コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績

当所では2020年の新型コロナウィルスの感染予防前からリモートワークを取り入れていたため、ウェブ会議システムでの打ち合わせや相談対応もスムーズに行えています。

ウェブ会議システムの種類もいろいろありますが、当所ではMicrosoft Teams・Google Meet・Zoom・Whereby・Skypeといった普及率の高いシステムを活用し、お客様側の都合にも柔軟に対応しています。

そこで、コロナ禍でのウェブ会議システムの活用実績を踏まえて、お客様にとって弁理士とウェブ会議で打ち合わせする3つのメリットをご紹介します。

お悩みの早期解決

ウェブ会議システムの最大のメリットはセッティングの速さと考えています。つまり、双方で会議開催の日時を調整しやすいことから、お悩みの早期解決が実現しています。

当所の実績では、最短で問い合わせ直後にウェブ会議設定及び開催です。電話やメールでは伝えにくい内容も、ウェブ会議なら対面の会議と同じくらい伝えやすいと感じています。

なお、ご相談の時間は平均的に30分~1時間です。主なご相談の内容は、特許・意匠・商標の出願に関することや調査に関することです。

関係者が参加しやすい

特許・意匠・商標の打ち合わせは、部署や階級を越えて複数人が関わる場合があります。内容が重要なほど、その人数が多くなる傾向にあります。

ウェブ会議システムの場合、関係者の方々が別の社屋にいても、オンラインでリモート参加できますので、その分社内調整しやすいようです。

また、ウェブ会議は対面の会議ほど拘束力が低い分、キーマンとは言えないまでも出席してほしい人にも声をかけやすいのではないでしょうか。

画面共有で密な擦り合わせ

相談に備えて事前に全ての資料を準備できるに越したことはありませんが、二足三足のわらじを履いている方が多く、そこまで時間に余裕を持てないのが実情のようです。

そのため、少なくとも端末に電子データで関係資料を準備しておいたり、メモ帳に重要なサイトのURLをコピペしておいたりすれば、相談中に適宜それらを画面で共有できます。

当所の実績では、相談や打ち合わせの内容を箇条書きレベルで簡単に事前共有し、それに基づいて会議を行うことでお客様側の目的を達成できていると感じています。

まとめ

特許・意匠・商標の活動は、競合他社に一歩遅れると取り返しできないリスクがあるものの、簡単ではなく進みにくい面もあるため、早めの着手をおすすめしています。

そういった場合も、ウェブ会議システムを活用してお気軽にご相談いただくことで、事業活動全体が進みやすくなると考えています。

▶ オンライン特許相談でビジネスを加速!【予約可】

文責:打越佑介

特許公報のみ検索するには?J-PlatPatの使い方のコツ

特許をJ-PlatPatで調べていると、『公開特許公報』や『特許公報』とかいろいろな書類が出てくるので、どれがどれだかわからなくなることがあると思います。

『公開特許公報』と『特許公報』の違いについては、以下の記事にて紹介しています。

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

例えば「競合他社に取られた特許」を調べるには、『公開特許公報』と『特許公報』、どちらが適しているでしょうか?

正解は『特許公報』です。『公開特許公報』のみでは「取られた」かどうかわかりません。「取られた」とは「登録された」という意味です。

このような場面では、J-PlatPatで『特許公報』のみヒットする設定にして検索することをおすすめします。

そこで、J-PlatPatの「特許・実用新案検索」の使い方として、特許公報のみ検索する方法を簡単に紹介します。

ステップ①:文献の種類を絞る

J-PlatPatの「特許・実用新案検索」を開くと、上の画面が見えていると思います。ここで、注目は、「☑国内文献(all)」(左の赤矢印)です。

「all」に初期設定されているため、このままでは『登録実用新案公報』も混在して検索されてしまいます。

『特許』と『実用新案』の違いについては、以下の記事にて紹介しています。

特許・実用新案・意匠の違いは?小学生にもわかる早見表

そのため、「詳細設定 +」(右の赤矢印)をクリックしてプルダウンウィンドウを開きます。

プルダウンウィンドウを開くと、上のような画面が見えると思います。開いた直後は、国内文献(特許、特許発明明細書、実用新案、登録実用新案明細書)の全てが☑されています。

ここで、特許以外の文献の☑を外します(赤矢印)。こうすることで、特許に関する書類(『公開特許公報』又は『特許公報』)のみヒットするようになりました。

ステップ②:「登録日ありで絞り込む」に☑

ご察しのとおり、ステップ①のみでは、『公開特許公報』と『特許公報』とが混在してヒットしてしまいます。

そこで、J-PlatPatの「特許・実用新案検索」画面を下にスクロールして、「検索オプション」のプルダウンウィンドウを開きます(上の赤矢印)。

そして、下にある「登録案件検索」のうち「登録日ありで絞り込む」に☑します。「登録日」は「登録済みの特許」にしか付与されません。

したがって、これで『特許公報』のみヒットする設定が完了しました。

検索結果画面(例)

では試しにステップ①→②を設定し、かつ「発明・考案の名称/タイトル」に「ゴルフ」と入力し、「検索オプション」内の「公知日/発行日」に「20200101」~「20201231」と入力して検索してみます。

検索の目的は、2020年に成立したゴルフに関連する特許を調べる、というものに仮設定しています。

そうしますと、「国内文献(43)」(上の赤矢印)と表示され、一覧表には『特許公報』のみが検索されました(下の赤矢印)。

「文献番号」の列には、「特許●●●●●●●」というもののみ表示されています。もしこれでステップ②をしなければ、『公開特許公報』を意味する「特開●●●●-●●●●●●」というものも表示されしまいます。

まとめ

「競合他社に取られた特許」を調べるような場面では、『特許公報』のみにヒットする設定にしてJ-PlatPatを使うのが効率的です。その方法とは以下の2つのステップです。

