出願審査請求のタイミングのメリット・デメリット

特許を申請してから成立するまでの期間は遅らせれば4~5年、急げば3か月未満です。この期間は、特許の申請書類を審査してもらうお願い(出願審査請求)のタイミング次第です。

出願審査請求は、特許を申請した日(出願日)から3年以内であればいつでもできます。申請と同時でも出願日からちょうど3年後でも大丈夫です。タイミングに決まりはありません。

もし3年経っても出願審査請求しなければ、特許の申請を取り下げたものと特許庁に見なされてしまいます。そのため、特許を申請したけど事情により必要なくなったなら、出願審査請求せずに放置しておけばOKです。

特許の成立を遅らせる場合と急ぐ場合の手続と期間の目安を図解します。

 

 

一般的に、出願審査請求のタイミングを変えることで、下記①②③④のプランを選択できます。
①遅らせるプラン(出願日から3年後に出願審査請求)
②急ぐプラン(出願日に出願審査請求)
③かなり急ぐプラン(出願日に出願審査請求+早期審査)
④超急ぐプラン(出願日に出願審査請求+スーパー早期審査)

特許の成立を遅らせるメリット・デメリット

プラン①のメリットは、a)最大3年間事業と市場を観察できる点、b)競合他社をけん制できる点です。

メリットa)は、事業や市場の状況の良し悪しによって、特許を成立させるべきか否かを検討できる、という意味です。悪ければ特許を断念、良ければ特許を成立、というような方針を決定できます。

メリットb)は、あえて特許を成立させない状態を2~3年つくることで、競合他社を市場に参入しにくくする、という意味です。この場合、競合他社は市場参入のリスク特許侵害の回避案を検討せざるを得ず、少なくとも参入のタイミングを遅らせることができます。

プラン①のデメリットは、プラン②③④のメリットを得られない点であり、これをデメリットとするならばプラン②③④にすべきです。

特許の成立を急ぐメリット・デメリット

プラン②③④のメリットは、然るべきタイミングに特許を活用できる点です。プラン②の実行後、条件次第でプラン③の早期審査や④のスーパー早期審査を行えます。

特許を活用すべきタイミング例は以下のとおりです。
・競合他社が特許を侵害しているおそれがある場合
・金融機関や機関投資家から資金調達したい場合
・事業の信頼性を第三者(IPO時の上場審査部など)に説明する場合
・特許の成立をマーケティング(宣伝活動など)に活かしたい場合

またプラン③④に限ったメリットは、残念ながら特許が不成立(拒絶査定)だったとしても、特許の申請書類が公開されない点です。

このメリットは、特許の申請書類は出願日から1年半過ぎると必ず一般公開され、競合他社がこの申請書類を参考にして新たな発明をしてしまうリスクがあるため、このリスクを回避できる、という意味です。

プラン②③④のデメリットは、プラン①のメリットを得られない点であり、これをデメリットとするならばプラン①にすべきです。

まとめ

特許の成立は遅らせるべき?急ぐべき?という疑問への回答は以下のとおりです。出願審査請求のタイミングにも良し悪しがあるということです。

☆特許の成立を遅らせるメリット☆
a)最大3年間事業と市場を観察できる点
b)競合他社をけん制できる点

☆特許の成立を急ぐメリット☆
・然るべきタイミングに特許を活用できる点
・不成立時に特許の申請書類が公開されない点(プラン③④に限る)

なおそれぞれのデメリットは他方のメリットを得られない点に他なりません。

文責:打越佑介

コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績

当所では2020年の新型コロナウィルスの感染予防前からリモートワークを取り入れていたため、ウェブ会議システムでの打ち合わせや相談対応もスムーズに行えています。

ウェブ会議システムの種類もいろいろありますが、当所ではMicrosoft Teams・Google Meet・Zoom・Whereby・Skypeといった普及率の高いシステムを活用し、お客様側の都合にも柔軟に対応しています。

そこで、コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績を踏まえて、お客様にとって弁理士とウェブ会議で打ち合わせする3つのメリットをご紹介します。

お悩みの早期解決

ウェブ会議システムの最大のメリットはセッティングの速さと考えています。つまり、双方で会議開催の日時を調整しやすいことから、お悩みの早期解決が実現しています。

当所の実績では、最短で問い合わせ直後にウェブ会議設定及び開催です。電話やメールでは伝えにくい内容も、ウェブ会議なら対面の会議と同じくらい伝えやすいと感じています。

なお、ご相談の時間は平均的に30分~1時間です。主なご相談の内容は、特許・意匠・商標の出願に関することや調査に関することです。

関係者が参加しやすい

特許・意匠・商標の打ち合わせは、部署や階級を越えて複数人が関わる場合があります。内容が重要なほど、その人数が多くなる傾向にあります。

ウェブ会議システムの場合、関係者の方々が別の社屋にいても、オンラインでリモート参加できますので、その分社内調整しやすいようです。

また、ウェブ会議は対面の会議ほど拘束力が低い分、キーマンとは言えないまでも出席してほしい人にも声をかけやすいのではないでしょうか。

画面共有で密な擦り合わせ

相談に備えて事前に全ての資料を準備できるに越したことはありませんが、二足三足のわらじを履いている方が多く、そこまで時間に余裕を持てないのが実情のようです。

そのため、少なくとも端末に電子データで関係資料を準備しておいたり、メモ帳に重要なサイトのURLをコピペしておいたりすれば、相談中に適宜それらを画面で共有できます。

