,B,C,Dを搭載したソフトウェア、という意味です(請求項3以下も同じ)。

請求項2以下のソフトウェアは、機能A,B,Cのみならず、機能D,E,F,Gを搭載している分、請求項1のソフトウェアより範囲が狭いということになります。

逆に、請求項1のソフトウェアは、機能A,B,Cのみであり、機能D,E,F,Gを搭載していない分、請求項2以下のソフトウェアより範囲が広いということになります。

つまり、請求項の内容がシンプルな(請求項に含まれる機能が少ない)ほど、範囲が広いということになります。このあたりが、特許の難しいところであり、勘違いされやすいところでもあります。

請求項2以下と違っても請求項1を含めば侵害

例えば、請求項2(機能A,B,C,D)のソフトウェアに似ているけど異なる機能A,B,C,EのソフトウェアXを販売した場合、ソフトウェアXは少なくとも機能A,B,Cを有するため、請求項1のソフトウェアを含むことになります。

同様に、請求項3(機能A,B,C,D,E)のソフトウェアに似ているけど異なる機能A,B,C,F,GのソフトウェアYを販売した場合、ソフトウェアYは少なくとも機能A,B,Cを有するため、請求項1のソフトウェアを含むことになります。

つまり、請求項2や請求項3のソフトウェアに似て非なるソフトウェアでも、請求項1のソフトウェアを含んでいる場合、請求項1を侵害していることになります。

このことは、請求項1が要注意であり、請求項の内容がシンプルなほど範囲が広いという理由につながります。

実際の商品と特許とは逆の考え方

一方、実際の商品(例えば、ソフトウェア)は、多機能ほど充実していることから、特許請求の範囲とは考え方が逆です。

つまり、特許を取る場合は、たとえ実際の商品が多機能でも、できる限り余計な機能を含めず、必要最低限の機能に絞り込むわけです

ここで、「必要最低限の機能」とは、世の中に存在する技術(先行技術)と比べて少しでも上回る(進歩している)ものを意味します。

例えば、機能A,Bのソフトウェアが世の中に存在する技術である場合、これよりも進歩している機能A,B,Cを請求項1にします。

そして、実際の商品に含まれる他の機能D,E,F,Gは、請求項1に従属する請求項2,3,4,5にすることで、商品の機能を段階的に特許で守れます。

なお、特許出願した場合、審査次第で特許請求の範囲が狭まることもあるため、請求項1のみならず、請求項2,3,4,5も重要です。

参考:特許請求の範囲が審査で狭まる理由【図解】

まとめ

特許請求の範囲は、特許の持ち主のみならず、特許を侵害するかもしれない人にとっても重要ですので、意味や読み方を知っておくと安心です。

一般的に、請求項1が要注意です。なぜなら、特許請求の範囲の中で、請求項1が最も広い範囲に該当するためです。

特許を取得する場合は、実際の商品が多機能であっても、最低限の機能を請求項1とし、他の機能を請求項2以下にします。

特許に侵害しているかもしれない場合、商品が請求項1の機能を含んでいるかどうかを調べることで、侵害しているかどうかを判断します。

 

文責:打越佑介

弁理士1次試験本番で焦らずに合格できた3つの作戦

弁理士1次試験はマークシート方式。60問を3.5時間ぶっ通しで解く地獄のような試験です。

私は1次試験が苦手だったので、3回目にしてようやく受かりました。ボーダーライン+1点で。

実力的にボーダーギリギリの人は、本番をテクニックでどう乗り切るか、事前に決めておくことをおすすめします。

そこで、試験本番で焦らないよう、事前に決めたおかげで合格できた3つの作戦をご紹介します。

1.1問目から順番に解答

60問の中には、特許法・実用新案法・意匠法・商標法・国際条約・不正競争防止法・著作権法があります。 これをどういう順番で回答するか?ということです。

1問目から回答するだけじゃなく、得意な法律からやったり、苦手な法律からやったりする人もいます。

私は、2回の本試験と多数の模試を駆使して、全てのやり方を試しました。そして、1問目から回答したところ、3回目に合格しました。

なぜ1問目から回答することにしたかというと、マークミスしにくいし、タイムスケジュールしやすかったからです。シンプルイズベストというやつです。

2.トイレに行かない

これも2回の本試験でシミュレーションしました。こんなこと決めるの~?って思った方、あなどってはいけません。

頭を休めるためにトイレへ行くという人もいます。でも、トイレに行くと少なくとも2~3分のロスが生じます。そして、集中力も切れます。つまり、時間が足りなくなります。

私の場合、1回目の試験でトイレに行ったら時間が足りず失敗しました。2回目はトイレに行きたいけど我慢して集中力が散漫になり失敗しました。そして3回目はトイレに行かず我慢もすることなく合格しました。