ステップ①:文献の種類を絞る(特許のみ☑)
ステップ②:「登録日ありで絞り込む」に☑(検索オプションを開く)

特許調査の目的に応じて、これらの設定を適宜行うことをおすすめします。

文責:打越佑介

店舗やオフィスの内装デザインの意匠登録(2020年12月)

経産省は11月2日に建築物・内装の意匠が初めて意匠登録されたニュースをリリースしました。

イノベーションの促進とブランド構築の一環とする意匠法の抜本的な改正により、建築物・内装の意匠登録が2020年4月1日から認められるようになったことから、どのような建築物・内装が意匠登録されるのか、とても注目されていました。

また、内装の意匠登録の場合、オフィス用の家具や什器、OA機器等を扱う企業が、自社製品を活かして設計した空間デザインも保護できるようになったため、机・いす・棚・壁・床などの組み合せ及び配置による独創的な内装が期待されています。

そこで、2020年12月時点の内装の意匠登録に関する状況を、私の所感含めて共有します。

なお、下記の見出し「●●●の内装」は、J-PlatPatの意匠登録公報にリンクしていますので、「●●●の内装」をクリック後に下記画像に示す赤矢印部分をクリックすると、各内装の意匠登録の内容を閲覧できます。

衣料品店の内装

内装デザインはU社の店舗ですが、意匠権者はアパレル大手F社です。意匠登録公報内の【実施例参考イメージ図】を見ると、意匠登録の内容をイメージしやすいです。

衣料品店の全体像としては、箱状の店舗で、左右の壁には、衣類の陳列棚と、陳列棚の上に設置された電光掲示板とが設置され、奥の壁には、大型ディスプレイが設置されています。このうち、電光掲示板と大型ディスプレイとの配置について、意匠登録がなされています(【参考斜視図1】及び【参考斜視図2】で着色された部分)。

このように、内装全体のデザインのうち、一部分(電光掲示板と大型ディスプレイと配置)のみを登録しておくと、その他の部分(陳列棚)のデザインを変更しても意匠登録を有効に活用しやすくなります。

店舗の売場の内装①店舗の売場の内装②

意匠権者は、動画配信サービスが主力事業であるE社です。一見、内装の意匠登録とは縁がなさそうな会社ですが、意匠登録の内容を見ると、主力事業を多面的に防衛する狙いを感じます。

店舗の全体像としては、食品売り場といったスーパーやデパートの一角のようなイメージで、商品の陳列棚と、陳列棚に隣接するディスプレイとが配置されています。このうち、ディスプレイ(電光掲示板)の配置について、意匠登録がなされています。

上述したU社のように、ディスプレイの配置のみを登録しておけば、陳列棚のデザインを変更しても意匠登録を有効に活用しやすくなりますが、このような部分的な意匠登録(部分意匠)は、全体(陳列棚含む)に対する部分(ディスプレイ)の位置・大きさ・範囲に、意匠登録が左右される点も留意すべきです。

つまり、部分意匠として内装の意匠登録したとしても万能ではないということです。

店舗の売場の内装①と内装②とは、陳列棚のデザイン及び陳列棚に対するディスプレイの配置が、それぞれ異なります。陳列棚のバリエーションは多数あるため、全てのバリエーションに対して意匠登録するのは現実的ではないことから、代表的(メジャー)な陳列棚が選ばれたのではないでしょうか。

オフィス空間のショールームの内装

意匠権者は、家具・什器メーカー大手O社です。オフィスの休憩室や執務室の内装とは別に、あえてショールームの内装を意匠登録している点が、とても興味深いです。意匠登録の内容を見ると、独創的な印象です。

ショールームの全体像としては、平面図から推測すると、中央にある円形の商談スペースと、商談スペースの左下にある飲食物の提供スペース、のようです。飲食物の提供スペースについては、【意匠に係る物品の説明】の欄にも記載されています。

紫色に着色されたソファーやイスは意匠登録に含まれませんが、これらがショールーム全体に対して意匠登録を受けようとする部分(間仕切壁など)の位置・大きさ・範囲を明確にしていると考えられます。

職員室の内装①(基礎意匠)職員室の内装②(関連意匠)

意匠権者は、家具・什器メーカー大手O社です。一見して、独創性を感じにくいものの、商材の机・イス・棚を活かしたレイアウトのようです。なお、内装①と内装②とは類似しているため、基礎意匠・関連意匠の関係です。

私的に注目したいのは【意匠に係る物品】です。「職員室」という選択が巧妙と感じています。意匠に係る物品を「職員室」と具体的にすることで、公知意匠との類似を避ける対策にもなるためです。

意匠に係る物品が異なれば、公知意匠と類似している意匠を登録できるというわけではありませんが、比較的ありふれた意匠の場合、意匠に係る物品を具体的(限定的)にすることで登録できる可能性が高まることもあります。

まとめ

まだはじまったばかりの内装の意匠登録制度ですが、登録件数が増えれば増えるほど、内装デザインの実施が競合他社の内装の意匠権を侵害するおそれが高まるのも否めません。

12月11日時点で公報が発行されている内装の意匠登録は14件です。これからも内装の意匠登録について定期的にJ-PlatPatでウォッチして適宜所感など共有したいと思います。

ちなみに、内装の意匠登録を調べたい場合は、J-PlatPatの「意匠検索」から「日本意匠分類/Dターム」を選択して「L3-7」をコピペして検索してください。もしJ-PlatPatでの意匠の調べ方がわからない場合は以下も参考にしてみてください。

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

 

文責:打越佑介

建築物・内装の意匠登録に関する状況(2020年10月8日)