当所の実績では、相談や打ち合わせの内容を箇条書きレベルで簡単に事前共有し、それに基づいて会議を行うことでお客様側の目的を達成できていると感じています。

まとめ

特許・意匠・商標の活動は、競合他社に一歩遅れると取り返しできないリスクがあるものの、簡単ではなく進みにくい面もあるため、早めの着手をおすすめしています。

そういった場合も、ウェブ会議システムを活用してお気軽にご相談いただくことで、事業活動全体が進みやすくなると考えています。

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文責:打越佑介

建築物・内装の意匠登録に関する状況(2020年10月8日)

令和元年の意匠法改正により、令和2年4月1日から、新たに建築物・内装の意匠(デザイン)を保護できるようになりました。

審査がスムーズに行われれば、意匠出願から審査結果(登録査定)が届くまで6か月くらいなので、間もなく登録例が出てくると推測しています。

一方、少しでも早く建築物や内装の意匠登録状況を知りたい方もいると考え、以前に下記の記事を投稿しました。

建築物・内装の意匠登録状況をネットで情報収集する方法

7月1日時点と10月8日時点の対比

そして2020年10月8日に、特許庁は新たな意匠登録出願状況を公開しましたので、本記事にて再び共有します。

▶ 令和元年意匠法改正特設サイト by 特許庁ウェブサイト

上記リンク先のサイトのうち、7月1日時点で公開された意匠登録出願状況も10月8日時点に更新されているため、上記記事で記録した前回分の数値データと今回分の数値データの対比を以下に示します。

建築物の意匠登録出願件数

7月1日時点 :133件(3か月間の出願件数月平均44.3件)

10月1日時点:204件(前回比71件増、3か月間の出願件数月平均23.7件/月)

内装の意匠登録出願件数

7月1日時点 : 98件(3か月間の出願件数月平均32.6件)

10月1日時点:132件(前回比34件増、3か月間の出願件数月平均11.3件/月)

考察:コロナウィルスと出願件数の影響

4月1日以降3か月間と対比すると、7月1日以降3か月間の出願件数月平均が減っているのは、コロナウィルス感染予防対策に伴い、出願活動の見直しが図られたためと仮説します。

テレワークの推進に伴い、特に家屋や商業施設の内装のデザインは大きく変化する可能性がある分、関連する会社は今後どのような権利を取得して模倣対策すべきかを検討していたのかもしれません。

一方、ワクチンの普及によりコロナ禍は終息すると仮説すれば、コロナ対策向けのデザインは早かれ遅かれ廃れると見込める分、アフターコロナの兆しがより鮮明になったタイミングで、出願活動が再開されて出願件数が再び増加する可能性もあるのではないでしょうか。

まとめ

もうしばらくウィズコロナが続くと思われますが、この間にアフターコロナを見据えた知財活動を継続して行うことは、今後の事業活動を加速させる可能性を秘めています。

建築物・内装の意匠登録も、ニューノーマル時代にどのように活用されるのか興味深いので、また新たな情報を入手次第、本記事のアップデートや新たな記事の作成を検討します。

 

文責:打越佑介

地域ブランド戦略と地域団体商標とのシナジー効果

全国地域ブランド総選挙」(経済産業省ウェブサイトにリンク)の開催について、2020年9月14日に経済産業省からリリースされました。2017年度は九州限定、2018年度は東海・北陸限定、2019年度は東北限定でしたが、2020年度はいよいよ全国のようです。

「地域ブランド」とは、簡単に言えば、その地域ならではの名産物や名所のように、その名称を聞くだけで産地や特徴をパッと思い浮かぶくらい人々に知られているもの、と考えられます。

そのため、地域ブランドの名称の多くは、”地名+商品や場所の普通名称”であり、これでは一般名称と勘違いされて誰でも気軽に使えてしまうえに、一般名称は基本的に商標登録できないため、2006年4月1日から地域団体商標制度が導入されて登録できるようになったわけです。

今ではたくさんの地域団体商標が登録され、経済効果を期待できるまで成長した地域ブランドもあるようですが、近年の日本の経済事情に加え、コロナウィルスの影響もあり、今後も地域ブランドのあり方は重要なテーマと言えそうです。

地域団体商標活用の効果

商標に限らず、特許など知的財産権は、単に取得するだけではあまり意味がなく、その権利を活用することで、費用対効果を得られます。地域団体商標を活用すると、以下の効果やメリットがあると言われています。

①商品のブランド力向上

地域ブランドの名称を地域団体商標登録するには、その名称が、ある程度の人々(難しくいうと、一定の地理的範囲の需要者)に知られていなければならず、かつそれを証明しなければなりません。

特許庁は、”地名+商品や場所の普通名称”の商標登録を簡単には認めず、その知名度を審査で問います。つまり、地域団体商標登録できれば、地域ブランドとしてある程度確立していると言えるわけです。

地域団体商標は、経済産業省の管轄である特許庁のお墨付なので、ブランディングにも役立ちます。国内全域や国外に販路を拡大するようになれば、その恩恵をさらに感じられるはずです。