時間が足りないという人は、トイレに行かなくてもいい対策をとるべきです。水分補給を取り過ぎないとか、集中力が切れない体力をつけるとか。

3.凡ミス防止リストを直前に確認

本番では緊張のため、超基本的なこともぶっ飛んで真っ白になることがあります。いつもならありえない失敗もしかねません。そのせいで不合格はもったいなさすぎます。

例えば、名前を一番初めに書くとか、マークシートは順番を飛ばさず塗るとか、問題をよく読む(いくつあるか型?or回答絞り型?)とか、試験であるあるの凡ミス対策です。

私は弱点補強ノートのうち、最初のページに凡ミス防止のチェックリストを書いて、それを試験直前に必ず振り返っていました。これには緊張をほぐす効果もありました。

ボーダーギリギリの人だと焦って凡ミスするし、合格安全圏の人でも油断して凡ミスします。合格するためには絶対凡ミスできないため、試験直前でも見直せるチェックリストは有効です。

まとめ

私はとにかくタイムスケジュールを徹底し、解答以外の時間を無駄にしないようにしました。わからない問題でも考えすぎずサッとマークして次の問いに進みました。

水分量も減らしてトイレ予防をし、凡ミス防止のチェックリストを思い出しながら、1問目から60問目まで順番に解き抜きました。

見直し時間は最後の5分。最悪、見直さなくてもいいようにしました。このような対策ができたから、1点も無駄にせずボーダーギリギリで合格できたと分析しています。

 

文責:打越佑介

新規性とは?小学生にもわかる意味・注意事項・図解

特許を取るためには、発明(アイディア、商品、ウェブシステム等)に「新規性」が必要です。

「新規性」を簡単に言いますと、「出願手続(申請)前に発明が誰にも知られていない状態」で、「誰にも知られていない状態」とは、「開示していない状態」です。

また、「開示」とは、例えば、「(発明を)販売したり、インターネットで紹介したり、展示会に出展したり、セミナーで詳細を教えたりする行為」を意味します。

そこで、具体的に「新規性」の意味を図解します。

出願手続前に開示したら新規性がなくなる

①と②は、新規性がある場合と新規性がない場合との対比です。①と②の違いは、出願手続と開示の順番です。

①の場合、出願手続の後に発明を開示しており、新規性があるため、他の条件を満たせば特許を取れます。

②の場合、出願手続の前に発明を開示しており、新規性がないため、知られてしまった部分について基本的に特許を取れません。

そのため、開示は、出願手続前にしない(出願手続後にする)ことをおすすめします。

出願手続前に開示したら絶対に特許取れない?

うっかり出願手続前に開示してしまったり、どうしても出願手続前に開示しなければならなかったりすることもあるでしょう。

そんなときは、「新規性喪失の例外適用手続」を活用できます。

この手続は、本当は新規性がないけど、新規性がないことをなかったことにしてくれる、ありがたい制度ですが、2つの条件をクリアする必要があります。

一つ目の条件は、開示してから1年以内に出願手続すること、二つ目の条件は、出願手続した日から30日以内に手続すること、です。

「新規性喪失の例外適用手続」により、他の条件を満たせば特許を取れますが、手続自体が煩雑なので、基本的にはおすすめしていません。

まとめ

シンプルに、出願手続前に開示しない、開示するのは出願手続後、ということを覚えておいていただけると嬉しいです。

実際、このことを知らなかったため、残念ながら特許を取れなくなってしまった例を、私はたくさん知っているからです。

早く開示してビジネスを加速させたいお気持ちはよくわかりますが、そこをグッとこらえて、ぜひ弁理士にご相談ください。

 

文責:打越佑介

オンライン特許相談でビジネスを加速!【予約可】

特許や商標などのお悩みをアイピールームのオンライン特許相談で解決してぜひビジネスを加速させてください。

基本的に、Microsoft Teams・Google Meet・Zoom・Whereby・Skypeといったウェブ会議システムを使用し、無料で、かつ全国どこからでもお受けします。

ご相談予約を承っていますので、ご利用の際は下記のご利用方法をご参照の上、ご予約ください。

背景

新型コロナウィルス感染症対策として政府から緊急事態宣言がなされ、2020年4月7日から5月6日(延長により5月25日)まで外出自粛や休業の要請がなされました。

これを切っ掛けに、大企業・中堅企業・中小企業・フリーランスを問わず、リモートワーク(テレワーク・在宅勤務)の導入が急加速しました。

リモートワークでは、会社への忠誠心の低下や公私の混同などのデメリットも懸念されていますが、労働生産性の向上や経費の削減などのメリットが注目されています。

アイピールームの取り組み

アイピールームでは、新型コロナウィルス感染症対策以前から、時間の有効活用・紙資源の削減・情報の管理などをキーワードにして、リモートワークの研究及び導入を進めてまいりました。