令和元年の意匠法改正により、令和2年4月1日から、新たに建築物・内装の意匠(デザイン)を保護できるようになりました。

審査がスムーズに行われれば、意匠出願から審査結果(登録査定)が届くまで6か月くらいなので、間もなく登録例が出てくると推測しています。

一方、少しでも早く建築物や内装の意匠登録状況を知りたい方もいると考え、以前に下記の記事を投稿しました。

建築物・内装の意匠登録状況をネットで情報収集する方法

7月1日時点と10月8日時点の対比

そして2020年10月8日に、特許庁は新たな意匠登録出願状況を公開しましたので、本記事にて再び共有します。

▶ 令和元年意匠法改正特設サイト by 特許庁ウェブサイト

上記リンク先のサイトのうち、7月1日時点で公開された意匠登録出願状況も10月8日時点に更新されているため、上記記事で記録した前回分の数値データと今回分の数値データの対比を以下に示します。

建築物の意匠登録出願件数

7月1日時点 :133件(3か月間の出願件数月平均44.3件)

10月1日時点:204件(前回比71件増、3か月間の出願件数月平均23.7件/月)

内装の意匠登録出願件数

7月1日時点 : 98件(3か月間の出願件数月平均32.6件)

10月1日時点:132件(前回比34件増、3か月間の出願件数月平均11.3件/月)

考察:コロナウィルスと出願件数の影響

4月1日以降3か月間と対比すると、7月1日以降3か月間の出願件数月平均が減っているのは、コロナウィルス感染予防対策に伴い、出願活動の見直しが図られたためと仮説します。

テレワークの推進に伴い、特に家屋や商業施設の内装のデザインは大きく変化する可能性がある分、関連する会社は今後どのような権利を取得して模倣対策すべきかを検討していたのかもしれません。

一方、ワクチンの普及によりコロナ禍は終息すると仮説すれば、コロナ対策向けのデザインは早かれ遅かれ廃れると見込める分、アフターコロナの兆しがより鮮明になったタイミングで、出願活動が再開されて出願件数が再び増加する可能性もあるのではないでしょうか。

まとめ

もうしばらくウィズコロナが続くと思われますが、この間にアフターコロナを見据えた知財活動を継続して行うことは、今後の事業活動を加速させる可能性を秘めています。

建築物・内装の意匠登録も、ニューノーマル時代にどのように活用されるのか興味深いので、また新たな情報を入手次第、本記事のアップデートや新たな記事の作成を検討します。

 

文責:打越佑介

J-PlatPatで特許検索数を初心者でも上手に絞るコツ

J-PlatPatで先行技術調査をする場合、「簡易検索」を使う初心者の方が多いようですが、キーワードの入力欄が一つしかありません。

「簡易検索」のメリットは、特許・実用新案、意匠、商標、どれでもボタンの切替で検索できる点ですが、デメリットは、検索の精度を高めにくい点です。

特許の場合、難解な公開特許公報や特許公報をある程度読まなければならない分、上手く検索しないとノイズ(関係ない公報)が多くなってしまいます。

そこで、初心者でもJ-PlatPatを使って特許検索数を上手に絞るコツをご紹介します。

アイディアを可視化する

J-PlatPatを使う前に、箇条書きでも文章でも説明図でもいいので、まずはアイディアを可視化しましょう。特に、アイディアを言葉に置き換えることは大切です。

新しいプロダクト(装置、日用品など)なら、部品・構造・組み立て方・効果など、ソフトウェア(アプリケーション、ウェブシステムなど)なら、機能・処理の流れ・効果などを、言語化します。

なぜなら、公開特許公報や特許公報は、プロダクトやソフトウェアなどのアイディアを言語化し、ストーリー調に作文したものだからです。公開特許公報と特許公報の違いは以下を参考にしてください。

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

ストーリー調とは、背景技術→従来技術の紹介→従来技術が抱える問題→上記問題に基づき解決すべき課題→上記課題を解決する手段(≒特許請求の範囲)→上記手段により得られる効果→アイディアの具体的な内容(=発明の実施形態)、といった流れのことです。

そのため、特許文献の検索数を上手に絞るには、探したい公開特許公報や特許公報のストーリーに使われそうな言葉に、アイディアを置き換えて言語化することが必要です。

例えば、「シャツ」といっても、Tシャツ、Yシャツ、ロングスリーブ・ノースリーブ・タンクトップ、襟有り・襟無し、プルオーバータイプ・ボタンタイプというように、いろいろあります。

つまり、「シャツ」を上位概念とすると、各種のシャツを下位概念として言語化することで、「シャツ」に関係する先行技術文献の漏れが減り、検索精度を高められます。

「特許・実用新案検索」で各検索項目を組み合わせる

J-PlatPatで先行技術調査する場合、「特許・実用新案検索」がおすすめです。無料で使えますし、検索項目を2つ以上選択できるため、「簡易検索」より調査精度が上がるはずです。

言い換えると、検索項目をうまく組み合わせれば、簡単に検索数を上手に絞れます。そこで、「特許・実用新案検索」を使った先行技術調査でよく使う検索項目とその理由をご紹介します。

1.請求の範囲

J-PlatPatで先行技術調査するということは、公開特許公報または特許公報を検索することになります。そして、これらの公報のうち、エッセンス(最も重要な部分)が詰まっているのが、「(特許)請求の範囲」です。

なぜなら、審査の結果、特許になる部分が「(特許)請求の範囲」なので、この部分にアイディアを上位概念や下位概念に言語化したキーワードが潜んでいる可能性が高いからです。

ちなみに、「要約/抄録」という検索項目は、文字数が「請求の範囲」より少ないため、活用頻度は低めです。また、「全文」や「明細書」という検索項目は、文字数が「請求の範囲」より多く、かつエッセンス以外の説明もされている分、ノイズ(関係性の低いキーワード)も含まれているため、活用頻度は低めです。

なお、複数のキーワードをAND条件にしたいときは、「請求の範囲」を二段以上選択し、OR条件にしたいときは、同じ検索欄にスペースを挟んで入力します。

2.発明・考案の名称/タイトル

「発明・考案の名称/タイトル」は、一般的に、アイディアのタイトルを上位概念化した言語にて表現します。ただ、上位概念過ぎて曖昧だと審査で不利になるおそれがあり、下位概念過ぎて具体的だと権利範囲が狭くなり過ぎる恐れがあるため、よく考えて決定すべき部分です。