②商品の生産者の意識向上

地域ブランドの名称を地域団体商標登録するには、その地名との関連性も必要です。

例えば、地域団体商標登録済みである「草津温泉Ⓡ」は、「群馬県吾妻郡草津町における温泉入浴施設を有する宿泊施設の提供」、「群馬県吾妻郡草津町における温泉入浴施設の提供」という地域限定のサービス名として認められています。

言い換えれば、その地域(「草津温泉Ⓡ」の場合は「群馬県吾妻郡草津町」)以外では地域ブランドの名称を使えなくなるため、実際にその名称を使えるのは、その地域内の限られた人たちのみとなります。

つまり、地域団体商標登録済みの名称を名乗って商売できるという事実が、その商売の事業主や従業員や職人といった商品(サービス含む)の生産者に自信を与え、品質の保持や改善にも積極的に取り組む意識の向上も期待できます。

③地域活性化への貢献

つまるところ、①商品のブランド力向上と、②商品の生産者の意識向上が実現すると、地域活性化につながると考えられます。逆算すると、地域活性化の実現には、地域団体商標が要因の一つになりそうです。

「貢献」には、観光客を増やしたり商品の売れ行きを伸したりといった”攻めの貢献”のみならず、地域ブランドに相乗りする業者など悪意のある第三者をブロックするといった”守りの貢献”も含まれるはずです。

地域ブランドが人気になればなるほど悪意のある第三者に狙われやすくなります。そのため、マーケティングやブランディングと地域団体商標の取得活動とを同時進行で行うのが理想的です。

地域団体商標によるシナジー事例

地域団体商標登録事例一覧(特許庁ウェブサイトにリンク)では、都道府県別にリストアップされています。各商標をクリックすると、地域ブランドの概要や地域団体商標の内容も見ることができます。

また、これら地域団体商標の活用事例(特許庁ウェブサイトにリンク)について、特許庁は動画・冊子・漫画でまとめています。地域ブランド戦略を予定している団体の方々のみならず、既に実行中の方々にも参考になる内容と感じました。

むしろ、内容が充実し過ぎてて、どれを参考にしたらいいか迷ってしまうくらいなので、私的にわかりやすく現実的と感じた3つの事例と、これらのポイントを整理してみました。

島根県「玉造温泉Ⓡ」

□地域ブランドをPRする役割分担(観光協会=企画・制作・事業実施・プロデュース、旅館組合=広報・プロモーション)を明確にしたため、各自が徹底して作業を行えた

□「玉造温泉Ⓡ」に加え、「美肌・姫神の湯Ⓡ」というコンセプト名を商標登録することで、”ブレない街づくりのコンセプト”が確立でき、将来の方向付けを行えた

□ 島根県「玉造温泉Ⓡ」の動画サイト=http://www.chugoku.meti.go.jp/ip/contents/81/

大分県「中津からあげⓇ」

□「商品ブランド認証基準」として、からあげの調味液の成分、鶏肉の原産地、店舗の所在地などを明確にした

□地域団体商標登録の審査通過条件(①「中津からあげ」という名称がある程度有名であること、②”からあげ=鶏肉”と認識されていること)を満たしていることを証明するために2000人以上のアンケートを回収した

□大分県「中津からあげⓇ」の動画サイト=https://www.youtube.com/watch?v=BxW6DHYrTGE&feature=youtu.be

宮崎県「みやざき地頭鶏Ⓡ」

□「商品ブランド認証基準」として、指定農場のみ生産許可、飼育の期間や密度などを明確にした

□販路開拓として、販売先を選定したり、試食会など首都圏開催のイベントに積極的に参加したりした

□宮崎県「みやざき地頭鶏Ⓡ」の動画サイト=https://www.youtube.com/watch?v=YLBDoKA2JY4&feature=youtu.be

まとめ

地域団体商標登録を取得するには、地域ブランドとしてある程度確立している必要があります。

つまり、地域団体商標登録を取得するために町おこしを行い、その結果として地域ブランドが成長すれば、まさに一石二鳥ではないでしょうか。

地域団体商標によるシナジー事例を見ると、地域団体商標活用の効果は、地域団体商標登録の取得前から得られているとも考えられます。

文責:打越佑介

J-PlatPatで特許検索数を初心者でも上手に絞るコツ

J-PlatPatで先行技術調査をする場合、「簡易検索」を使う初心者の方が多いようですが、キーワードの入力欄が一つしかありません。

「簡易検索」のメリットは、特許・実用新案、意匠、商標、どれでもボタンの切替で検索できる点ですが、デメリットは、検索の精度を高めにくい点です。

特許の場合、難解な公開特許公報や特許公報をある程度読まなければならない分、上手く検索しないとノイズ(関係ない公報)が多くなってしまいます。

そこで、初心者でもJ-PlatPatを使って特許検索数を上手に絞るコツをご紹介します。

アイディアを可視化する

J-PlatPatを使う前に、箇条書きでも文章でも説明図でもいいので、まずはアイディアを可視化しましょう。特に、アイディアを言葉に置き換えることは大切です。

新しいプロダクト(装置、日用品など)なら、部品・構造・組み立て方・効果など、ソフトウェア(アプリケーション、ウェブシステムなど)なら、機能・処理の流れ・効果などを、言語化します。