私たちにとってのリモートワークは、オンラインによる相談対応も含み、お客様が抱える特許や商標のお悩みを解決する手段として、オンラインの活用は有効と考えています。

実際、オンライン会議システムにより、全国からのお問い合わせに対応でき、解決策の提案まで行うこともあります。

オンラインでも丁寧に

リモートワークにより、社内外の人々と触れ合う機会が減ってしまうことは否めませんが、だからこそ人と人とのコミュニケーションを今まで以上に大切にすべきと考えています。

オンラインでの打ち合わせも、対面に負けないくらいの感動を提供できるよう、難しい言葉をなるべく使わずに、わかりやすく説明するように努めています。

知的財産に関する基本的なご質問からビジネスに関する具体的なお悩みまで、全国どこからでも気軽にお問い合わせいただき、安心してビジネスに取り組んでいただくことが、私たちの幸せです。

ビジネスが加速する理由

全てのビジネスには知的財産が伴うはずです。知的財産とは、商品の仕様・製法・デザイン、社名・商品名・ロゴマークなどであり、いずれもビジネスにとって重要です。

そして、業績を伸ばしている会社ほど、競合他社の動向も考えていることから、知的財産の保護に対して高い意識を持っていると感じています。

すなわち、特許・意匠・商標といった知的財産権の取得により、競合他社の模倣のみならず追随を抑止できるため、相対的にビジネスが加速すると考えられます。

また、ビジネス上の知的財産の取り扱いを明確にしておくと、突発的な知的財産トラブルにも迅速に対応しやすい分、安心してビジネスを加速させられるはずです。

あらゆるご相談に対応

アイピールがお客様に選ばれる理由の一つは、知的財産に関するお悩みをワンストップで解決できることです。オンラインでも以下のような相談に対応いたします。

特許のご相談例

ありそうでなかったWebシステムを守れる?

協力先への提案前に特許を出して安心したい

特許か実用新案かどちらにすべきか?

大企業と共同開発した装置を特許出願したい

特許取得のため相談しながら開発を進めたい

資金調達のアピールのために特許出願したい

競合他社対策として特許件数を増やしたい

外国出願も見据えて特許戦略を考えたい

オンラインで特許戦略をサポートしてほしい

商標のご相談例

愛着ある社名を商標登録したほうがいい?

SEO対策としてサイト名を商標登録したい

新事業のシステム名を登録できるか調べたい

海外のブランド名を日本で商標登録したい

文字かロゴかどちらを商標登録すべきか?

商標登録したロゴと実際のロゴが違う

将来性を考えて指定商品・役務を提案希望

商標登録を更新すべきかどうかわからない

オンラインで商標戦略をサポートしてほしい

意匠のご相談例

意匠登録前にコンテストに応募して大丈夫か

販売サイトに出品する前に意匠出願したい

部分的には新しいデザインを意匠登録したい

商品に「意匠登録済み」と付してたい

デザインを外注した新商品を意匠登録したい

特許か意匠かどちらで保護すればいい?

シリーズ商品のバリエーションを守りたい

特許がダメなら出願変更して意匠登録したい

オンラインで意匠戦略をサポートしてほしい

ご利用方法(ステップ1~3)

どなたでもステップ1~3で簡単にご利用いただけます。なお、ご相談者様がウェブ会議システムのホストになることを希望なさる場合、その旨をステップ1でご表明ください。

ステップ1:お問い合わせフォームから相談予約(お客様→IPRoom)

まずはお問い合わせフォーム(メニューにもリンクあり)の「お問い合わせ内容」に以下のようにご記入の上、ご送信ください。

1.問い合わせ理由

オンライン特許相談の希望

2.希望日時(例)

第1希望=5月27日9時~11時

第2希望=5月27日13時~16時

第3希望=5月28日9時~9時30分

3.相談内容(例)

新しい商品を製造販売したいので特許で守りたい

4.提供できる資料等(例)

説明用資料、サンプル品

5.その他(例)

参加人数2名

なお、なるべく多くの方にご利用いただけるよう、基本的にお一人様一回につき30分とさせていただきます。

ステップ2:相談枠設定完了のご連絡(お客様←IPRoom)

基本的に、Microsoft Teams 又は Google Meetで会議を開催する予定です。他のウェブ会議システムをご希望の場合は、その旨をステップ1でご表明ください。