そのため、「請求の範囲」で検索数が多過ぎたり少な過ぎたりして上手く絞れなかった場合、例えば、「発明・考案の名称/タイトル」と「請求の範囲」とを一つずつ選択し、前者には上位概念のキーワード、後者には下位概念のキーワードを入れて検索すると、上手く検索数を絞れることがあります。

3.出願人/権利者/著者所属

競合他社や似た特許を出してそうな会社を知っている場合、「出願人/権利者/著者所属」を選択し、それらの社名でキーワード検索することもあります。たくさん特許を出している競合他社ほど、この検索項目は有効です。

例えば、「発明・考案の名称/タイトル」と「出願人/権利者/著者所属」とを一つずつ選択し、ある発明についてシェア上位の会社がそれぞれ何件特許を出しているか調べることもできます。

まとめ

J-PlatPatで特許検索数を初心者でも上手に絞るコツをまとめると、以下の2つのステップになります。

ステップ1:アイディアを可視化する

ステップ2:「特許・実用新案検索」で各検索項目(「請求の範囲」、「発明・考案の名称/タイトル」、「出願人/権利者/著者所属」など)を組み合わせる

はじめからステップ1を完璧に行うのはむずかしいので、ある程度可視化できたらステップ2に進み、ある程度特許検索して先行技術を調べられたらまたステップ1に戻ると、アイデアの言語化もはかどり、その分検索精度も上がりますので、試してみてください。

文責:打越佑介

ブランド戦略にも初心者にも役立つ商標登録の5W1H

ブランド戦略とは、一言で表すと、他社とは違う価値を感じてくれるファン(顧客、ユーザー等)をつくるための活動(=ブランディング)の戦略、と考えています。

そして、ブランディングで大切なことは、他社との違い(=自社の価値)をファンが認識しやすくすることであり、ファンにとってその違い(価値)目印(商標)守る(登録する)ことは、ブランド戦略の具体策です。

そのため、商標登録も、ビジネスフレームワークの5W1H(What,Why,Who,When,Where,How)の質問に回答できれば、ブランド戦略としても有効です。

5W1Hの順番は自由ですが、以下で紹介する流れは、商標登録にとっての優先順位です。ブランド戦略のみならず商標登録の初心者にも使えるフレームワークです。

What(質問:商標は何ですか?)

回答:商標は●●●を示す○○○です

回答の●●●にはあなたのビジネス、○○○には商標(ネーミング・マーク)の形態を入れます。以下は回答例です。

例1:商標は小売業を示す文字(ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、アルファベット)です。

例2:商標はソフトウェア開発業・アプリケーション名を示すロゴタイプ(上記文字をオリジナルの書体で表示)です。

例3:商標は飲食業を示す図形(エンブレム、キャラクター)です。

例4:商標は複数の業態を示す組み合わせ(図形+文字、ロゴタイプ+図形、図形+図形)です。

How(質問:商標をどのように使いますか?)

回答:商標を●●●として○○○します

回答の●●●にはブランドの種類、○○○には実際に商標を使う状態を入れます。以下は回答例です。

例1:商標をコーポレートブランド(社名・エンブレム)としてホームページのタイトルやロゴにしたり、看板にしたりします。

例2:商標をファミリーブランド(複数の商品のカテゴリをまたぐ包括的なネーミング・マーク)としてパッケージに印刷します。

例3:商標を個別ブランド(個々の商品のネーミング・マーク)としてサービス提供時のツールに付けます。

Why(質問:商標登録をなぜしますか?)

回答:商標登録を●●●のためにします

回答の●●●には商標登録の目的や理由を入れます。以下は回答例です。

例1:商標登録を競合他社などに先に商標登録されて当社が使えなくなったら困るのでします。

例2:商標登録を一般名称かどうかわからないため商標出願して審査してもらいたいためにします。

例3:商標登録を売買目的、ライセンス(使用権の許諾)目的のためにします。

Who(質問:商標登録は誰のものですか?)

回答:商標登録は●●●のものです。

回答の●●●には商標登録を出願する人や商標権を管理する人を入れます。以下は回答例です。

例1:商標登録は法人(株式会社、合同会社、一般社団法人など)のものです。

例2:商標登録は個人(中小企業の社長・フリーランスなど)のものです。

例3:商標登録は共同名義(法人+法人、個人+個人、個人+法人)です。

When(質問:商標をいつから使いますか?)

回答:商標を●●●から使います(予定です、使っています)。

回答の●●●には具体的な時期や予定を入れます。以下は回答例です。

例1:商標をプレスリリース後から使います。

例2:商標を将来的に使う予定です。

例3:商標を既に1年前から使っています。

Where(質問:商標をどこで使いますか?)

回答:商標を●●●で使います。

回答の●●●には地域名や国名を入れます。以下は回答例です。

例1:商標を日本国内のみで使います。

例2:商標を日本及びアジア諸国で使います。

例3:商標を日本及び欧米で使います。

まとめ

商標登録は知的財産として活用しやすいため、安易に考えられがちですが、トラブルにも発展しやすいため、適当になんとなく出願したり登録前に商標を使ったりするのは危険です。

5W1Hはマーケティング等のビジネスフレームワークとしても用いられている分、使いやすくわかりやすいため、社内の重役や社外の弁理士にもその内容を伝えやすいです。

文責:打越佑介

下町ロケットを知らない人のための特許戦略7ヵ条

2020年8月14にSankeiBizから「中小の知財・技術保護へ指針、今秋にも提示 大企業の不当取得防止」という記事がリリースされました。

記事によれば、下町ロケットような技術力の高い中小企業が、大企業と公正な取引を行えるような支援策を政府が検討しており、2021年度予算案の概算要求に盛り込むというものです。