なぜなら、公開特許公報や特許公報は、プロダクトやソフトウェアなどのアイディアを言語化し、ストーリー調に作文したものだからです。公開特許公報と特許公報の違いは以下を参考にしてください。

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

ストーリー調とは、背景技術→従来技術の紹介→従来技術が抱える問題→上記問題に基づき解決すべき課題→上記課題を解決する手段(≒特許請求の範囲)→上記手段により得られる効果→アイディアの具体的な内容(=発明の実施形態)、といった流れのことです。

そのため、特許文献の検索数を上手に絞るには、探したい公開特許公報や特許公報のストーリーに使われそうな言葉に、アイディアを置き換えて言語化することが必要です。

例えば、「シャツ」といっても、Tシャツ、Yシャツ、ロングスリーブ・ノースリーブ・タンクトップ、襟有り・襟無し、プルオーバータイプ・ボタンタイプというように、いろいろあります。

つまり、「シャツ」を上位概念とすると、各種のシャツを下位概念として言語化することで、「シャツ」に関係する先行技術文献の漏れが減り、検索精度を高められます。

「特許・実用新案検索」で各検索項目を組み合わせる

J-PlatPatで先行技術調査する場合、「特許・実用新案検索」がおすすめです。無料で使えますし、検索項目を2つ以上選択できるため、「簡易検索」より調査精度が上がるはずです。

言い換えると、検索項目をうまく組み合わせれば、簡単に検索数を上手に絞れます。そこで、「特許・実用新案検索」を使った先行技術調査でよく使う検索項目とその理由をご紹介します。

1.請求の範囲

J-PlatPatで先行技術調査するということは、公開特許公報または特許公報を検索することになります。そして、これらの公報のうち、エッセンス(最も重要な部分)が詰まっているのが、「(特許)請求の範囲」です。

なぜなら、審査の結果、特許になる部分が「(特許)請求の範囲」なので、この部分にアイディアを上位概念や下位概念に言語化したキーワードが潜んでいる可能性が高いからです。

ちなみに、「要約/抄録」という検索項目は、文字数が「請求の範囲」より少ないため、活用頻度は低めです。また、「全文」や「明細書」という検索項目は、文字数が「請求の範囲」より多く、かつエッセンス以外の説明もされている分、ノイズ(関係性の低いキーワード)も含まれているため、活用頻度は低めです。

なお、複数のキーワードをAND条件にしたいときは、「請求の範囲」を二段以上選択し、OR条件にしたいときは、同じ検索欄にスペースを挟んで入力します。

2.発明・考案の名称/タイトル

「発明・考案の名称/タイトル」は、一般的に、アイディアのタイトルを上位概念化した言語にて表現します。ただ、上位概念過ぎて曖昧だと審査で不利になるおそれがあり、下位概念過ぎて具体的だと権利範囲が狭くなり過ぎる恐れがあるため、よく考えて決定すべき部分です。

そのため、「請求の範囲」で検索数が多過ぎたり少な過ぎたりして上手く絞れなかった場合、例えば、「発明・考案の名称/タイトル」と「請求の範囲」とを一つずつ選択し、前者には上位概念のキーワード、後者には下位概念のキーワードを入れて検索すると、上手く検索数を絞れることがあります。

3.出願人/権利者/著者所属

競合他社や似た特許を出してそうな会社を知っている場合、「出願人/権利者/著者所属」を選択し、それらの社名でキーワード検索することもあります。たくさん特許を出している競合他社ほど、この検索項目は有効です。

例えば、「発明・考案の名称/タイトル」と「出願人/権利者/著者所属」とを一つずつ選択し、ある発明についてシェア上位の会社がそれぞれ何件特許を出しているか調べることもできます。

まとめ

J-PlatPatで特許検索数を初心者でも上手に絞るコツをまとめると、以下の2つのステップになります。

ステップ1:アイディアを可視化する

ステップ2:「特許・実用新案検索」で各検索項目(「請求の範囲」、「発明・考案の名称/タイトル」、「出願人/権利者/著者所属」など)を組み合わせる

はじめからステップ1を完璧に行うのはむずかしいので、ある程度可視化できたらステップ2に進み、ある程度特許検索して先行技術を調べられたらまたステップ1に戻ると、アイデアの言語化もはかどり、その分検索精度も上がりますので、試してみてください。

文責:打越佑介

建築物・内装の意匠登録状況をネットで情報収集する方法

令和元年の意匠法改正により、令和2年4月1日から、新たに建築物・内装の意匠(デザイン)を保護できるようになりました。

改正前の意匠の保護対象は、プレハブといった組立家屋に限られていたため、本改正は不動産業界や什器業界にとってインパクトのあるものとなり得ます。

一方、意匠出願は、これらが登録に至らない限り特許庁から正式に公開されないため、出願内容の傾向や統計を把握できるのは、さらに半年くらい先になるかもしれません。

そこで、少しでも早く最新情報を入手して見通しを立てたい場合におすすめな2つの方法を紹介します。

1.令和元年意匠法改正特設サイトで情報収集

当然ながら、特許庁の公開情報が正確無比でしょう。特許庁は、法改正の経緯を含め、平成29年(2017年)から情報公開を行っています。

令和元年意匠法改正特設サイト by 特許庁ウェブサイト

近々で興味深い公開情報としては、7月13日にリリースされた「改正意匠法に基づく新たな保護対象についての意匠登録出願状況」で、7月1日時点の統計では、建築物の意匠出願が133件、内装の意匠出願が98件です。

