明治大学外部講師就任のお知らせ

2024年4月より、弁理士法人アイピールーム代表 弁理士の打越佑介は、明治大学にて知的財産に関する講義の外部講師を務めることになりました。

 

知的財産という専門分野において、これまでの経験と知識を皆様と共有できることに、大きな喜びと責任を感じています。

 

講義を通じて、皆様が知的財産の魅力と重要性を感じ、将来的にあらゆる分野で活躍するための基盤を築くことができればと考えております。

 

私自身も新たな発見と成長の機会を得ると共に、知的財産活動における新たな価値を見いだすことができると信じています。

 

敬具

 

2024年4月12日
弁理士法人アイピールーム
代表 弁理士 打越 佑介

創立3周年のご挨拶

日頃より、格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

 

おかげさまで、弁理士法人アイピールーム(旧:アイピールーム国際特許事務所)は、2022年(令和4年)6月1日で創立3周年を迎える運びとなりました。

 

3年目も新型コロナウィルスの影響を含めた市況の変化に対応しつつ、皆様方と共に成長できるよう、1日1日を必死に取り組みました。

 

そうした中で、3周年を迎えることができましたことは、一重に皆様方の温かいご指導ご支援の賜物と深く感謝し御礼申し上げます。

 

直近には法人化も実行し、新たな気持ちで4年目を迎えられたため、また皆様方のお役に立てるよう、誠心誠意努めてまいります。

 

今後とも弁理士法人アイピールームをどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

敬具

 

2022年6月1日
弁理士法人アイピールーム
代表 弁理士 打越 佑介

創立2周年のご挨拶

日頃より、当事務所に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

 

おかげさまで、アイピールーム国際特許事務所は、2021年(令和3年)6月1日で創立2周年を迎える運びとなりました。

 

2年目も新型コロナウィルスの影響により先行き不透明な状態が続きましたが、1年目と同様、1日1日を必死に取り組みました。

 

そうした中で、2周年を迎えることができましたことは、一重に皆様方の温かいご指導ご支援の賜物と深く感謝し御礼申し上げます。

 

直近にはオフィスも移転し、新たな気持ちで3年目を迎えられたため、また皆様方のお役に立てるよう、誠心誠意努めてまいります。

 

今後ともアイピールーム国際特許事務所をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

敬具

 

令和3年6月1日
アイピールーム国際特許事務所
代表 弁理士 打越 佑介

コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績

当所では2020年の新型コロナウィルスの感染予防前からリモートワークを取り入れていたため、ウェブ会議システムでの打ち合わせや相談対応もスムーズに行えています。

ウェブ会議システムの種類もいろいろありますが、当所ではMicrosoft Teams・Google Meet・Zoom・Whereby・Skypeといった普及率の高いシステムを活用し、お客様側の都合にも柔軟に対応しています。

そこで、コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績を踏まえて、お客様にとって弁理士とウェブ会議で打ち合わせする3つのメリットをご紹介します。

お悩みの早期解決

ウェブ会議システムの最大のメリットはセッティングの速さと考えています。つまり、双方で会議開催の日時を調整しやすいことから、お悩みの早期解決が実現しています。

当所の実績では、最短で問い合わせ直後にウェブ会議設定及び開催です。電話やメールでは伝えにくい内容も、ウェブ会議なら対面の会議と同じくらい伝えやすいと感じています。

なお、ご相談の時間は平均的に30分~1時間です。主なご相談の内容は、特許・意匠・商標の出願に関することや調査に関することです。

関係者が参加しやすい

特許・意匠・商標の打ち合わせは、部署や階級を越えて複数人が関わる場合があります。内容が重要なほど、その人数が多くなる傾向にあります。

ウェブ会議システムの場合、関係者の方々が別の社屋にいても、オンラインでリモート参加できますので、その分社内調整しやすいようです。

また、ウェブ会議は対面の会議ほど拘束力が低い分、キーマンとは言えないまでも出席してほしい人にも声をかけやすいのではないでしょうか。

画面共有で密な擦り合わせ

相談に備えて事前に全ての資料を準備できるに越したことはありませんが、二足三足のわらじを履いている方が多く、そこまで時間に余裕を持てないのが実情のようです。

そのため、少なくとも端末に電子データで関係資料を準備しておいたり、メモ帳に重要なサイトのURLをコピペしておいたりすれば、相談中に適宜それらを画面で共有できます。

当所の実績では、相談や打ち合わせの内容を箇条書きレベルで簡単に事前共有し、それに基づいて会議を行うことでお客様側の目的を達成できていると感じています。

まとめ

特許・意匠・商標の活動は、競合他社に一歩遅れると取り返しできないリスクがあるものの、簡単ではなく進みにくい面もあるため、早めの着手をおすすめしています。

そういった場合も、ウェブ会議システムを活用してお気軽にご相談いただくことで、事業活動全体が進みやすくなると考えています。

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文責:打越佑介

特許公報のみ検索するには?J-PlatPatの使い方のコツ

特許をJ-PlatPatで調べていると、『公開特許公報』や『特許公報』とかいろいろな書類が出てくるので、どれがどれだかわからなくなることがあると思います。

『公開特許公報』と『特許公報』の違いについては、以下の記事にて紹介しています。

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

例えば「競合他社に取られた特許」を調べるには、『公開特許公報』と『特許公報』、どちらが適しているでしょうか?