『下町ロケット』の概要についてはウィキペディアで確認できますが、弁理士としては下町ロケットから学べる特許戦略を忙しい中小企業の社長などで下町ロケットを知らない人にも知ってもらえると嬉しいです。

そこで、特許戦略としてはほんの一部に過ぎませんが、わかりやすく7ヵ条にまとめました。なお、下町ロケットをこれから見るため内容を知りたくない人はお読みになるのをご遠慮くださいますようお願いいたします。

①特許出願のタイミングが勝敗を分ける

帝国重工(大企業)が佃製作所(中小企業)に勝てなかった最大の原因は、佃製作所(中小企業)より特許を出すのが2週間遅かったことです。2週間前に同じ特許を他社に出されていることを知る術はありませんので、仕方がありません。

ただ、このような例はウソのようで本当にあることです。特許は出願(申請)してから1年半は公開されないため、今から1年半前以降にどんな特許が出されているかは、公開されなければわかりません。

そのため、事業活動において大切なことは、ライバルに先を越されないようにタイミングを逃さず特許を出すことであり、仮に同じ特許が他社に出されていてもその特許を回避する案を決めること、です。

なお、優先権主張出願という制度を利用することで、特許出願してから1年以内であれば、出願した特許の具体例(研究成果)を追加して内容を補強したりすることができます。

②特許には時間を短縮する価値がある

佃製作所(中小企業)の強みはバルブシステムの特許であり、帝国重工(大企業)は佃製作所(中小企業)の許可を得ずにバルブシステムを製造すれば、特許を侵害することになります。

さらに、帝国重工(大企業)のスターダスト計画実施も間もなくです。もはや佃製作所(中小企業)のバルブシステムの特許を回避する新たなバルブシステムの開発は時間的に不可能です。

つまり、帝国重工(大企業)の弱みは時間です。もしスターダスト計画実施前に新たなバルブシステムを開発できれば、佃製作所(中小企業)の特許権を侵害することにはならず、佃製作所(中小企業)との交渉も不要です。

このように、帝国重工(大企業)にとって、佃製作所(中小企業)の特許の価値はバルブシステム開発の時間短縮です。このことから、特許には、時間的な価値があると言えます。

③特許とノウハウは一心同体である

中小企業は特許を取れるなら取るべきですが、特許と同じくらいノウハウが大事ということを忘れてはいけません。中小企業の多くは、大手企業にないノウハウを持っているはずです。

以下は、佃製作所(中小企業)のバルブシステムの開発技術を、特許とノウハウに分けたイメージ図です。左側がバルブシステム構造の特許(青)、右側がバルブシステムの製造ノウハウ(赤)です。

帝国重工(大企業)は全部品を内製(自社で製造した部品)したかったため、佃製作所(中小企業)の特許の使用許諾が必要でした。帝国重工(大企業)には設備投資力もあり、製造装置(マシニングセンタなど)の性能にも自信があったようです。

一方、佃製作所(中小企業)は特許の使用許諾ではなく、バルブシステムを部品として帝国重工(大企業)に供給したいと申し出ました。なぜなら、佃製作所(中小企業)は特許のみならず、バルブシステムの品質を極限まで高めるための強烈なノウハウ(穴あけ、削り、研磨など)を持っていたからです。

帝国重工(大企業)は特許の使用許諾さえあればバルブシステムの構造を真似できます。そもそも帝国重工(大企業)もバルブシステムの研究開発をしていたため、製造ノウハウもあるはずです。

しかし、佃製作所(中小企業)の真の強みは、バルブシステムの製造ノウハウです。製造装置の精度を上回る技術者の感覚や勘所は、帝国重工(大企業)に真似できません。このようなノウハウを非公開(秘密)にすることで、佃製作所(中小企業)は特許と同じくらい貴重な“価値ある技術”をウリ(強み)にできるわけです。

中小企業としては、特許をとるアイデア(技術的思想)があっても、公開してまで特許をとる価値があるか?、価値があるとしたらどこまで公開すべきか?非公開のノウハウと組み合わせて特許の価値を高められるか?など、検討すべき点はたくさんあります。

なお、会社経営上、ある技術者一人しかしらないノウハウがあるというのは、強みにも弱みにもなります。なぜなら、その技術者が退職したり病欠したりしたら、誰もそのノウハウを再現できなくなるからです。そのため、ノウハウを社内で共有できる仕組みづくりも重要です。

④特許を売るか貸すかは経営判断である

佃製作所(中小企業)の特許を買い取りたい帝国重工(大企業)の提示額は20億円でした。特許をお金に換えることは簡単ではないため、売れるときに売ってしまったほうがいいという考え方もあります。

特許の維持費もかかるし、新しい技術が登場すれば特許の価値も下がります。そのため、特許を持っている会社は、特許を売るか貸すか?いくらで売るか貸すか?そもそも買い手や借り手はいるのか?などを模索しています。

しかし、佃製作所(中小企業)は、バルブシステムの特許のみならず製造ノウハウも持っており、製品の品質に絶対の自信があったため、帝国重工(大企業)に特許を売りも貸しもせずに部品供給という経営判断をしました。

なお、特許を貸した場合の利益(ライセンス収入)は、一般的に製品の売上に対する1~5%と言われています。100万円売り上げたら1~5万円の収入ということです。特許の貢献度にもよるため、もっと多い場合もあれば、少ない場合もあります。

⑤特許=製品の品質保証ではない

まず前提として、特許は製品(モノ)が実際になくてもとれます。つまり、アイデア(技術的思想)さえあれば誰でも特許を出せます(審査をクリアできるかどうかは書類の書き方次第です)。

そして、特許の審査をクリアする上で、製品の品質保証は必要ありません。理論的に製品(モノ)がつくれれればOKで、品質基準をクリアした製品が100回に1個しかつくれないとしても、特許はとれます。