ただ、建築物の件数は、検索条件である日本意匠分類の幅が広く、実はノイズ(建築物ではない意匠出願)も含まれているのではないかと推測します。

一方、内装の件数は、検索条件である日本意匠分類が「L3-7」に絞られているため、ノイズは含まれておらず正確な数値と推測できます。

その他、「改訂意匠審査基準の概要」もわかりやすいため、意匠出願を検討する際の参考になると思います。

2.J-PlatPatで情報収集

J-PlatPatは、特許庁の公開データベースです。繰り返しになりますが、意匠の場合、特許や商標のような公開制度がないため、登録に至らない限り、J-PlatPatで公開されません。

また、商標の場合、出願後1か月前後で内容がJ-PlatPatで公開されるため、競合他社等の出願状況を確認できるのは、1か月遅れとなります。

一方、意匠の場合、出願から登録まで早くても半年前後かかるため、競合他社等の出願状況を確認できるのは、半年遅れとなります。

この遅れを理解した上で、J-PlatPatで情報収集する場合、例えば以下の日本意匠分類で検索するのが効率的と考えられます。

L2-5010:橋りょう など

L2-600:防波堤、ダム など

L3-100:ガスタンク、煙突、灯台 など

L3-130:駅舎、空港ターミナル など

L3-140:鉄塔、電柱 など

L3-2000:高層ビル など

L3-21:戸建住宅 など

L3-24:ロードサイド店舗 など

L3-7:内装の意匠

<参考:意匠登録出願の基礎(建築物・内装) 22頁 by 特許庁>

もしJ-PlatPatでの意匠の調べ方がわからない場合は、以下を参考にしてみてください。

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

まとめ

建築物・内装の意匠登録第1号はどのようなデザインなのか、また、各業界で意匠登録がどのように活用されるのか、興味深いです。

本件については、新たな情報を入手次第、本記事のアップデートや新たな記事の作成を検討しています。

 

文責:打越佑介

Ⓡ(Rマーク)とは?小学生にもわかる意味・メリット等

商品の名前やロゴの隅っこに小っちゃく付いている「Ⓡ(Rマーク)」、見たことありませんか?あれはなんだろ~?って思ったことがある人も多いのではないでしょうか。

そこで、Ⓡ(Rマーク)の意味・メリットの他、注意事項・付け方例を、小学生にもわかるよう簡単に解説します。

Ⓡ(Rマーク)の意味

Ⓡ(Rマーク)とは、「Registered(登録済み)」の頭文字「R」を意味し、審査を通過して登録された商標(=登録商標)にのみ付けることが許されています。

「登録商標」とは、登録番号が付いている商標です。そして、登録番号は、審査を通過して登録料を納付した後に付けられます。つまり、審査を通過していない商標や登録料を納付していない商標(=未登録商標)に、Ⓡ(Rマーク)を付けられません。

未登録商標にⓇ(Rマーク)を付けると、虚偽の表示の罪(商標法第74条,80条)として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑に課されますので、注意してください。

Ⓡ(Rマーク)のメリット

Ⓡ(Rマーク)は、小さいので決して目立ちませんが、見た目以上に大きなメリットを受けられる可能性を秘めています。

メリット①:登録商標であることをアピールできる

登録商標かどうかは、実は誰でも特許庁の公開データベース(J-PlatPat)で調べられますが、弁理士のようなプロ以外でわざわざそんなことをするとは考えにくいです。

そのため、登録済みであることを自ら発信しなければ、売れてる商品やサービスの名称ほど、真似されるリスクが高まります。真似すれば手っ取り早くビジネスに相乗りできるからです。

そこで、たとえ小さくてもⓇ(Rマーク)を付ければ、登録商標であることをアピールできるため、悪意があってもなくても第三者が安易に真似しにくくなるでしょう。

メリット②:ブランディング効果が高まる

商品やサービスを有名ブランドに築き上げるには時間がかかるため、商品名やサービス名を商標登録することは、ブランディングの大前提と考えられます。

さらに、商標登録しただけでは終わらず、Ⓡ(Rマーク)を付けて登録商標であることをアピールし続け、真似されないように対策することで、ブランディング効果が高まります。

一方、Ⓡ(Rマーク)を付けず、知らぬ間にいろんな人たちに使われてしまうと、登録商標から普通名称化してしまった「エスカレーター」のように取り返しのつかないことになるかもしれません。

階段式昇降機を表す「エスカレーター」は、当初は米国オーチス・エレベータ・カンパニーが製造販売する階段式昇降機を表示する商標として需要者に認識されていた。しかし、現在は階段式昇降機を表す一般的名称として認識され、他社が製造販売する階段式昇降機にも「エスカレーター」の名称が使用されている。階段式昇降機に「エスカレータ」の名称を付して販売しても、それがオーチス社の商品であると意識されることはない。