正解は『特許公報』です。『公開特許公報』のみでは「取られた」かどうかわかりません。「取られた」とは「登録された」という意味です。

このような場面では、J-PlatPatで『特許公報』のみヒットする設定にして検索することをおすすめします。

そこで、J-PlatPatの「特許・実用新案検索」の使い方として、特許公報のみ検索する方法を簡単に紹介します。

ステップ①:文献の種類を絞る

J-PlatPatの「特許・実用新案検索」を開くと、上の画面が見えていると思います。ここで、注目は、「☑国内文献(all)」(左の赤矢印)です。

「all」に初期設定されているため、このままでは『登録実用新案公報』も混在して検索されてしまいます。

『特許』と『実用新案』の違いについては、以下の記事にて紹介しています。

特許・実用新案・意匠の違いは?小学生にもわかる早見表

そのため、「詳細設定 +」(右の赤矢印)をクリックしてプルダウンウィンドウを開きます。

プルダウンウィンドウを開くと、上のような画面が見えると思います。開いた直後は、国内文献(特許、特許発明明細書、実用新案、登録実用新案明細書)の全てが☑されています。

ここで、特許以外の文献の☑を外します(赤矢印)。こうすることで、特許に関する書類(『公開特許公報』又は『特許公報』)のみヒットするようになりました。

ステップ②:「登録日ありで絞り込む」に☑

ご察しのとおり、ステップ①のみでは、『公開特許公報』と『特許公報』とが混在してヒットしてしまいます。

そこで、J-PlatPatの「特許・実用新案検索」画面を下にスクロールして、「検索オプション」のプルダウンウィンドウを開きます(上の赤矢印)。

そして、下にある「登録案件検索」のうち「登録日ありで絞り込む」に☑します。「登録日」は「登録済みの特許」にしか付与されません。

したがって、これで『特許公報』のみヒットする設定が完了しました。

検索結果画面(例)

では試しにステップ①→②を設定し、かつ「発明・考案の名称/タイトル」に「ゴルフ」と入力し、「検索オプション」内の「公知日/発行日」に「20200101」~「20201231」と入力して検索してみます。

検索の目的は、2020年に成立したゴルフに関連する特許を調べる、というものに仮設定しています。

そうしますと、「国内文献(43)」(上の赤矢印)と表示され、一覧表には『特許公報』のみが検索されました(下の赤矢印)。

「文献番号」の列には、「特許●●●●●●●」というもののみ表示されています。もしこれでステップ②をしなければ、『公開特許公報』を意味する「特開●●●●-●●●●●●」というものも表示されしまいます。

まとめ

「競合他社に取られた特許」を調べるような場面では、『特許公報』のみにヒットする設定にしてJ-PlatPatを使うのが効率的です。その方法とは以下の2つのステップです。

ステップ①:文献の種類を絞る(特許のみ☑)
ステップ②:「登録日ありで絞り込む」に☑(検索オプションを開く)

特許調査の目的に応じて、これらの設定を適宜行うことをおすすめします。

文責:打越佑介

特許・実用新案・意匠の違いは?小学生にもわかる早見表

弁理士の仕事をして10年以上が経ち、全国津々浦々沢山の方からお問い合わせをいただいてきましたが、アイディアやデザインを知的財産として保護することの認知度はまだまだ低いと感じています。

特に、特許・実用新案・意匠・商標の違い、言い換えると、知的財産の保護の仕方にもいろいろある、ということがちゃんと知られていないため、そのときのベストな選択がされていないおそれもあります。

近年、3Dプリンターの普及・オープンソースの思想・部品(パーツ)のネット販売等によって物づくりをしやすくなり、かつIoT(Internet of Things)によりその物の未知なる可能性が格段に高まったと考えています。

そこで、物(プロダクト)のアイディアやデザインを知的財産として保護する特許・実用新案・意匠の違いについて、小学生にもわかるように解説します。

特許・実用新案・意匠の違い早見表

細かい違いはもっとたくさんありますが、下記の表は代表的な比較項目①~⑥とそれぞれの内訳を一覧にしたものです。

比較項目 特許 実用新案 意匠
①審査の有無 あり(審査請求必要) なし(ただし下記⑤に注意) あり(審査請求不要)
②期間(出願~登録) 4年前後(早期審査を活用すれば6か月前後も可能) 3ヶ月前後 6ヶ月前後
③費用(出願~登録) 60~80万円 25~30万円 20~25万円
④存続期間 出願日から20年 出願日から10年 出願日から25年
⑤模倣品への対抗 即日可 即日不可(技術評価必要) 即日可
⑥保護対象 物、製造方法、●●方法(●●=使用、施工、取付など)

補足説明・迷ったときのヒント

①審査の有無

特許の場合、審査があり、かつ審査を開始する要求(=出願審査請求)をしなければならない分、実用新案や意匠よりも、出願から登録までの期間が長く、さらに費用が高くなります。

一方、実用新案の場合、審査がない分、特許や意匠よりも、出願から登録までの期間が短くなります。意匠の場合、審査があるものの、特許と違い出願審査請求が不要です。

すなわち、特許及び意匠は、審査を通過しなければ登録できません。しかし、意匠の審査通過の難易度は、新規性をクリアできれば、特許の審査通過の難易度より比較的低めです。

審査の有無で迷ったときのヒント

競合品にはない技術的な特徴が(好ましくは複数)ある場合は特許、技術的な特徴がほとんどない又は競合品との違いがわずかな場合は実用新案、特許も実用新案も厳しいけど少なくとも見た目(デザイン)を保護したい場合は意匠、がおすすめです。