真珠で有名なミキモトの創業者・御木本幸吉が発明した真珠の養殖方法は1916年に特許となりましたが、実際に真珠を取得できた確率は数パーセントだったそうです。

このように、特許と製品の品質保証は異なるため、佃製作所(中小企業)のように特許をとっても帝国重工(大企業)の品質基準をクリアできる製品をつくれるかどうかは別の話であることに注意してください。

⑥特許は技術者の創作意欲から生まれる

日本の技術者の多くは、給与以上に研究開発に没頭できる環境を求めており、特許庁が実施したアンケートでそのような結果が出ています(以下画像、引用: 「職務発明制度に関するアンケート調査結果について 」 by 特許庁)。

「(1)研究開発を行う上で重要と思うこと」として、技術者が最も重視しているのは、日本企業・海外企業どちらも「現実的な問題を解決したいと思う願望」(85%以上)です。一方、日本企業にとって「金銭的な処遇」(71.7%)は他の項目より低いことがわかります。

また、中小企業が技術者との関係で注意すべきは、職務発明(技術者が職務上考えた発明)に関する取り決めです。

例えば、職務発明は会社のもの(会社が特許を受ける権利を持っている状態)であること、そのかわり技術者にはそれなりの金銭等をあげること、などを就業規則に書いておかないと、会社に不満をもった技術者から訴えられるリスクがあります。

おそらく、佃製作所(中小企業)と技術者(佃社長含む)とは、職務発明の取り決めがあるのではないしょうか。そのため、技術開発部が考えた職務発明(バルブシステム)について、特許を受ける権利(特許権を所有する資格)があるのは佃製作所(中小企業)で、そのかわりに技術者にはそれなりの金銭(ボーナスなど)が支払われていると推測できます。

⑦特許について営業担当者が無知だと危ない

技術開発にはコストがかかる、売れない特許なんて意味がない、と営業担当者は考えがちです。製品が売れなければ会社は生き残れず、製品を売ることが営業担当者の使命であれば、然るべき意見です。

そのため、営業担当者が売上(成績)を伸ばすことを優先して、会社が特許を出願する前に客先にプレゼンしてしまったり、他社の特許を侵害する製品の注文を受けてしまったりすることもあるようです。

技術力があってもそれを守れなければ、会社は孔の空いた鍋のようなもので、業績も上がりにくいです。同じように、営業力を高めるには、営業担当者が製品の知識に加え、特許のリテラシーを持つことも必要であり、これによりお客様からの信用が高まるのではないでしょうか。

なお、センサーや測定器のファブレスメーカーであり高収入でも有名なキーエンスは、類まれなる営業力を武器としていますが、特許の公開公報のヒット件数は2600件以上(2020年8月16日時点)であり、2020年の知財価値ランキングではトップになるほどの技術力を兼ねていると考えられます。

まとめ

あらためまして、下町ロケットから中堅企業や中小企業が学べる特許戦略の7ヵ条は、以下のようになります。

①特許出願のタイミングが勝敗を分ける
②特許には時間を短縮する価値がある
③特許とノウハウは一心同体である
④特許を売るか貸すかは経営判断である
⑤特許=製品の品質保証ではない
⑥特許は技術者の創作意欲から生まれる
⑦特許について営業担当者が無知だと危ない

ウィズコロナ・アフターコロナの時代における知的財産活動のニューノーマル、すなわち、従来の知的財産活動には考えられなかった新たな常識や常態がいずれスタンダードになると想定されますので、時代に合った特許戦略の検討・実行も大切です。

アイピールームではウェブ会議システムによる特許相談の仕組みづくりに力を入れており、既に利用者の皆様に有益な成果を出せていますので、興味がありましたら以下も参考にしてみてください。

▶ オンライン特許相談でビジネスを加速!【予約可】

 

文責:打越佑介

ウェブで特許の相談をする3つのメリット

新型コロナウィルス感染症対策として、政府から緊急事態宣言がなされた2020年4月7日以降、大企業・中堅企業・中小企業・フリーランスを問わず、リモートワーク(テレワーク・在宅勤務)の導入が急加速しました。

ウィズコロナ・アフターコロナの時代における知的財産活動のニューノーマル、すなわち、従来の知的財産活動には考えられなかった新たな常識や常態も、時間の問題かもしれません。

そこで、ニューノーマルの一つとなるかもしれないウェブ会議システムを利用して、特許・実用新案・意匠・商標といった知的財産の相談や打ち合わせをするメリットを3つ紹介します。

オンラインデモを見れる

Microsoft Teams・Google Meet・Zoomといったウェブ会議システムには、参加者同士でパソコン等の端末画面を共有できる機能があり、打ち合わせや相談の際にとても役立ちます。

例えば、新しいアイディアを考えたので、特許を取れるか知りたい、という相談をよく受けます。このとき、GoogleやJ-PlatPatを使って、似たようなアイディアがないかを、その場で検索のデモンストレーションすることがあります。

従来の対面型では、こちらのノートパソコンの画面を見せれば検索結果を共有できましたが、プロジェクターやディスプレイがなければ複数の検索キーワードやこれらの組み合わせ方のデモンストレーションを共有できませんでした。

検索結果は、検索キーワードやこの組み合わせ方によって変わります。つまり、オンラインデモをウェブ会議システムの画面で共有できれば、検索結果への理解が深まるのみならず、検索のノウハウも得られるメリットもあります。

遠隔地からも参加できる

経験上、特許の担当者は、会社の規模によって異なります。例えば、大~中堅企業では、知的財産部門または技術部門の方、中小企業では、社長または重役の方、が多いです。

そのため、実際に特許のアイディアを出した技術者(発明者)の方々が打ち合わせに出席しないことはよくあり、それ自体は弁理士にとって大きな問題ありません。

ただ、発明者の方が特許について知っていると、新たな創作活動をしやすくなるはずです。言い換えると、新たな創作活動にとって発明者が特許のみならず知的財産全般について知っていることは有益です。