引用:商標の普通名称化-wikipedia

Ⓡ(Rマーク)の注意事項

Ⓡ(Rマーク)についてよくある質問や盲点を紹介します。

出願中の商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

商標登録の出願(申請)をしたのでⓇ(Rマーク)を付けてもいいですか?という質問をよく受けますが、出願中の商標は未登録商標のため、Ⓡ(Rマーク)を付けられません。

そこで、もしどうしても真似されたくない場合やブランディングを進めたい場合は、「TMマーク」を付けることをおすすめします。「TM」とは、「Trademark」の略称で、未登録であっても自分の商標であることをアピールできます。

ただし、「TMマーク」には法的効力がないです。つまり、出願中の商標を真似されても、「TMマーク」を付けているからといって止めさせられるわけではありませんので、注意してください。

登録後に変更した商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

デザインを変更したため、登録商標とは違う商標ですが、Ⓡ(Rマーク)を付けてもいいですか?という質問もよく受けますが、色以外を変更した商標はもはや登録商標とは言えない恐れがあるため、答えはNo(Ⓡを付けてはいけない)です。

繰り返しになりますが、Ⓡ(Rマーク)を付けられるのは、登録商標のみです。色を変更しただけなら登録商標と見なされますが(商標法第70条第1項)、形を変更したら、たとえ登録商標に似ていても、登録商標ではなくなります。

もし形を変更した商標にⓇ(Rマーク)を付けたい場合は、あらためて商標登録の出願(申請)しましょう。

登録外のビジネスに使用する商標にⓇ(Rマーク)を付けられない

登録商標は、商標(商品名・ロゴ・図形など)と、商標を使用するビジネス(指定商品・指定役務)とがセットです。つまり、商標が同じでも、商標を使用するビジネスが異なれば、商標にⓇ(Rマーク)を付けられません。

例えば、アプリケーション名として商標「ABC」を登録したにもかかわらず、食品名として商標「ABC」を使用したら、商標「ABC」にⓇ(Rマーク)を付けられません。

同じように、ソフトウェア開発の社名として商標「DEF」を登録したにもかかわらず、飲食店の店名として商標「DEF」を使用したら、商標「DEF」にⓇ(Rマーク)を付けられません。

Ⓡ(Rマーク)の付け方(位置や大きさ)

Ⓡ(Rマーク)の付け方にルールはありませんが、商標のデザインを崩してしまうは好ましくありませんので、一般的なⓇ(Rマーク)の位置や大きさを当所ロゴ(IPRoom)で紹介します。

商標の右上外側にⓇを付けるパターン

最も一般的であり、Ⓡ(Rマーク)が商標と近過ぎず遠過ぎない位置にあるため、バランスもよく見やすいです。

商標の右上やや内側にⓇを付けるパターン

Ⓡ(Rマーク)が「m」の最右端と同じ位置にある分、全体的にコンパクトな印象を与えやすいです。

商標の右下にⓇを付けるパターン

「IPRoom」の後半「oom」が小文字の分、全体的に下側が詰まっている印象を与えやすいかもしれません。

『「〇〇〇」は●●●の登録商標です。』とするパターン

場所の指定はありませんが、例えばウェブサイトのどこかに文章で登録商標の表示をします(下記画像は「よくある質問」)。

まとめ

Ⓡ(Rマーク)は必須ではありませんが、その意味やメリットや注意事項を知らないと、損したりトラブルに巻き込まれたりするおそれもありますので、気を付けてください。

Ⓡ(Rマーク)をどこにどれくらいの大きさで付けるかは、商標とのバランスで決定すべきで、Ⓡ(Rマーク)を付けない場合、ウェブサイトに文章で登録商標の表示をすることをおすすめします。

文責:打越佑介

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

特許の経過情報とは、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間や特許の登録がなされた後、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などに関し、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)で誰でも見ることができる情報です。

そこで、特許の経過情報をどのように見たり使ったりするかを、小学生にもわかるように簡単に解説します。

検索結果画面の『経過情報』

まず、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)にて、公開特許公報や特許公報を検索したとき、検索結果がリスト表示されます。J-PlatPatの簡単な使い方は以下を参照してください。

☛ 特許を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

このとき、検索結果の右端の「各種機能」の列にある『経過情報』というボタンをクリックしてください(下図の赤枠)。

『経過記録』の使い方

『経過情報』をクリックすると、『経過情報照会』という画面に切り替わります。

このうち、『経過記録』『出願情報』『登録情報』を見ることができますが、よく使うのは『経過記録』です(下図の赤枠内)。

そして、『経過記録』には、『審査記録』と『登録記録』が含まれています。

『審査記録』

『審査記録』には、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間に、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などが列挙されています。

さらに、列挙されている以下の書類をクリックすると、中身を見ることができます。

①特許願(明細書、請求の範囲、要約書、図面)・・・特許の申請書類です。

②出願審査請求書・・・審査を請求しないと出願そのものがなかったものとなります。

③拒絶理由通知書・・・新規性違反や進歩性違反など特許にできない理由が記載された書類です。

④手続補正書・・・③を解消するために特許の申請書類を書き換えた書類です。

⑤意見書・・・④により③を解消できたことを審査官に主張する書類です。

⑥特許査定・・・審査を通過して特許が認められると特許庁から届く書類です。

特に、競合他社の特許を調べるときに、③拒絶理由通知書、④手続補正書、⑤意見書を見れば、特許が認められた要因や最終的な特許請求の範囲を確認できます。

『登録記録』

『登録記録』には、特許が認められた後、特許を登録するための特許料や特許を維持するための維持費(年金)の支払い状況が列挙されています。

ここを見たときに、もし競合他社の特許の維持費(年金)の支払いが直近の期限内に行われていない場合、その特許は消滅済みの可能性が高いため、本当に消滅しているかを慌てずに調べましょう。