②期間{出願(入口)~登録(出口)}

特許の場合、出願審査請求を出願日から3年以内にしなければなりません。言い換えると、出願日から3年以内であればいつでもOKで、出願日と同日(出願手続と同時)でも、出願日から3年経過ギリギリでもよく、私的な経験上、3年経過ギリギリにする方が多いと感じています。

出願審査請求のタイミングは、特許を成立させたいタイミング次第です。例えば、出願審査請求を出願日と同日に行えば、トータル1~2年で特許を成立させやすく、逆に、出願審査請求を出願日から3年経過ギリギリに行えば、トータル4年前後で特許を成立させやすいです。

出願審査請求をしてから審査結果(拒絶理由通知 or 特許査定)を受け取るまで1年前後ですが、もっと早く審査結果を受け取りたい場合、早期審査制度を活用すれば、2か月前後に短縮できるため、トータル6か月前後で特許を成立させやすいです。

▷ 参考:特許庁のホームページ内 「特許出願の早期審査・早期審理について

登録までの期間で迷ったときのヒント

“出願済みの状態”をなるべく長くして競合他社をけん制したい場合は特許、がおすすめです。“出願済みの状態”とは、特許が成立するかしないかわからない分、競合他社を動きにくくする(事業活動を鈍らせる)効果を期待できます。

③費用{出願(入口)~登録(出口)}

一覧に示す費用は、平均的な相場であって、印紙代+弁理士手数料+消費税が含まれます。弁理士手数料については、弁理士毎(特許事務所毎)に異なりますので、相場を知りたい場合はインターネットで検索してみてください。

特許を成立させるには、出願手続→出願審査請求(中間手続①)→審査結果対応(中間手続②)→登録手続といった4ステップが一般的です。一方、実用新案を成立させるには、出願手続のみです。

また、意匠を成立させるには、出願手続→登録手続といった2ステップが一般的ですが、審査結果対応(中間手続)が生じることも時折あります。

特許の出願手続も実用新案の出願手続も、必要な書類や書類の提出方法はほとんど同じなので、費用はほぼ同額です。一方、意匠の出願手続は、特許や実用新案の出願手続ほど、必要な書類の分量が少ない分、費用は安めです。

④存続期間

いずれも出願日から起算される点に注意してください(登録日からではありません)。例えば、特許の出願日が2021年1月1日、登録日が2025年1月1日の場合、特許の存続期間は2021年1月1日を起算日として最大で2041年1月1日となります。

また、存続させるためには、年毎に登録料を支払わなければなりません。毎年支払っても、数年分をまとめて支払ってもOKです。また、存続期間が長くなるほど、年毎の登録料が高くなる点にも注意してください。

▷ 参考:特許庁ホームページ内「産業財産権関係料金一覧」の「4.特許料・登録料」

存続期間で迷ったときのヒント

商品のライフサイクルが長い場合は特許か意匠、短い場合は実用新案、がおすすめです。

⑤模倣品への対抗

模倣品が、成立した特許や実用新案や意匠の内容に似ており(各権利の範囲内であり)、各権利を侵害しているおそれがある場合、模倣品の販売元や製造元に対してその旨を通知(警告)したり、模倣品の販売や製造の差し止めを請求したり、模倣品により生じた損害を賠償金として請求したりすること(総じて、権利行使)ができます。

特許や意匠は、審査を通過して登録されているため、即日警告も権利行使もできます。一方、実用新案は、無審査で登録されているため、権利行使する前に特許庁に実用新案の技術評価(特許や意匠で行われた審査のようなこと)をしてもらい、かつその技術が実用新案として有効という評価を得られなければ、警告のみならず、権利行使もできません。これが、実用新案の最大のデメリットです。

▷ 参考:知的財産相談・支援ポータルサイト内「実用新案技術評価請求書について教えてください。

一方、意匠は、物の見た目(デザイン)を登録する分、そもそものアイディア(技術的な構造など)が同じでも見た目が異なる模倣品に対して、警告や権利行使しにくいです。言い換えると、意匠は、完全な模倣品(デッドコピー品)への対抗策であって、見た目が異なる巧妙な模倣品に対抗しにくい点が最大のデメリットです。

デザイン性のある特徴的な部分のみを部分意匠として保護することもできますが、保護する物によっては、その部分の位置・大きさ・範囲(その他の部分との相関)によって保護できる範囲が左右されるため、万能とは言い切れず、過信は禁物です。

▷ 参考:特許庁ホームページ内「「部分意匠」に関するQ&A

模倣品への対抗で迷ったときのヒント

基本的に警告も権利行使もしない場合(つまり、模倣品を黙認する場合)は実用新案、デッドコピー品への対策に注力する場合は意匠、がおすすめです。

⑥保護対象

特許・実用新案・意匠で保護できる対象はそれぞれ異なります。保護対象の種類は、特許が一番多く、特許の保護対象の一部を実用新案や意匠で保護できるイメージです。

種別 保護対象 備考
特許 機械、半導体、ソフトウェア、システム、素材、食品、医薬品、日用品など
製造方法 半導体の製造方法、素材の製造方法、食品の製造方法、医薬品の製造方法など
●●方法 測定方法、施工方法、制御方法、管理方法、監視方法など
実用新案 構造や形状に関する物に限る
意匠 見た目(デザイン)重視、物品上の画面デザインも含む

 