その点、ウェブ会議システムであれば、たとえ遠隔地の事業所等にいる発明者の方でも、打ち合わせ日時も調整しやすく、気軽に参加できるため、特許について教育できるメリットもあります。

意思決定を早めにできる

自社で特許を取るにしろ、競合他社の特許を侵害しないようにするにしろ、これらは事業活動と共に検討することです。つまり、事業活動の然るべきタイミングで検討しなければ手遅れになりかねません。

例えば、新規性を失っている商品にもかかわらず、特許を取りたい、という相談をよく受けます。これは、事業活動は順調だったものの、特許取得を検討すべきタイミングを逃してしまったと考えられます。

また、新商品の開発を進めていたところ、競合他社の特許が見つかった、という相談もあります。これも、事業活動は順調だったものの、競合他社の特許を調査すべきタイミングを逃してしまったと考えられます。

この点、ウェブ会議システムを活用することで、このようなタイミングも逃さず、全国どこからでも弁理士に早めに相談できる分、意思決定を早めにできるメリットがあります。

まとめ

逆に、ウェブ会議システムのデメリットが可能性の低い情報漏えいのリスクとすると、このリスクを上回るメリットをウェブ会議システムで得られると考えます。

アイピールームではウェブ会議システムによる特許相談の仕組みづくりに力を入れており、既に利用者の皆様に有益な成果を出せていますので、興味がありましたら以下も参考にしてみてください。

オンライン特許相談でビジネスを加速!【予約可】

 

文責:打越佑介

建築物・内装の意匠登録状況をネットで情報収集する方法

令和元年の意匠法改正により、令和2年4月1日から、新たに建築物・内装の意匠(デザイン)を保護できるようになりました。

改正前の意匠の保護対象は、プレハブといった組立家屋に限られていたため、本改正は不動産業界や什器業界にとってインパクトのあるものとなり得ます。

一方、意匠出願は、これらが登録に至らない限り特許庁から正式に公開されないため、出願内容の傾向や統計を把握できるのは、さらに半年くらい先になるかもしれません。

そこで、少しでも早く最新情報を入手して見通しを立てたい場合におすすめな2つの方法を紹介します。

1.令和元年意匠法改正特設サイトで情報収集

当然ながら、特許庁の公開情報が正確無比でしょう。特許庁は、法改正の経緯を含め、平成29年(2017年)から情報公開を行っています。

令和元年意匠法改正特設サイト by 特許庁ウェブサイト

近々で興味深い公開情報としては、7月13日にリリースされた「改正意匠法に基づく新たな保護対象についての意匠登録出願状況」で、7月1日時点の統計では、建築物の意匠出願が133件、内装の意匠出願が98件です。

ただ、建築物の件数は、検索条件である日本意匠分類の幅が広く、実はノイズ(建築物ではない意匠出願)も含まれているのではないかと推測します。

一方、内装の件数は、検索条件である日本意匠分類が「L3-7」に絞られているため、ノイズは含まれておらず正確な数値と推測できます。

その他、「改訂意匠審査基準の概要」もわかりやすいため、意匠出願を検討する際の参考になると思います。

2.J-PlatPatで情報収集

J-PlatPatは、特許庁の公開データベースです。繰り返しになりますが、意匠の場合、特許や商標のような公開制度がないため、登録に至らない限り、J-PlatPatで公開されません。

また、商標の場合、出願後1か月前後で内容がJ-PlatPatで公開されるため、競合他社等の出願状況を確認できるのは、1か月遅れとなります。

一方、意匠の場合、出願から登録まで早くても半年前後かかるため、競合他社等の出願状況を確認できるのは、半年遅れとなります。

この遅れを理解した上で、J-PlatPatで情報収集する場合、例えば以下の日本意匠分類で検索するのが効率的と考えられます。

L2-5010:橋りょう など

L2-600:防波堤、ダム など

L3-100:ガスタンク、煙突、灯台 など

L3-130:駅舎、空港ターミナル など

L3-140:鉄塔、電柱 など

L3-2000:高層ビル など

L3-21:戸建住宅 など

L3-24:ロードサイド店舗 など

L3-7:内装の意匠

<参考:意匠登録出願の基礎(建築物・内装) 22頁 by 特許庁>

もしJ-PlatPatでの意匠の調べ方がわからない場合は、以下を参考にしてみてください。

意匠を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

まとめ

建築物・内装の意匠登録第1号はどのようなデザインなのか、また、各業界で意匠登録がどのように活用されるのか、興味深いです。

本件については、新たな情報を入手次第、本記事のアップデートや新たな記事の作成を検討しています。

 

文責:打越佑介

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

特許の経過情報とは、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間や特許の登録がなされた後、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などに関し、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)で誰でも見ることができる情報です。

そこで、特許の経過情報をどのように見たり使ったりするかを、小学生にもわかるように簡単に解説します。

検索結果画面の『経過情報』

まず、特許庁の公開データベース(J-PlatPat)にて、公開特許公報や特許公報を検索したとき、検索結果がリスト表示されます。J-PlatPatの簡単な使い方は以下を参照してください。