まとめ

特許の経過情報は、特許が登録されるまでの流れ・特許が登録された要因・特許の維持費(年金)の支払い状況などを、誰でもインターネットで確認することができる、とてもありがたい情報です。

なお、経過情報は、特許のみならず、実用新案・意匠・商標でも見ることができます。

文責:打越佑介

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

「競合他社がどんな特許を取っているか調べていたら、当社が開発中の製品について特許を取られていいました。どうすればいいですか?」という相談をよく受けます。

このとき、お客様が入手した書類は、『公開特許公報』や『特許公報』なんですが、お客様はそもそもこれらが違う種類の書類であることをご存じないことがほとんどです。

そこで、競合他社の『公開特許公報』や『特許公報』が見つかっても、慌てなくていいように、これらの違いと見分け方を、小学生でもわかるように解説します。

公開特許公報は特許ではない

まず、『公開特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『公開特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『公開特許公報』とは、簡単に言いますと、特許出願された書類を特許庁が公開したものに過ぎません。

なぜなら、特許の出願日(申請日)から1年半後に特許出願された書類を公開するルール(特許法第64条)があるためです。

つまり、『公開特許公報』は特許ではないので、慌てる必要はありません。

特許公報だけではわからない

つぎに、『特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『特許公報』とは、簡単に言いますと、出願(申請)された特許の書類に対して特許庁が審査して特許と認めたものです。

つまり、『特許公報』は特許ですので、注意はすべきですが、まだ慌てる必要はありません。

特許が生存中か?消滅済みか?

『特許公報』でも、生存中か、それとも消滅済みかによって、判断は大きく異なります。

特許が生存中か消滅済みかは、特許の経過情報から確認できます。特許の経過情報の見方や使い方は以下を参照してください。

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

一般的に、特許が「生存中」とは、年金(維持費)の支払いを続けていることにより、特許が存在している状態です。

一方、特許が「消滅済み」とは、年金(維持費)の支払いを止めてしまったり支払う必要がなくなってしまったことにより、特許が存在していない状態です。

つまり、『特許公報』だとしても、消滅済みであればもはや特許ではないため、慌てる必要はありません。

まとめ

競合他社がどんな特許を取っているか調べている最中、以下のステップ1・2を検討し、最終的に特許が生存中の『特許公報』が見つかった場合、要注意です。

ステップ1:『公開特許公報』か『特許公報』か?

ステップ2:『特許公報』における特許が生存中か?消滅済みか?

<あわせて読むと効果的なおすすめ記事>

特許公報のみ検索するには?J-PlatPatの使い方のコツ

文責:打越佑介

新規性とは?小学生にもわかる意味・注意事項・図解

特許を取るためには、発明(アイディア、商品、ウェブシステム等)に「新規性」が必要です。

「新規性」を簡単に言いますと、「出願手続(申請)前に発明が誰にも知られていない状態」で、「誰にも知られていない状態」とは、「開示していない状態」です。

また、「開示」とは、例えば、「(発明を)販売したり、インターネットで紹介したり、展示会に出展したり、セミナーで詳細を教えたりする行為」を意味します。

そこで、具体的に「新規性」の意味を図解します。

出願手続前に開示したら新規性がなくなる

①と②は、新規性がある場合と新規性がない場合との対比です。①と②の違いは、出願手続と開示の順番です。

①の場合、出願手続の後に発明を開示しており、新規性があるため、他の条件を満たせば特許を取れます。

②の場合、出願手続の前に発明を開示しており、新規性がないため、知られてしまった部分について基本的に特許を取れません。

そのため、開示は、出願手続前にしない(出願手続後にする)ことをおすすめします。

出願手続前に開示したら絶対に特許取れない?

うっかり出願手続前に開示してしまったり、どうしても出願手続前に開示しなければならなかったりすることもあるでしょう。

そんなときは、「新規性喪失の例外適用手続」を活用できます。

この手続は、本当は新規性がないけど、新規性がないことをなかったことにしてくれる、ありがたい制度ですが、2つの条件をクリアする必要があります。

一つ目の条件は、開示してから1年以内に出願手続すること、二つ目の条件は、出願手続した日から30日以内に手続すること、です。

「新規性喪失の例外適用手続」により、他の条件を満たせば特許を取れますが、手続自体が煩雑なので、基本的にはおすすめしていません。

まとめ

シンプルに、出願手続前に開示しない、開示するのは出願手続後、ということを覚えておいていただけると嬉しいです。

実際、このことを知らなかったため、残念ながら特許を取れなくなってしまった例を、私はたくさん知っているからです。

早く開示してビジネスを加速させたいお気持ちはよくわかりますが、そこをグッとこらえて、ぜひ弁理士にご相談ください。

 

文責:打越佑介

特許請求の範囲が審査で狭まる理由【図解】

 

特許をとれば、全てのライバル会社の模倣を止められる、というわけではありません。特許の範囲によって、ライバル会社の模倣を止められるかどうかが決まります。

では、特許の範囲(=特許請求の範囲)はどうやって決まるのか?を図解します。

 