特許で物の見た目(デザイン)を保護することもできます。むしろ、デザインに技術的な特徴(機能性など)があればあるほど、特許での保護が適しています。

保護対象で迷ったときのヒント

製造方法や●●方法の場合は特許一択、物の場合でも審査に耐えられる程度の技術的な特徴が見込めれば特許、見込めなければ実用新案、見込めずかつデッドコピー品への対策に注力するなら意匠、がおすすめです。

まとめ

オリジナルのアイディアやデザインからなる商品を知的財産として保護するには、その商品のコンセプト・技術的特徴・見た目等に加え、事業のビジョンや戦略を前提に、①審査の有無、②出願から登録までの期間、③出願から登録までの費用、④保護できる存続期間、⑤模倣品への対抗策や制約、⑥保護できる対象、を総合的に鑑みて、特許・実用新案・意匠のどれが適しているか検討することをおすすめします。

 

文責:打越佑介

店舗やオフィスの内装デザインの意匠登録(2020年12月)

経産省は11月2日に建築物・内装の意匠が初めて意匠登録されたニュースをリリースしました。

イノベーションの促進とブランド構築の一環とする意匠法の抜本的な改正により、建築物・内装の意匠登録が2020年4月1日から認められるようになったことから、どのような建築物・内装が意匠登録されるのか、とても注目されていました。

また、内装の意匠登録の場合、オフィス用の家具や什器、OA機器等を扱う企業が、自社製品を活かして設計した空間デザインも保護できるようになったため、机・いす・棚・壁・床などの組み合せ及び配置による独創的な内装が期待されています。

そこで、2020年12月時点の内装の意匠登録に関する状況を、私の所感含めて共有します。

なお、下記の見出し「●●●の内装」は、J-PlatPatの意匠登録公報にリンクしていますので、「●●●の内装」をクリック後に下記画像に示す赤矢印部分をクリックすると、各内装の意匠登録の内容を閲覧できます。

衣料品店の内装

内装デザインはU社の店舗ですが、意匠権者はアパレル大手F社です。意匠登録公報内の【実施例参考イメージ図】を見ると、意匠登録の内容をイメージしやすいです。

衣料品店の全体像としては、箱状の店舗で、左右の壁には、衣類の陳列棚と、陳列棚の上に設置された電光掲示板とが設置され、奥の壁には、大型ディスプレイが設置されています。このうち、電光掲示板と大型ディスプレイとの配置について、意匠登録がなされています(【参考斜視図1】及び【参考斜視図2】で着色された部分)。

このように、内装全体のデザインのうち、一部分(電光掲示板と大型ディスプレイと配置)のみを登録しておくと、その他の部分(陳列棚)のデザインを変更しても意匠登録を有効に活用しやすくなります。

店舗の売場の内装①店舗の売場の内装②

意匠権者は、動画配信サービスが主力事業であるE社です。一見、内装の意匠登録とは縁がなさそうな会社ですが、意匠登録の内容を見ると、主力事業を多面的に防衛する狙いを感じます。

店舗の全体像としては、食品売り場といったスーパーやデパートの一角のようなイメージで、商品の陳列棚と、陳列棚に隣接するディスプレイとが配置されています。このうち、ディスプレイ(電光掲示板)の配置について、意匠登録がなされています。

上述したU社のように、ディスプレイの配置のみを登録しておけば、陳列棚のデザインを変更しても意匠登録を有効に活用しやすくなりますが、このような部分的な意匠登録(部分意匠)は、全体(陳列棚含む)に対する部分(ディスプレイ)の位置・大きさ・範囲に、意匠登録が左右される点も留意すべきです。

つまり、部分意匠として内装の意匠登録したとしても万能ではないということです。

店舗の売場の内装①と内装②とは、陳列棚のデザイン及び陳列棚に対するディスプレイの配置が、それぞれ異なります。陳列棚のバリエーションは多数あるため、全てのバリエーションに対して意匠登録するのは現実的ではないことから、代表的(メジャー)な陳列棚が選ばれたのではないでしょうか。

オフィス空間のショールームの内装

意匠権者は、家具・什器メーカー大手O社です。オフィスの休憩室や執務室の内装とは別に、あえてショールームの内装を意匠登録している点が、とても興味深いです。意匠登録の内容を見ると、独創的な印象です。

ショールームの全体像としては、平面図から推測すると、中央にある円形の商談スペースと、商談スペースの左下にある飲食物の提供スペース、のようです。飲食物の提供スペースについては、【意匠に係る物品の説明】の欄にも記載されています。

紫色に着色されたソファーやイスは意匠登録に含まれませんが、これらがショールーム全体に対して意匠登録を受けようとする部分(間仕切壁など)の位置・大きさ・範囲を明確にしていると考えられます。

職員室の内装①(基礎意匠)職員室の内装②(関連意匠)

意匠権者は、家具・什器メーカー大手O社です。一見して、独創性を感じにくいものの、商材の机・イス・棚を活かしたレイアウトのようです。なお、内装①と内装②とは類似しているため、基礎意匠・関連意匠の関係です。

私的に注目したいのは【意匠に係る物品】です。「職員室」という選択が巧妙と感じています。意匠に係る物品を「職員室」と具体的にすることで、公知意匠との類似を避ける対策にもなるためです。

意匠に係る物品が異なれば、公知意匠と類似している意匠を登録できるというわけではありませんが、比較的ありふれた意匠の場合、意匠に係る物品を具体的(限定的)にすることで登録できる可能性が高まることもあります。