上記問い合わせ内容を確認後、上記希望日時に応じた開催日時の相談枠を設定したURL及び緊急連絡手段を電子メールやGoogleカレンダー経由で返信します。

なお、こちらの都合上、上記希望日時で相談枠を設定できない場合は別の日時候補を、また、上記問い合わせ内容について事前に質問があれば質問を、それぞれ電子メールで返信します。

ステップ3:ウェブ会議の開始(お客様⇔IPRoom)

そして、実際の開催日時に、上記電子メールやGoogleカレンダー内のURLをクリックして相談枠に入室すると、ウェブ会議が開始します。

通信障害等により開始できない場合、上記電子メールでお伝えした緊急連絡手段をご活用ください。

注意事項

オンライン特許相談のセキュリティは、ウェブ会議システムのレベルによるため、万が一の情報流出を懸念される方は、ご利用をご遠慮いただくか、資料の画面共有や秘密情報の詳細説明をお控えください。

なお、アイピールームでは、オンライン特許相談の開催にあたり、以下の点を徹底します。

・ウェブ会議システムの最新バージョンの利用

・相談枠に対するパスワードの設定(設定可能なシステムのみ)

・相談枠への入室前後の相談者様の本人確認

また、オンライン特許相談のご利用にあたり、ご相談の内容や回数が無料枠を超える場合は有料になることもありますが、事前にその旨をお伝えしますのでご安心ください。

最後に

新型コロナウィルスの流行後においても、リモートワーク(テレワーク・在宅勤務)が活用されると予想されていることから、あるべき姿は、今後も継続して研究されていくでしょう。

アイピールームでは、オンライン会議システムを有効に活用し、あらゆるご相談者様からのお問い合わせに対して、継続的かつ真摯に支援してまいります。

なお、オンライン特許相談をご利用の際は、よくある質問を事前にご覧いただけますと、より有意義な時間になると考えていますので、こちらもご活用ください。

 

文責:打越佑介

創立1周年のご挨拶

日頃より、当事務所に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

 

おかげさまで、アイピールーム国際特許事務所は、2020年(令和2年)6月1日で創立1周年を迎える運びとなりました。

 

思えば、1年前のこの日以降、今日という日をどんな気持ちで迎えているかを、想像する暇もないくらい、がむしゃらでした。

 

ましてや、新型コロナウィルスの影響により、私たちの生命がおびやかされ、暮らしが一変することなど、夢にも思いませんでした。

 

そうした中で、1周年を迎えることができましたことは、一重に皆様方の温かいご指導ご支援の賜物と深く感謝し御礼申し上げます。

 

先行きの見えにくい時代とはいえ、感謝の気持ちを常に抱き、皆様方のお役に立てるよう、誠心誠意努めてまいります。

 

今後ともアイピールーム国際特許事務所をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

敬具

 

令和2年6月1日
アイピールーム国際特許事務所
代表 弁理士 打越 佑介
〒141-0032 東京都品川区大崎五丁目1番5号 高徳ビル4階
TEL :03-6403-4540
FAX :03-6332-8548
HP :https://iproom.jp

【表解】商標の登録料10年分と5年分どっちがお得?

商標登録は、審査を通過した後(登録査定を受けた後)、登録料を支払わなければ正式に登録されません。

しかし、商標の登録料には、商標権の存続期間である10年分を一括納付するか、5年分を前期・後期で分割納付するか、二通りあります。

一括納付は一時的な出費が大きいけど割安、分割納付は一時的な出費が小さいけど割高ですが、実際にはどれくらいの差があり、結局はどちらがお得なのでしょうか。

令和3年特許法等改正に伴う料金改定後の料金にて計算してみました。

一括納付と分割納付(前期+後期)との金額差

表①から、登録後10年以内に商標が不要にならなければ、一括納付が分割納付より1区分あたり1,500円お得です。

一括納付と分割納付(前期のみ)との金額差

表②から、登録後5年未満で商標が不要になり後期分を納付しなければ、分割納付は一括納付より1区分あたり15,700円お得です。

時系列で考えるメリット・デメリット

商標登録の数が多ければ多いほど、一括納付と分割納付との金額差が大きくなることを忘れないようにしてください。

その点、分割納付のメリットは、支払いを後回しにできることと考えられます。つまり、支払いの時期を5年ずらすことで、手元資金をその分確保できます。

経費処理のタイミングも、判断要素の一つです。登録料を納付する年度に予算が多めの場合は一括納付、予算が少なめ場合は分割納付にしておいたほうが無難でしょう。

まとめ

商標登録の登録料を一括納付するか分割納付するかは、①将来的な商標の使用状況、②一括納付と分割納付との金額差、③会社の事情に適した出費のタイミング、を考慮して決定することをおすすめします。

 

文責:打越佑介