特許の範囲は先行技術との違いを明確にするため審査次第で狭まる

 

 

まず、特許を出願する前は、マーケットに対して広くなるようにするのが一般的です。具体的には、特許請求の範囲を構成する要件を少なめにします。これにより、ライバル会社の模倣を止めやすくなるためです。

図上の「①出願時の特許請求の範囲」とは、従来からマーケットに存在していて出願前に見つかった先行技術(=特許をとりたい発明に近しい技術)と違う(対比して新規性や進歩性がある)ことを明確にするために、これらの先行技術を含まないようにしたものです。

一方、特許を認めるか否かを判断する審査官は、①出願時の特許請求の範囲に含まれる先行技術を見つけてくるのが一般的です。

言い換えれば、審査官が見つけた先行技術により、①出願時の特許請求の範囲では広すぎる(=新規性や進歩性がない)ため、特許が認められないことを意味します。

そのため、「②補正後の特許請求の範囲」とは、従来からマーケットに存在していて審査官が見つけた先行技術とは違う(対比して新規性や進歩性がある)ことを明確にするために、これらの先行技術を含まないようにしたものです。

つまり、特許の範囲は、審査次第で狭くなるように補正することで、最終的な範囲が決まります。最終的な特許の範囲に含まれる競合品は、ライバル会社の模倣(=侵害品)として取り締まることができます。

 

まとめ

特許の範囲は、出願時にはなるべく広くして、審査次第で狭めるのが理想的です。審査次第で狭める程度も、少なければ少ないほど、出願時の範囲と近いため、ライバル会社の模倣を止めやすくなります。

 

文責:打越

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

どんな意匠(デザイン)が登録されているか調べるときには、特許庁の公開データベースであるJ-PlatPatをよく使います。

そこで、各検索ページを私がどんな感じで使っているか簡単に紹介します。なお、下記検索ページ名(見出し)は、工業所有権情報・研修館サイトにリンクしています。

意匠検索

意匠を調べる場合、まずは「意匠検索」画面から検索しはじめることが多いです。

「検索キーワード」で調査対象を絞る

「検索キーワード」の検索項目でよく使うのは、以下の項目です。これらを組み合わせて、見つけたい意匠を絞っていきます。

・意匠に係る物品/物品名/原語物品名

・意匠に係る物品の説明

・意匠の説明

・日本意匠分類/Dターム

・出願人/権利者

「意匠に係る物品/物品名/原語物品名」を使う場合、特許庁が公開している「意匠法施行規則別表第一」を参考にしています。

「意匠に係る物品の説明」を使う場合、意匠の特徴を想定して入力し、類似意匠の有無を検索します。ただし、全ての意匠登録公報に「意匠に係る物品の説明」が記載されているわけではなく、むしろ記載されていないほうが多いです。

「検索オプション」でさらに調査対象を絞る

画面を下にスクロールすると、「検索オプション」という枠があります。枠の右上の「開く+」を押すと、検索オプションが表示されます。

「検索オプション」でよく使うのは、以下の項目です。

・意匠の種別のチェックボックス:部分意匠 or 画像を含む意匠 or 関連意匠/類似意匠

・日付指定:公報発行日/公知日/発行日/受入日or 出願日(国際登録日) or 登録日

例えば、部分意匠のみ検索したい場合は、意匠の種別のチェックボックスの「部分意匠」にチェックを入れます。

また、出願日を指定したい場合、左の空欄にのみ年月日(例:20200401)を入力すれば、その年月日以降の意匠出願を検索でき、左右の空欄に年月日(例:20200401、20200801)を入力すれば、その年月日の範囲で意匠出願を検索できます。

意匠分類照会

意匠検索」画面を使っていて、「検索キーワード」メニューで「日本意匠分類/Dターム」を選択する前に、見つけたい意匠に関連するキーワード(デザイン分野や特徴など)を思い付いている場合、「意匠分類照会」画面にて「キーワード検索」を選択して空欄(「例)乗用自動車」と書いてあるところ)にそのキーワードを入力して検索すると、日本意匠分類のコードが表示されます。

表示されたコードをクリックすると「分類照会」画面に切り替わります。その画面上でまたそのコードをクリックすると、画面上に表示された空欄内にそのコードが入力されます。

その後、「意匠検索にセット」ボタンをクリックすると、「意匠検索」画面が別ウィンドウで立ち上がり、「検索キーワード」の検索項目「日本意匠分類/Dターム」に選択したコードが自動的に入力されます。

なお、知りたいコードを見つけたら、そのコードをコピーして、手動で「意匠検索」画面の「日本意匠分類/Dターム」に貼り付けても問題ありません。

意匠番号照会

内容を知りたい意匠の出願番号や登録番号などわかっている場合、「番号種別」メニューでそれぞれ「出願番号」や「登録番号」選択し、各番号を入力します。

意匠番号照会」画面を使う場面としては、例えば、お客様から出願番号や登録番号を教えてもらい、これらの意匠の内容を調べるときです。

まとめ

こんな感じで各検索ページを使っています。

登録済みの意匠を調べる場合、代表図面がサムネイル表示されますので、検索時のヒット件数が多くて目視である程度類否を判断しています。

 

文責:打越佑介(アップデート:2020/8/12)