まとめ

まだはじまったばかりの内装の意匠登録制度ですが、登録件数が増えれば増えるほど、内装デザインの実施が競合他社の内装の意匠権を侵害するおそれが高まるのも否めません。

12月11日時点で公報が発行されている内装の意匠登録は14件です。これからも内装の意匠登録について定期的にJ-PlatPatでウォッチして適宜所感など共有したいと思います。

ちなみに、内装の意匠登録を調べたい場合は、J-PlatPatの「意匠検索」から「日本意匠分類/Dターム」を選択して「L3-7」をコピペして検索してください。もしJ-PlatPatでの意匠の調べ方がわからない場合は以下も参考にしてみてください。

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

 

文責:打越佑介

建築物・内装の意匠登録に関する状況(2020年10月8日)

令和元年の意匠法改正により、令和2年4月1日から、新たに建築物・内装の意匠(デザイン)を保護できるようになりました。

審査がスムーズに行われれば、意匠出願から審査結果(登録査定)が届くまで6か月くらいなので、間もなく登録例が出てくると推測しています。

一方、少しでも早く建築物や内装の意匠登録状況を知りたい方もいると考え、以前に下記の記事を投稿しました。

建築物・内装の意匠登録状況をネットで情報収集する方法

7月1日時点と10月8日時点の対比

そして2020年10月8日に、特許庁は新たな意匠登録出願状況を公開しましたので、本記事にて再び共有します。

▶ 令和元年意匠法改正特設サイト by 特許庁ウェブサイト

上記リンク先のサイトのうち、7月1日時点で公開された意匠登録出願状況も10月8日時点に更新されているため、上記記事で記録した前回分の数値データと今回分の数値データの対比を以下に示します。

建築物の意匠登録出願件数

7月1日時点 :133件(3か月間の出願件数月平均44.3件)

10月1日時点:204件(前回比71件増、3か月間の出願件数月平均23.7件/月)

内装の意匠登録出願件数

7月1日時点 : 98件(3か月間の出願件数月平均32.6件)

10月1日時点:132件(前回比34件増、3か月間の出願件数月平均11.3件/月)

考察:コロナウィルスと出願件数の影響

4月1日以降3か月間と対比すると、7月1日以降3か月間の出願件数月平均が減っているのは、コロナウィルス感染予防対策に伴い、出願活動の見直しが図られたためと仮説します。

テレワークの推進に伴い、特に家屋や商業施設の内装のデザインは大きく変化する可能性がある分、関連する会社は今後どのような権利を取得して模倣対策すべきかを検討していたのかもしれません。

一方、ワクチンの普及によりコロナ禍は終息すると仮説すれば、コロナ対策向けのデザインは早かれ遅かれ廃れると見込める分、アフターコロナの兆しがより鮮明になったタイミングで、出願活動が再開されて出願件数が再び増加する可能性もあるのではないでしょうか。

まとめ

もうしばらくウィズコロナが続くと思われますが、この間にアフターコロナを見据えた知財活動を継続して行うことは、今後の事業活動を加速させる可能性を秘めています。

建築物・内装の意匠登録も、ニューノーマル時代にどのように活用されるのか興味深いので、また新たな情報を入手次第、本記事のアップデートや新たな記事の作成を検討します。

 

文責:打越佑介

弁理士短答不合格でも論文試験まで論文対策すべき理由

2020年の弁理士1次試験(短答試験)は、コロナウィルスの影響により、例年なら5月下旬のところ、9月20日(日)に行われました。受験生の皆さんにとっては大変な年になったのではないでしょうか。

私が最終合格した10年前と今とでは、試験の制度や問題のみならず、対策も変わっているかもしれませんが、少しでも経験談が役に立ったら嬉しく思います。

そこで、短答試験が不合格でも論文試験終了までは論文対策すべき理由を3つお伝えします。これは、私が短答試験に2回連続で不合格の後、3回目にして短答試験と論文試験とを一発で合格できた勝因の一つと考えています。

論文対策は短答対策にもなる

短答試験と論文試験とは違う、短答試験対策と論文試験対策を別物である、という考え方はおすすめできません。なぜなら、この考え方だと、時間を有効に活用し切れないからです。

もちろん、短答試験向けの勉強法、論文試験向けの勉強法、それぞれちゃんとあります。でも、少なくとも、特許の国内優先権や分割出願のような短答試験でも論文試験でも出やすい問題は、どちらも意識して取り組むほうが効率的です。

具体的には、論文対策しながら短答試験向けのレジュメや過去問を復習すると、趣旨や要件の理解が深まって知識が厚くなるので、その分論文の応用問題への対応も高まると期待できます。

論文試験不合格者が翌年のライバル

弁理士試験は相対評価の試験です。つまり、受験生のうち上位〇%に入れたら合格できるため、ライバルに差を付けられないように意識することは、最小限の労力で合格するために必要なことです。

この考えに基づくと、最もライバルに差を付けられやすいのは、短答試験から論文試験までの間です。なぜなら、短答不合格者の勉強のペースは緩みがちになり、一方、短答合格者の勉強のペースは加速しやすいからです。

論文対策講座を申し込んだり、直前答練を受けたりすることもおすすめです。来年の論文試験対策も今年の短答試験終了直後からはじまっており、ここをやり切れるかどうかが鍵とも言えます。

試験勉強のモチベーションの維持

過酷な短答試験を終え、自己採点でボーダーライン未満だと、心が折れそうになる気持ちもよくわかります。でも、ここで勉強のペースが緩むほど、翌年の合格が遠のくことも、忘れないでください。