☛ 特許を調べるには?小学生にもわかるJ-PlatPatの使い方

このとき、検索結果の右端の「各種機能」の列にある『経過情報』というボタンをクリックしてください(下図の赤枠)。

『経過記録』の使い方

『経過情報』をクリックすると、『経過情報照会』という画面に切り替わります。

このうち、『経過記録』『出願情報』『登録情報』を見ることができますが、よく使うのは『経過記録』です(下図の赤枠内)。

そして、『経過記録』には、『審査記録』と『登録記録』が含まれています。

『審査記録』

『審査記録』には、特許の出願(申請)がされてから登録がなされるまでの間に、特許庁に提出された書類名や書類の提出年月日などが列挙されています。

さらに、列挙されている以下の書類をクリックすると、中身を見ることができます。

①特許願(明細書、請求の範囲、要約書、図面)・・・特許の申請書類です。

②出願審査請求書・・・審査を請求しないと出願そのものがなかったものとなります。

③拒絶理由通知書・・・新規性違反や進歩性違反など特許にできない理由が記載された書類です。

④手続補正書・・・③を解消するために特許の申請書類を書き換えた書類です。

⑤意見書・・・④により③を解消できたことを審査官に主張する書類です。

⑥特許査定・・・審査を通過して特許が認められると特許庁から届く書類です。

特に、競合他社の特許を調べるときに、③拒絶理由通知書、④手続補正書、⑤意見書を見れば、特許が認められた要因や最終的な特許請求の範囲を確認できます。

『登録記録』

『登録記録』には、特許が認められた後、特許を登録するための特許料や特許を維持するための維持費(年金)の支払い状況が列挙されています。

ここを見たときに、もし競合他社の特許の維持費(年金)の支払いが直近の期限内に行われていない場合、その特許は消滅済みの可能性が高いため、本当に消滅しているかを慌てずに調べましょう。

まとめ

特許の経過情報は、特許が登録されるまでの流れ・特許が登録された要因・特許の維持費(年金)の支払い状況などを、誰でもインターネットで確認することができる、とてもありがたい情報です。

なお、経過情報は、特許のみならず、実用新案・意匠・商標でも見ることができます。

文責:打越佑介

公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い

「競合他社がどんな特許を取っているか調べていたら、当社が開発中の製品について特許を取られていいました。どうすればいいですか?」という相談をよく受けます。

このとき、お客様が入手した書類は、『公開特許公報』や『特許公報』なんですが、お客様はそもそもこれらが違う種類の書類であることをご存じないことがほとんどです。

そこで、競合他社の『公開特許公報』や『特許公報』が見つかっても、慌てなくていいように、これらの違いと見分け方を、小学生でもわかるように解説します。

公開特許公報は特許ではない

まず、『公開特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『公開特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『公開特許公報』とは、簡単に言いますと、特許出願された書類を特許庁が公開したものに過ぎません。

なぜなら、特許の出願日(申請日)から1年半後に特許出願された書類を公開するルール(特許法第64条)があるためです。

つまり、『公開特許公報』は特許ではないので、慌てる必要はありません。

特許公報だけではわからない

つぎに、『特許公報』の場合、1ページ目の一番上に、『特許公報』と書かれています(下記画像の赤丸内)。

そして、『特許公報』とは、簡単に言いますと、出願(申請)された特許の書類に対して特許庁が審査して特許と認めたものです。

つまり、『特許公報』は特許ですので、注意はすべきですが、まだ慌てる必要はありません。

特許が生存中か?消滅済みか?

『特許公報』でも、生存中か、それとも消滅済みかによって、判断は大きく異なります。

特許が生存中か消滅済みかは、特許の経過情報から確認できます。特許の経過情報の見方や使い方は以下を参照してください。

特許の経過情報とは?小学生にもわかる意味・使い方

一般的に、特許が「生存中」とは、年金(維持費)の支払いを続けていることにより、特許が存在している状態です。

一方、特許が「消滅済み」とは、年金(維持費)の支払いを止めてしまったり支払う必要がなくなってしまったことにより、特許が存在していない状態です。

つまり、『特許公報』だとしても、消滅済みであればもはや特許ではないため、慌てる必要はありません。

まとめ

競合他社がどんな特許を取っているか調べている最中、以下のステップ1・2を検討し、最終的に特許が生存中の『特許公報』が見つかった場合、要注意です。

ステップ1:『公開特許公報』か『特許公報』か?

ステップ2:『特許公報』における特許が生存中か?消滅済みか?

<あわせて読むと効果的なおすすめ記事>

特許公報のみ検索するには?J-PlatPatの使い方のコツ

文責:打越佑介

特許請求の範囲が審査で狭まる理由【図解】

 

特許をとれば、全てのライバル会社の模倣を止められる、というわけではありません。特許の範囲によって、ライバル会社の模倣を止められるかどうかが決まります。

では、特許の範囲(=特許請求の範囲)はどうやって決まるのか?を図解します。

 

特許の範囲は先行技術との違いを明確にするため審査次第で狭まる

 

 

まず、特許を出願する前は、マーケットに対して広くなるようにするのが一般的です。具体的には、特許請求の範囲を構成する要件を少なめにします。これにより、ライバル会社の模倣を止めやすくなるためです。

図上の「①出願時の特許請求の範囲」とは、従来からマーケットに存在していて出願前に見つかった先行技術(=特許をとりたい発明に近しい技術)と違う(対比して新規性や進歩性がある)ことを明確にするために、これらの先行技術を含まないようにしたものです。

一方、特許を認めるか否かを判断する審査官は、①出願時の特許請求の範囲に含まれる先行技術を見つけてくるのが一般的です。

言い換えれば、審査官が見つけた先行技術により、①出願時の特許請求の範囲では広すぎる(=新規性や進歩性がない)ため、特許が認められないことを意味します。

そのため、「②補正後の特許請求の範囲」とは、従来からマーケットに存在していて審査官が見つけた先行技術とは違う(対比して新規性や進歩性がある)ことを明確にするために、これらの先行技術を含まないようにしたものです。

つまり、特許の範囲は、審査次第で狭くなるように補正することで、最終的な範囲が決まります。最終的な特許の範囲に含まれる競合品は、ライバル会社の模倣(=侵害品)として取り締まることができます。

 

まとめ

特許の範囲は、出願時にはなるべく広くして、審査次第で狭めるのが理想的です。審査次第で狭める程度も、少なければ少ないほど、出願時の範囲と近いため、ライバル会社の模倣を止めやすくなります。

 

文責:打越