勉強するなら、来年の短答試験対策より、たとえ受験できないとしても目先の論文試験対策のほうが心機一転して取り組めるため、モチベーションも維持しやすくなります。

休息も大切ですが、短答対策はうんざりだから気分転換に論文対策する、特許は飽きたから気分転換に商標の問題を解く、というような考え方で勉強のペースを保てると、合格がより近くなるはずです。

まとめ

短答試験が終わると、来年の弁理士試験までのカウントダウンがはじまります。そして、短答試験は通過点であり、論文試験も口述試験も突破しなければ最終合格できません。

そのため、短答試験が終わったら論文試験対策するのが自然な流れです。弁理士試験も水物で、合否の分かれ目は時の運なので、短答試験が不合格であっても、堂々と論文試験対策してください。

なお、短答試験の復習ですが、自信を持って正答できた問題以外の問題について、なぜ間違ったか、なぜヤマ勘で当たったかなどを、自己分析することをおすすめします。

文責:打越佑介

地域ブランド戦略と地域団体商標とのシナジー効果

全国地域ブランド総選挙」(経済産業省ウェブサイトにリンク)の開催について、2020年9月14日に経済産業省からリリースされました。2017年度は九州限定、2018年度は東海・北陸限定、2019年度は東北限定でしたが、2020年度はいよいよ全国のようです。

「地域ブランド」とは、簡単に言えば、その地域ならではの名産物や名所のように、その名称を聞くだけで産地や特徴をパッと思い浮かぶくらい人々に知られているもの、と考えられます。

そのため、地域ブランドの名称の多くは、”地名+商品や場所の普通名称”であり、これでは一般名称と勘違いされて誰でも気軽に使えてしまうえに、一般名称は基本的に商標登録できないため、2006年4月1日から地域団体商標制度が導入されて登録できるようになったわけです。

今ではたくさんの地域団体商標が登録され、経済効果を期待できるまで成長した地域ブランドもあるようですが、近年の日本の経済事情に加え、コロナウィルスの影響もあり、今後も地域ブランドのあり方は重要なテーマと言えそうです。

地域団体商標活用の効果

商標に限らず、特許など知的財産権は、単に取得するだけではあまり意味がなく、その権利を活用することで、費用対効果を得られます。地域団体商標を活用すると、以下の効果やメリットがあると言われています。

①商品のブランド力向上

地域ブランドの名称を地域団体商標登録するには、その名称が、ある程度の人々(難しくいうと、一定の地理的範囲の需要者)に知られていなければならず、かつそれを証明しなければなりません。

特許庁は、”地名+商品や場所の普通名称”の商標登録を簡単には認めず、その知名度を審査で問います。つまり、地域団体商標登録できれば、地域ブランドとしてある程度確立していると言えるわけです。

地域団体商標は、経済産業省の管轄である特許庁のお墨付なので、ブランディングにも役立ちます。国内全域や国外に販路を拡大するようになれば、その恩恵をさらに感じられるはずです。

②商品の生産者の意識向上

地域ブランドの名称を地域団体商標登録するには、その地名との関連性も必要です。

例えば、地域団体商標登録済みである「草津温泉Ⓡ」は、「群馬県吾妻郡草津町における温泉入浴施設を有する宿泊施設の提供」、「群馬県吾妻郡草津町における温泉入浴施設の提供」という地域限定のサービス名として認められています。

言い換えれば、その地域(「草津温泉Ⓡ」の場合は「群馬県吾妻郡草津町」)以外では地域ブランドの名称を使えなくなるため、実際にその名称を使えるのは、その地域内の限られた人たちのみとなります。

つまり、地域団体商標登録済みの名称を名乗って商売できるという事実が、その商売の事業主や従業員や職人といった商品(サービス含む)の生産者に自信を与え、品質の保持や改善にも積極的に取り組む意識の向上も期待できます。

③地域活性化への貢献

つまるところ、①商品のブランド力向上と、②商品の生産者の意識向上が実現すると、地域活性化につながると考えられます。逆算すると、地域活性化の実現には、地域団体商標が要因の一つになりそうです。

「貢献」には、観光客を増やしたり商品の売れ行きを伸したりといった”攻めの貢献”のみならず、地域ブランドに相乗りする業者など悪意のある第三者をブロックするといった”守りの貢献”も含まれるはずです。

地域ブランドが人気になればなるほど悪意のある第三者に狙われやすくなります。そのため、マーケティングやブランディングと地域団体商標の取得活動とを同時進行で行うのが理想的です。

地域団体商標によるシナジー事例

地域団体商標登録事例一覧(特許庁ウェブサイトにリンク)では、都道府県別にリストアップされています。各商標をクリックすると、地域ブランドの概要や地域団体商標の内容も見ることができます。

また、これら地域団体商標の活用事例(特許庁ウェブサイトにリンク)について、特許庁は動画・冊子・漫画でまとめています。地域ブランド戦略を予定している団体の方々のみならず、既に実行中の方々にも参考になる内容と感じました。

むしろ、内容が充実し過ぎてて、どれを参考にしたらいいか迷ってしまうくらいなので、私的にわかりやすく現実的と感じた3つの事例と、これらのポイントを整理してみました。

島根県「玉造温泉Ⓡ」

□地域ブランドをPRする役割分担(観光協会=企画・制作・事業実施・プロデュース、旅館組合=広報・プロモーション)を明確にしたため、各自が徹底して作業を行えた

□「玉造温泉Ⓡ」に加え、「美肌・姫神の湯Ⓡ」というコンセプト名を商標登録することで、”ブレない街づくりのコンセプト”が確立でき、将来の方向付けを行えた

□ 島根県「玉造温泉Ⓡ」の動画サイト=http://www.chugoku.meti.go.jp/ip/contents/81/

大分県「中津からあげⓇ」

□「商品ブランド認証基準」として、からあげの調味液の成分、鶏肉の原産地、店舗の所在地などを明確にした

□地域団体商標登録の審査通過条件(①「中津からあげ」という名称がある程度有名であること、②”からあげ=鶏肉”と認識されていること)を満たしていることを証明するために2000人以上のアンケートを回収した

□大分県「中津からあげⓇ」の動画サイト=https://www.youtube.com/watch?v=BxW6DHYrTGE&feature=youtu.be

宮崎県「みやざき地頭鶏Ⓡ」

□「商品ブランド認証基準」として、指定農場のみ生産許可、飼育の期間や密度などを明確にした

□販路開拓として、販売先を選定したり、試食会など首都圏開催のイベントに積極的に参加したりした

□宮崎県「みやざき地頭鶏Ⓡ」の動画サイト=https://www.youtube.com/watch?v=YLBDoKA2JY4&feature=youtu.be

まとめ

地域団体商標登録を取得するには、地域ブランドとしてある程度確立している必要があります。

つまり、地域団体商標登録を取得するために町おこしを行い、その結果として地域ブランドが成長すれば、まさに一石二鳥ではないでしょうか。

地域団体商標によるシナジー事例を見ると、地域団体商標活用の効果は、地域団体商標登録の取得前から得られているとも考えられます。

文責:打越佑介

J-PlatPatで特許検索数を初心者でも上手に絞るコツ

J-PlatPatで先行技術調査をする場合、「簡易検索」を使う初心者の方が多いようですが、キーワードの入力欄が一つしかありません。

「簡易検索」のメリットは、特許・実用新案、意匠、商標、どれでもボタンの切替で検索できる点ですが、デメリットは、検索の精度を高めにくい点です。

特許の場合、難解な公開特許公報や特許公報をある程度読まなければならない分、上手く検索しないとノイズ(関係ない公報)が多くなってしまいます。

そこで、初心者でもJ-PlatPatを使って特許検索数を上手に絞るコツをご紹介します。

アイディアを可視化する

J-PlatPatを使う前に、箇条書きでも文章でも説明図でもいいので、まずはアイディアを可視化しましょう。特に、アイディアを言葉に置き換えることは大切です。

新しいプロダクト(装置、日用品など)なら、部品・構造・組み立て方・効果など、ソフトウェア(アプリケーション、ウェブシステムなど)なら、機能・処理の流れ・効果などを、言語化します。

なぜなら、公開特許公報や特許公報は、プロダクトやソフトウェアなどのアイディアを言語化し、ストーリー調に作文したものだからです。公開特許公報と特許公報の違いは以下を参考にしてください。

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

ストーリー調とは、背景技術→従来技術の紹介→従来技術が抱える問題→上記問題に基づき解決すべき課題→上記課題を解決する手段(≒特許請求の範囲)→上記手段により得られる効果→アイディアの具体的な内容(=発明の実施形態)、といった流れのことです。

そのため、特許文献の検索数を上手に絞るには、探したい公開特許公報や特許公報のストーリーに使われそうな言葉に、アイディアを置き換えて言語化することが必要です。

例えば、「シャツ」といっても、Tシャツ、Yシャツ、ロングスリーブ・ノースリーブ・タンクトップ、襟有り・襟無し、プルオーバータイプ・ボタンタイプというように、いろいろあります。

つまり、「シャツ」を上位概念とすると、各種のシャツを下位概念として言語化することで、「シャツ」に関係する先行技術文献の漏れが減り、検索精度を高められます。

「特許・実用新案検索」で各検索項目を組み合わせる

J-PlatPatで先行技術調査する場合、「特許・実用新案検索」がおすすめです。無料で使えますし、検索項目を2つ以上選択できるため、「簡易検索」より調査精度が上がるはずです。

言い換えると、検索項目をうまく組み合わせれば、簡単に検索数を上手に絞れます。そこで、「特許・実用新案検索」を使った先行技術調査でよく使う検索項目とその理由をご紹介します。

1.請求の範囲

J-PlatPatで先行技術調査するということは、公開特許公報または特許公報を検索することになります。そして、これらの公報のうち、エッセンス(最も重要な部分)が詰まっているのが、「(特許)請求の範囲」です。

なぜなら、審査の結果、特許になる部分が「(特許)請求の範囲」なので、この部分にアイディアを上位概念や下位概念に言語化したキーワードが潜んでいる可能性が高いからです。

ちなみに、「要約/抄録」という検索項目は、文字数が「請求の範囲」より少ないため、活用頻度は低めです。また、「全文」や「明細書」という検索項目は、文字数が「請求の範囲」より多く、かつエッセンス以外の説明もされている分、ノイズ(関係性の低いキーワード)も含まれているため、活用頻度は低めです。

なお、複数のキーワードをAND条件にしたいときは、「請求の範囲」を二段以上選択し、OR条件にしたいときは、同じ検索欄にスペースを挟んで入力します。

2.発明・考案の名称/タイトル

「発明・考案の名称/タイトル」は、一般的に、アイディアのタイトルを上位概念化した言語にて表現します。ただ、上位概念過ぎて曖昧だと審査で不利になるおそれがあり、下位概念過ぎて具体的だと権利範囲が狭くなり過ぎる恐れがあるため、よく考えて決定すべき部分です。

そのため、「請求の範囲」で検索数が多過ぎたり少な過ぎたりして上手く絞れなかった場合、例えば、「発明・考案の名称/タイトル」と「請求の範囲」とを一つずつ選択し、前者には上位概念のキーワード、後者には下位概念のキーワードを入れて検索すると、上手く検索数を絞れることがあります。

3.出願人/権利者/著者所属

競合他社や似た特許を出してそうな会社を知っている場合、「出願人/権利者/著者所属」を選択し、それらの社名でキーワード検索することもあります。たくさん特許を出している競合他社ほど、この検索項目は有効です。

例えば、「発明・考案の名称/タイトル」と「出願人/権利者/著者所属」とを一つずつ選択し、ある発明についてシェア上位の会社がそれぞれ何件特許を出しているか調べることもできます。

まとめ

J-PlatPatで特許検索数を初心者でも上手に絞るコツをまとめると、以下の2つのステップになります。

ステップ1:アイディアを可視化する

ステップ2:「特許・実用新案検索」で各検索項目(「請求の範囲」、「発明・考案の名称/タイトル」、「出願人/権利者/著者所属」など)を組み合わせる

はじめからステップ1を完璧に行うのはむずかしいので、ある程度可視化できたらステップ2に進み、ある程度特許検索して先行技術を調べられたらまたステップ1に戻ると、アイデアの言語化もはかどり、その分検索精度も上がりますので、試してみてください。

文責:打越佑介

ブランド戦略にも初心者にも役立つ商標登録の5W1H

ブランド戦略とは、一言で表すと、他社とは違う価値を感じてくれるファン(顧客、ユーザー等)をつくるための活動(=ブランディング)の戦略、と考えています。

そして、ブランディングで大切なことは、他社との違い(=自社の価値)をファンが認識しやすくすることであり、ファンにとってその違い(価値)目印(商標)守る(登録する)ことは、ブランド戦略の具体策です。

そのため、商標登録も、ビジネスフレームワークの5W1H(What,Why,Who,When,Where,How)の質問に回答できれば、ブランド戦略としても有効です。

5W1Hの順番は自由ですが、以下で紹介する流れは、商標登録にとっての優先順位です。ブランド戦略のみならず商標登録の初心者にも使えるフレームワークです。

What(質問:商標は何ですか?)

回答:商標は●●●を示す○○○です

回答の●●●にはあなたのビジネス、○○○には商標(ネーミング・マーク)の形態を入れます。以下は回答例です。

例1:商標は小売業を示す文字(ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、アルファベット)です。

例2:商標はソフトウェア開発業・アプリケーション名を示すロゴタイプ(上記文字をオリジナルの書体で表示)です。

例3:商標は飲食業を示す図形(エンブレム、キャラクター)です。

例4:商標は複数の業態を示す組み合わせ(図形+文字、ロゴタイプ+図形、図形+図形)です。

How(質問:商標をどのように使いますか?)

回答:商標を●●●として○○○します

回答の●●●にはブランドの種類、○○○には実際に商標を使う状態を入れます。以下は回答例です。

例1:商標をコーポレートブランド(社名・エンブレム)としてホームページのタイトルやロゴにしたり、看板にしたりします。

例2:商標をファミリーブランド(複数の商品のカテゴリをまたぐ包括的なネーミング・マーク)としてパッケージに印刷します。

例3:商標を個別ブランド(個々の商品のネーミング・マーク)としてサービス提供時のツールに付けます。

Why(質問:商標登録をなぜしますか?)

回答:商標登録を●●●のためにします

回答の●●●には商標登録の目的や理由を入れます。以下は回答例です。

例1:商標登録を競合他社などに先に商標登録されて当社が使えなくなったら困るのでします。

例2:商標登録を一般名称かどうかわからないため商標出願して審査してもらいたいためにします。

例3:商標登録を売買目的、ライセンス(使用権の許諾)目的のためにします。

Who(質問:商標登録は誰のものですか?)

回答:商標登録は●●●のものです。

回答の●●●には商標登録を出願する人や商標権を管理する人を入れます。以下は回答例です。

例1:商標登録は法人(株式会社、合同会社、一般社団法人など)のものです。

例2:商標登録は個人(中小企業の社長・フリーランスなど)のものです。

例3:商標登録は共同名義(法人+法人、個人+個人、個人+法人)です。

When(質問:商標をいつから使いますか?)

回答:商標を●●●から使います(予定です、使っています)。

回答の●●●には具体的な時期や予定を入れます。以下は回答例です。

例1:商標をプレスリリース後から使います。

例2:商標を将来的に使う予定です。

例3:商標を既に1年前から使っています。

Where(質問:商標をどこで使いますか?)

回答:商標を●●●で使います。

回答の●●●には地域名や国名を入れます。以下は回答例です。

例1:商標を日本国内のみで使います。

例2:商標を日本及びアジア諸国で使います。

例3:商標を日本及び欧米で使います。

まとめ

商標登録は知的財産として活用しやすいため、安易に考えられがちですが、トラブルにも発展しやすいため、適当になんとなく出願したり登録前に商標を使ったりするのは危険です。

5W1Hはマーケティング等のビジネスフレームワークとしても用いられている分、使いやすくわかりやすいため、社内の重役や社外の弁理士にもその内容を伝えやすいです。

文責:打越佑介